証明問題
「青柳」
簡単な帰りのホームルームのあと、図書室へ寄って帰ろうとしていた彼女を呼び止めた。文化祭一日目の放課後。クラスや部活によっては、二日目の準備や最終調整を行っている。
幸いクラスはモザイク壁画の展示だったので、居残りはしない、
「……?」
青柳は驚きながらも立ち止まってくれる。
いつもより軽そうなボストンバックは、部活がないことを物語っていた。
「あの……今日、部活なし?」
「うん。文化祭で大変だからって。明日もあるし」
「そっか」
休めるときに休む。それが一番いいと思う。
「………あっ、同好会、今日遅くまで残って作業するんだよね?私も行こうか?」
「いや、大丈夫大丈夫!」
もちろん記事の執筆や、紙面の構成の突貫工事はする。正直なところ人手はほしい。
ただ、裏の展示の売上確認もするから、やっぱり女子は入れられない。
「青柳に取材手伝ってもらったから、本当に助かった。それだけで十分」
「……そんなことないよ。でも、少しでも役にたったのなら、嬉しい、かな」
はにかみながら、少しだけ感情を素直に出す。
いつもより、心を開いているような今日の青柳になら。
聞いてもいいかもしれない。
「青柳ってさ」
「うん」
「あの先輩のこと、好きなの?」
分かりやすいくらい頬が赤く染まる。
「…………小原さん、だっけ?」
「………………わかる?」
「なんと、なくは」
「…………ただの、憧れなんだよ?憧れ、だったんだけど、わかんない、もっと話したいとか思うから、これって、好き、なのかな………………?」
「あー、俺にはなんともいえないなー」
背中を向けて、ポケットの中を探る。一枚だけ、厚紙で作ったメモが指先に触れた。
「でも、相談に乗るくらいならできるからいつでも連絡して」
連絡先を書いた紙片を押し付ける。
「お、もう行かないと大岡にシバかれる、青柳、呼び止めて悪かったな」
「ううん、市ヶ谷くん、今日は、ありがとう」
「名前、市ヶ谷って呼んでー、なんかくすぐったいから」
「が、がんばる……」
小走りに廊下を渡り、角を曲がる。
青柳から逃げるようにいつもの教室へと向かった。
「なさけねえなあ…………」
自分の気持ちなんてもの。
こんな形では、知りたくなかったな。




