68 ブサメンガチ学園
『あーん、あーん』
またビッチがビービー泣いている。
うるせぇな。
しばらくほっといた。
例によっていつもの如く、俺が相手をしてやるまで、いつまで経っても泣き止まないつもりなのだろう。
まるで解除ボタンを押すまで、ビービー鳴り続ける警備システムのようだ。
仕方ねぇから訳してみるか。
『あーん、あーん(アニメ化したいよー)』
だから無理だって。
その前に書籍化しないと無理だろうし……
つーか、その為に俺が変な学校に行くんだっけか。
ライトノベルの専門学校の、確かブサメンガチ学園とかいう怪しい学校へ……
まぁいっか。
全部、閻魔の金だし。
「おい、ビッチ。ここはどこなんだ? どうも知らん場所のようだけどさ?」
そうなんだ。なんか真っ暗なんだ。
夜って訳でなさそうだし、無重力空間にプカプカ浮いているようだし。
なんか転送中の異次元空間ってところにおっぽり出されたとしか思えないんですけど。
「早く地球に連れて行ってくれよ。突然お前に異世界にぶっ込まれたから、みんな心配なんてしてねぇだろうけど捜索願とか出たてたら解除しないといけないだろ? 日本では人が突然消えたらいろいろと面倒な設定の世界なんだからな。てか、おーい、ビッチ?? 聞いているのか? 早く地球に連れて行ってくれよ」
『あーん、あーん(ダメだ。地球行きはキャンセルした)』
は?
『あーん、あーん(あたしは天才的なおつむでいろいろ考えてみたけど、地球で修行したくらいでは、ボッチ君がプロ作家になれるとはとても思えない)』
なんだよ。
ムカつくな。そもそもあんたが地球に行けって言ったんだぞ。
……まぁ、確かにそうさ。
悔しいが確かに俺のような筆力のない者が、正攻法で勉強したって無理に決まっている。
ビッチめ! ビッチのくせに生意気だが、外れてはいない。でも、そもそも俺の実力なんかでは、書籍化なんて無理だから専門学校に行こうとしたんじゃないか。
行けと言ったり、行くなと言ったり、お前は俺をどうしたいんだ!?
ビッチがビービー文句を言うから、振り出しに戻っちゃったじゃないか!
つーか、あんた。
ブサメンガチ学園に行ったら、誰でもプロになれるんだろ?
パンフレットにそう書いてあったんだろ?
だから俺を無理やり行かそうとしたんだろ?
責任とれよ。
ちょっぴりだけど、ワクワクしてたんだぞ。
『あーん、あーん(あれは嘘だった)』
は????
『ボッチよ』
今度は閻魔か。
『入学金を振り込む前に、学園の口座が凍結したのだ。どうも経営難に陥っていたらしく、過剰広告で生徒を集めていたようなのだ。裏で政治家ともつるんでいたみたいだしな』
なんか最近政治家とつるむ学校多いね。
つーか、さすがビッチ。思い切り騙されてるじゃん。
てか、もう手詰まりじゃん。
「じゃぁ、どうするんだよ? 書籍化諦める?」
『あーん、あーん(だめだー!)』
「だって無理じゃん? 専門学校でスキルを学ばないで、他にどうやって技術を手に入れたらいいんだよ?」
『あーん、あーん(ちゃんとあたしのお話を聞いてないわね。あたしは地球で、と、言ったのよ)』
なんか今日のビッチは、ちょっと生意気ではあるが、あんまり賢くない頭をフル回転させてなんか色々と考えているようだな。教えろよ。ビッチのおつむで考えた、その妙案とやらを。
『あーん、あーん(ふ。あたしの考えはこうよ。地球と比べて重力のある惑星でラノベの修行をするの。そうしたら成長率がぐ~んと上がるわ)』
は?
なんだよ? Gの高い惑星って?
バトル漫画の修行じゃねぇんだぞ?
普通に書くだけでくたびれてしまうじゃねぇか!
『あーん、あーん(なによ! あたしが考えたアイデアが間違っているっていうの?)』
あんたはいつも間違っている。
『あーん、あーん』
「てか、お、おい。待て。俺が半透明になっていくぅぅ。転送しやがったのか?」
『あーん、あーん(俺のアイテムボックスにビッチな女の子をぶち込んでみましたが、アニメで見たいよー。修羅の惑星に転送するから。その星もブサメンガチ学園ってのがあるよ。がんばってね!)』
できるか、ボケ。殺す気か!?




