7 俺はビッチと根競べをする
この日は野宿を余儀なくされた。
誰もいない崩壊しかけた教会の隅で、一夜を明かした。
教会の裏には墓地まであり、それ故に人けがない。
野盗に襲われる可能性も少ないと踏んでここを選んだ訳だが、とにかく薄気味悪い。
そりゃぁ夜の墓場だ。
辺り一面には、石の墓標が並んでいる。
恐らく地中には、土葬された先祖の方々が眠っているに違いない。
ゾンビでも出てくるんじゃねぇのかと心配だったが、仮に出てきてもビッチに食わせればいい。
だったら野盗もビッチに食わせればいいんだが……さすがに哀れでね……。
墓地の片隅で枯れた木を見上げ、ぽつり思った。
――この世界は四季があるのだろうか。
もし冬なんてあったら最悪だ。間違いなく凍死してしまう。
それ以前に、餓死しちまう。
仕方ない。
こうなったらビッチと根競べだ。
翌日より行動は最小限に抑えて、体力を温存し、断食を試みた。
もちろんビッチにも餌をやらん。
ビッチが空腹でフラフラ状態になった時に、隙をついてアイテムボックスの金を抜きとる算段だ。
そして二日後。
もう限界だ。
そろそろ幻覚が見えてきた。
川の水しか飲んでいない。
もしかして水に当たったのだろうか、胃袋がゴロゴロと悲鳴をあげている。
さすがにビッチも限界だろう。
アイテムボックスには、水すらないのだから。
『ねぇ~君。最近食べ物を送り込んでくれないけど、もしかして怪我でもしたの~? なんなら私が介抱してあげるよん』
こいつ。
むちゃくちゃ元気そうじゃねぇか。
どうして?
【アイテムボックス】
破壊神 × 1
スライム × 3
スライムの数が減っている!?
もしや食っちまったのか?
あの緑色のネバネバした液体を食ったのか!?
どう見ても、猛毒だぜ?
だが、ビッチはスライムも食べる事ができるのだ。
これは紛れもない事実。
さらに残り三匹もいる。
やばいぜ。
マジでリーチがかかってしまった。
ちなみにこの街にはハロワのような施設もあったので、のぞいてみたのだが、『接客スキル8以上』とか『事務スキル12以上』、はたまた『料理スキルが云々』とか、どの職に就くにもスキルが必要らしい。
さらにエントリーするには、氏名等を記載しなくてはならない。
偽名すら名乗れない状況なのに、どうしたらいいんだよ!?
このままだとのたれ死んでしまう。
一刻も早く、ビッチの隙を見つけなければ。
あの破壊神に弱点はないのかよ!?