解
「取材、どうだった?」
最初よりは打ち解けた感じで、青柳はそう切り出した。
華道部の展示に来ているのは女子ばかりで、部員も全員女子だった。
「青柳がいなかったらちゃんと取材できなかったと思う」
それくらい、女子が多い空間というとのに圧倒されてしまった。
自分の人生に女子なんてほとんど関わってこなかった。
正直なところ怖さはある。
「秦野先生の、すごかったよね」
「確かに。華道歴20年なんだっけ」
デジタルカメラで撮ったものを確認する。
めいめいが文化祭の展示のため力を入れたようで、色鮮やかな作品たちは、それぞれ個性的だ。
「これ、好きだな。ガーベラがかわいい」
ピンクやオレンジの色使いがされた作品を青柳は指差す。
「ガーベラ……?」
「うん、これが、そうだけど……?」
ぴんとこずにいると、青柳が画面を拡大させて教えてくれた。
「全然わかんないや」
花の名前はほとんどしらない。
「やばい、記事にできるかな……」
あの部屋から早く出たい一心で、なんの疑問も、気の効いた質問もできなかった。
今さら気づいてももう遅い。
「花の名前だったら、協力、できるよ?」
「ほんとに!?」
「うん、これがーー」
花の名前をメモに書き付けながら記事案を構成する。
これでなんとかなりそうだ。
「青柳、ありがーー」
「あれ、青柳だー」
どこかで聞いた声に、青柳と二人振り返る。
「小原先輩、アザミ先輩!」
人の良さそうな剣道部の先輩は、にこにこと青柳に近づく。
連れ立っていた『アザミさん』は、青柳の前で最上級の微笑みをした。
口をポカンとあけ、呆けてしまう。
間近にみたのは初めてだ。
まとっているオーラに圧倒されてしまう。
「青柳、よかったら一緒にまわらない?アザミと俺とで。そのほうがアザミも喜びそうだし」
「小原は何勝手に決めてんの。青柳、青柳がいいならでいいからね?」
アザミさんからの誘いに、青柳は顔をぱあっとさせる。
「あ…………」
ただ、こちらを見て、目を伏せた。
あちら側に行くのを躊躇っているように。
「俺はいいよ。取材終わったし」
「…………ちょっとだけ、待っててもらってもいいですか?市ヶ谷くんのお手伝いだけ」
「もちろん」
青柳と二人、隅の方に移動する。
「あの………」
「大問題だよ。行ってきなって。俺といても連れ回して取材手伝わせるだけだし。木田に会ったら言っとくから」
なおも気にしている青柳を、なんでもないように元気付ける。
「………ありがとう」
控えめながらも嬉しそうな青柳に、どこか引っかかった。
「悪いけど、話終わったら呼んでー。俺も市ヶ谷くんと話したい!」
「あ、今終わりましたー」
「はーい」
青柳と入れ替わりに小原さんがやってくる。
「青柳と仲良くしてくれてありがとな」
「いえ、別に…………」
「あ、同好会の展示見に行ったけど、良かったよ」
「……!ありがとうございます!」
「じゃ、青柳借りてくよ」
そして三人は連れ立ってあるいていった。
今までみたなかで一番リラックスして、きれいな青柳が遠退いていった。




