合い服の時期に
「じゃあ、文化祭のときの流れ、もっかいおさらいな!」
「お願いしまーす!」
耳に心地いい大岡の声が科学準備室に響く。
報道同好会が文化祭のときに出す出店の打ち合わせには、動ける全員が集合した。
会長の大岡、会計の吉岡、副会長の俺。
木田は生徒会の集まりのため欠席、顧問の立木先生はいつものごとく姿をみせない。
「それにしても、こんなに早くできるとは思わなかったよ」
開口一番、吉岡が感慨深げになる。
「ほんとにな。市ヶ谷、どんな手使ったんだよ」
「さ、さあー?」
青柳と和解した次の日、報道同好会に入ってやってもいいと木田が言ったのだ。
名前貸しで、青柳も協力してくれた。
そして立木先生が職員室で大活躍したんだろう。設置願いはすんなりおりた。
6月現在、一週間後に迫った文化祭で写真販売を行える程度には活動は軌道にのっている。
「えーっと、当日の店番だっけ?木田は生徒会仕事があるからできないとして、青柳は幽霊部員だから除外。俺たち三人でまわすんだよな?」
「そうそう、お金がからむから、基本二人で回す感じで」
「んー、時間割り組んだけど、市ヶ谷が一人の時間があるんだよねー、三十分くらい」
「姫島さーん、ちょっと手伝ってもらうことは……」
「クラスと科学とパソコンのほうがあるから、そっちには手がまわらないかな」
「ですよねー」
部屋を共にする科学部部長の姫島さんに淡い期待を寄せるも、すげなく断られる。
同好会に部室はない。
科学部になし崩し的に転がりこみ、そのまま部室を間借りさせてもらっている。
それだけでもよしとするか。いや、上から目線だったらバチが当たりそうだ。
「ダメ元で木田さんと青柳さんに聞いてみたらー?」
ビーカーから目を外しながら、最もなアドバイスが投げられる。
俺もそれがいいと思う。ただ。
「内容がネックだよな、ぶっ殺されそう」
大岡の話に俺たちは黙りこむしかなかった。
報道同好会は、去年まで存在した報道部の追憶展と学校の歴史の展示を行う。加えて、遊軍記者よろしく文化祭をまわり、各クラスと文化部の活動を文化祭の終了と同時に配布する。
表向きは。
「表だけでも大変そうだし、裏はやめたら?」
「それができたら苦労はしないですよ……」
全うな意見は、金のため、聞き流すしかないのだ。
報道同好会、表向きはお金はからまない。
立木先生の好意で、今回に限り印刷ミスのわら半紙を横流ししてもらったからだ。今回限り、学校だよりの付録の位置付けとして新聞の発行許可もとれた。インクとプリンターの目処もついたし、文化祭の新聞特別号に関しては心配はいらない
裏の活動は、軍資金集めのため、日常活動で得た写真や情報を販売することだ。
同好会は活動費が支給されない。
そのため活動は早いうちに行き詰まってしまう。
「一応、18禁的な写真販売は撮ってないししません。データでも渡さない、紙にモノクロで印刷するレベルです」
「そりゃ、18禁なやつデータで渡したら廃部どころじゃ済まないよね」
「っていうか風紀の木田がいる時点でシュールだよな」
「見逃してくれるかな」
「いや、無理だろ」
「でもやるしかない」
「だよなー」
「…………そういえばさ」
「あ、はい」
「その写真って、いくらで販売すんの?あと、一年だけ?」
姫島さんの問いに、俺は計画を思い返す。
「基本は向こうが買いたい金額で。いえ、三学年入ってます」
先輩は考えるような素振りをした。
「……アザミさんはやめたほうがいいよ」
学校一美人な先輩の名前をポツリという。
「え、なんでですか!めっちゃ高く売れそうじゃないですか!」
「悪いこと言わないから、やめたほうがいいよ」
それっきり姫島さんは、こちらの会話には加わってこなかった。




