文化祭、もしくはでかいヤマ
「マジでこの値段つけんの?」
「大まじめ」
「強気だな~」
文化祭当日、アザミさんの写真につけられた値段に変な声が出る。
売れると踏んだからこそだろうけど。
隠し撮り的に撮られた一枚のアザミさんの写真。
会議で出た売値は高校生の一ヶ月分くらいの小遣いは軽く飛ぶものだった。
学食で席につき、誰かを待っているようなショット。
撮ってきたのは大岡だ。値段付けも。
「じゃあ午前はクラスの取材は吉村、遊軍的に文化部は木田、俺と市ヶ谷で店回すぞー!」
「お、おー!」
「でも大丈夫?大岡、なにもない?」
吉村が心配するのは、アザミさんに対する都市伝説だ。なんでも、変なことをすると痛い目をみるとかみないとか。学年が違っても流れてくるのだから相当なものだと思う。
俺は俺で、立ち上げたばかりの報道同好会が潰される方向を心配している。
「大丈夫だって!んなもん心配してたらなんもできないだろ!」
ーー大岡の言うとおり。
明日への期待と不安を胸に、早めに解散した。
「吉村、戻ってこれるか!?」
「厳しいよー、取材も追い付いてない」
「っしゃ、じゃあ俺は市ヶ谷とこっち回しとく!昼に戻ってきて、交代ってことで」
「わかったー……」
汗で制服を湿らせながらも耳をそばだててしまうのは、報道部の性なのか。少なくとも、報道同好会のメンバーはフル稼働していることは再確認できた。
表の活動、取材は三人だけでは到底無理だ。そして報道部回顧展がOBOGがわんさか来たお陰で盛況なのもまた誤算。裏のほうは途切れることなくやってくるものの回転率が悪い。パソコンが一台しかないからか。
トランシーバーでの話を終えると、大岡は俺の方へするりと近づいてくる。
「どうだ?」
「列がすごい延びてる」
ざっと見たところ、裏の方の待機列、30人は固い。
「わーお。……市ヶ谷も挨拶どう?せっかくの機会だしさ。こっちは俺が見とくから」
「ありがと、よろしく」
俺は初対面のOBOGに、やや緊張しながら歩み寄った。
「で、なんであんたらそんなにへばってんの」
生徒会、風紀、でかでかと書かれた腕章を揺らしながら、木田は俺たちを見下ろした。
昼休み、俺たちは少しでもお祭り気分を味わうため、そして取材のため、俺たちは模擬店の商品を片っ端から買って食べた。
やきそば、はしまき、ポテト。発泡スチロールや紙コップが散乱している中、メンバー三人で机に突っ伏している。
一気に疲れが出た。
「………思ったより人が来て」
「取材って、大変なんだなあって思って」
「……とにかくめちゃくちゃ疲れて」
「そりゃ三人でやる量じゃないでしょ。ってか大丈夫?2日間あるうちの、午前中終わったところだけど」
切って捨てる木田は平常運転だ。
同い年でも精神年齢は女子の方が高いと言うけれど。
だったら木田とは何歳差だろう。
「きーちゃん、厳しいね……」
ひょっこり顔を出した青柳にびっくりし、思わず跳ね起きて椅子をけたたましく後ろに倒してしまった。
「あららー」
「ご、ごめんなさい……!」
「青柳さんは悪くないよー、やらかしたの市ヶ谷だから」
「あおが悪い要素一ミリもないからね」
「ほんっと、はっきりしてんな木田は」
椅子を直しながら俺は青柳を盗み見る。あわあわとしているその手には、パステルカラーの巾着を持っていた。
「ちょっとここでお昼食べさせて。あおも」
文化祭中の昼食は、学食か模擬店、もしくは自分の教室で誰かと食べるかとなる。
学食は激混みで、教室はぼっちになる可能性が高い。
「おっけー」
「どうぞどうぞ~」
あれよあれよと言う間に、俺の正面には青柳が座った。




