祭典
「木田さん、生徒会仕事はどう?」
人当たりがいい吉岡の問いに、クリームパンを飲み込んで木田は顔を向ける。
「まあまあ忙しいよ。こっちよりはましだと思うけどね」
「あ、じゃあ午後から取材手伝ってくれない?」
「ごめん、午後から校内巡回にあたってるから無理だわ。写真だったらついでにとってきてもいいけど」
「おっ、それは助かる!」
なんだかんだ言いつつも、木田は報道同好会の一員としてなじんでいた。
最初は毎日喧嘩していたけれど。喧嘩相手ツートップの一人、大岡のお願いにも少しは対応しているので、軟化しているようにみえた。
この場に青柳がいるから、が理由かもしれないけれど。
「助かるよ、午後からもうちの展示繁盛しそうだからさ、戻ることになるかもしれない」
「あー、一部活にしてはぶっちぎりで入ってるみたいだけど、なにしたの?」
墓穴、ほったり。
口許をひくつかせた吉岡と、顔色を一切変えない大岡。
普通にお礼を言うつもりだったのに、鋭い問いに思わず固まる。
「報道部回顧展」
さらっと答える大岡に、木田は対象を変えたようだ。
「あーね、お宝資料これでもかってほど展示してるからネットで拡散されたでしょ?一般の人から問い合わせ殺到してるらしいよ」
「まじで!?」
「そういう分野の研究者とか、元々そういう活動やってた人とか」
どうにか木田のことは誤魔化せたらしい。
「じゃ、俺と市ヶ谷はもう取材いくわ。吉岡、店番頼むな!」
「じゃー私たちもそろそろいこっか」
「うん、お邪魔しました」
僕たちは連れだって部屋を出て、そして別れた。
「ごめん、なにか手伝えることない?一緒に回る約束してたんだけど、どうしても生徒会室に戻らないとだめで、さすがにあおは生徒会メンバーじゃないから部屋入れなくて」
トランシーバー受信機に割り込んできたのは、木田の声だった。同好会メンバーは全員トランシーバーを持っている。しれっと生徒会の廃棄備品を拝借し、修理したのだ。稼働している生徒会所有のものも同じ機種だからか、こんな芸当ができたらしい。
普段と比べて要領をえなかったけれど、突発的な生徒会仕事で、青柳と一緒にいられなくなったことくらいはわかった。
「おっけー、特別棟一階の茶道部前にきてもらえる?」
「……了解、すぐ行く」
ぶつっと通話は切れる。
僕のかわりに答えた大岡は、息をはいた。
「市ヶ谷」
「わかった」
ついさっき、吉岡から裏の催事応援要請が入ったばかりだ。
「文化部とステージの取材は任せて!」
力強くうなずいて、大岡は展示のほうへ戻っていった。
特別棟の一階へ行くと、ぱたぱたと青柳がかけてくる。
彼女が息を整えるまで待った。
「じゃあ一緒に取材いこう」
「………!?わ、わたし、留守番のほうが……」
「いいから」
あんな店女子禁制だ。
青柳は絶対に、無理!
「ほら、茶道部いこ、男一人では無理だからさ」
無理やり引っ張って、多目的教室につけられたのれんをくぐった。




