お茶
「いらっしゃいませー」
のれんをくぐると、着物姿の女子が出迎えてくれる。
茶道部の催し『藤花庵』は、ちょうど人の波が引いたあとのようだった。
ただの教室に屏風が置かれ、至るところに茶道部員が控えている。
異空間に思わずはっとした。
「……2名様、で大丈夫ですか?」
小さくなっている青柳を盗み見て、そうだとうなずく。
「では、こちらにどうぞ」
一番隅の席に案内され、青柳と二人で腰かけた。
「抹茶のみが200円、お菓子とセットで300円です」
「セットで二つください」
「では、先に金券をいただきますね」
「あ、これ二人分です」
ポケットから金券を出そうとした青柳の先手を打ち、先に支払ってしまう。
「あと、報道同好会で、取材をしたいんですけど、部長さんいらっしゃいますか?」
「あー……ちょっと呼んできますね」
報道同好会の知名度はまだ低い。
裏の展示のおかげで男子への宣伝はぶっちぎり。反面、女子にはまだまだだ。
「……取材、大変そうだね」
「まーね。悪いな、取材に付き合わせて」
「ううん」
迷惑そうではない青柳に、少し面食らってしまう。
多分青柳はひとりぼっちだ。
ほとんどの友達は文化部で、各部の展示のシフトに入っている。
木田は生徒会で身動きがとれなくなった。
文化祭の崩壊を防ぐため、教室に引っ込むことは禁止されているし、体育館で行われている演劇をずっと見続けるのも辛い。
「……このあとさ、華道部とステージの取材に行きたいんだけど、ヘルプで来てもらってもいい?」
「……私で、よければ。華道部は、知り合いいるし」
「全然いいよ!じゃあよろしく!」
ちょうど話がまとまったときに、部長がやって来た。
ありがたいことに取材を快く引き受けてくれる。
メモをとりつつ話を聞いて、そのあとは二人でお茶とお菓子を楽しんだ。
手持ちの一眼レフで室内をとり、目で合図を送ると青柳は席をたった。
「ありがとうございましたー」
「ねえ」
去り際に部長から引き留められる。
取材の確認だろうか。
「あの女の子は、彼女さん?」
「な」
廊下に先に出た青柳を思わず見てしまう。
彼女は僕の視線に気付き、小首をかしげた。
「そんなんじゃないですよ」
部長は微笑んで、コンパクトデジカメを出した。
美味しそうに和菓子を口に運ぶ青柳が映っていた。
「……必要なら、データを送るけど」
「お願いします」
反射的に答えていた。
そうしないと後悔すると思った。
この動悸はなんだろう。
分かるようで、知りたくないような答えをいつからか探していた。




