6 俺はビッチがいないと何もできない
ビッチ入りのアイテムボックスを手に入れて半日以上が経つ。
そろそろ日が暮れてきた。
ビッチのおかげでレベルは21もあるのだ。
これがどれほど強いのか分からないが、とにかくどんな敵が現れても『入れ!』と念じるだけで瞬殺できるのは確かである。
夜になる前に街を目指した。
――宿屋、宿屋と……。
立派なホテルを見つけて入ってみたが、フロントで金を払うように要求された。
そういや俺は一文無しだっけ。
困っていると、他の客が笑いながら「ゴブリンを三匹くらい倒したら宿代くらいになる」と教えてくれた。
なんだ。
そんなことか。
簡単だ。
どうやらビッチが倒していたので気付かなかったが、モンスターを倒したら金を落とすようだ。
ビッチは金まで残さず食っていたのか?
いや、再度アイテムボックスを確認してみると、『所持金』という欄もあり8125475コロンもあった。
取り出したいが、展開するとビッチが出てきちまう。
ここからは自力で頑張るしかないようだ。
俺は街から出て、ゴブリンを探した。
腰くらいの背丈で、もはや恐ろしくもない。
レベル21もあるんだ。
素手で倒せるだろう。
だがどうしたというのだ。
ゴブリンをめがけてパンチができないのだ。
もしやビッチの呪いか?
俺の体に何かしやがったのか?
思わず「ビッチめ……」と漏らしてしまった。
『どうして君が私の名前を知ってんのよ?』
そういやこの破壊神、ビッチって名前だけっけ。
「おい、ビッチ。敵に攻撃できないぞ。何かしやがったのか?」
『したわよ』
なぬ!?
『だって最初に君はスキルがいらないと言ったじゃない。だから全スキル習得不可なのよ』
「まて、せめてパンチとかキックとかくらいできても良さそうなもんだろ? そんなのすらスキルが必要なのか?」
『そうよ、格闘スキル。もちろん剣を振るには剣スキル。魔法は魔法スキルが必要よ』
「それを先に言え!」
『もしかして何か困っているの? ここから出してくれたら特別助けてあげてもいいわよ』
スライムが『助けちゃうんですか?』と言ったのに対して、ビッチは、
『しぃ、そんな訳ないじゃない。ここから出てしまえば勝ちなのよ。なんかリーチかかっているみたいだしね』と小声で返している。
なんてこった。
これじゃぁ何もできないじゃないか!?
今日はとりあえず野宿するしかないだろう。
だが食事はどうしたらいいんだ?
飯だってタダじゃない。
そういやビッチは野生のゴブリンをむしゃむしゃ食っていた。
俺も野生のゴブリンを食えるのだろうか?
いや、それ以前にゴブリンを狩り殺さなくてはならない。
その後は料理だ。せめて火くらい通さなくては、腹を壊してしまいそうだ。俺の胃はビッチのように頑丈にできていない。
きっとそれには料理スキルがいるんだろう。
考えても埒が明かないので、とりあえず野宿をするために街へ帰還することにした。