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45 ハカー

 オリジナル様の手には手錠がかけられ、警察に連行された。

 サイバーサタンの営業マンは唖然としていたが、俺に向かって一礼した。


「見事な機転、ありがとうございます」


「いえ」


 あなた様を逮捕してもらおうとしていただけですから。

 さて、どうしたものか。


 ここは弱者を泣かせる悪徳業者である。


 アルファリアを早く隔離して欲しかったから、さっきやってきたお回りさんには何も言っていない。



 営業マンは話しかけてくる。


「ところでお客様、どういったご相談でしょうか? あ、よろしければ紅茶を入れましたのでいかがですか」


 俺はカウンターの椅子に腰かけて、紅茶をちびり。


『私にもおちゃちゃ頂戴』


 ビッチのやつ、さっきまで散々泣いていたのに、俺が何か口にするとすぐに反応してくる。

 まぁいっか。

 いつものことだ。

 ほっとこう。


 俺はポケットからサイバーデビルの広告を取り出した。


「この会社は、アイテムボックスをハッカーから守ってくれるんですよね?」


「左様でございます」


「ハッカーってどうやって侵入するの?」


「簡単です。特殊転移魔法でアイテムボックスに侵入するのです」



 マジか。

 そんなことができるのか?


 営業マンは怖い話をするときのように、声のトーンを落とし渋い顔をして続けた。


「そしてハッカーはアイテムボックス内に貴重品があればそれを盗み、不要な物はすべて焼き払うのです」



 なんと。

 ハッカーはビッチを焼き払ってくれるのか!?

 


「で、おたくらは、そのハッカーに太刀打ちできるってことなんだよね?」


「左様です」


「てことは、ハッカーのようにアイテムボックスに侵入もできるの?」


「はい」


「なんつーか。

 俺のアイテムボックスにはそれほど大切なものが入っている訳じゃないんださ、別に取られたら取られてで構わないんだけど、てか、取って欲しいというか、取り除いて抹消して欲しいガラクタが一体あるんだけど、逆に抹殺とかお願いできる?」

 

 

 どうせ無理でしょう。

 それを知って話しているのだが、ビッチがまたビービー泣き出した。


『ハカー、怖いよー!』


 いや、仮にハッカーがいても、あんたの方が怖いから。




 一旦、奥の部屋に入った黒服姿の営業マン。

 なにやらヒソヒソ声が聞こえてくる。



「社長、どうしましょう?

 わりと面倒な客が来ました」


「アホか。

 面倒な奴に構うな。

 アイテムボックスの危険性を煽れば、バカがすぐ騙されてくれる。俺達はそこをついてボロい商売をしているだけなんだから、適当にあしらえよ」


「いえ、確かにそうなのですが……」


「どした?」


「さっきの客といい、今の客といい、どうも他の客とは別格のにおいがするんですわ。さっきの客なんて宝剣まで所持していたくらいだし、今回の客もすごいお宝を持っているに違いないと思います。

 確かに外部にあるアイテムボックスへのハッキングは無理ですが、展開した中の物をすり替えることくらいできます。

 それよかレガスさん、あんた、何を怯えているんだ?」



 レガスって、あのレガスか?

 シャーマンのレガスも、そこにいたのか。

 よりによってこんなところに就職しなくても。



 レガスは、

「俺は善悪が分かるシャーマン。

 以前、とんでもない悪行ptの方にお仕えしたことがある」


「何?」


「悪行pt184億」


「……お、おい。そんな極悪、存在するのか?」


「あぁ、いる。

 そのお方は本当に恐ろしいお人だ。

 勇者ルーンベルクにモンスターを横取りされただけでカァッときて消し飛ばし、正直者の木こりに黄金の斧を無料配布している心優しい女神を躊躇なく惨殺し、自分のフィアンセにはビッチな悪女になることを強要している極悪人だ。

 だが隣の部屋にいるお客人は、そのお方を遥かに凌駕している。

 悪行pt200億越えだ!

 お前のようなシロートは、絶対に触ってはならねぇ」



 え?

 悪行pt200億越え!?

 マジ?

 

 俺はカオスフレームをのぞいてみた。

 新しい項目が増えている。



 言葉巧みに人類の平和を奪う…………悪行pt8億



 俺の悪行ptは202億にまで成長している。



 どんどん悪に染まっているではないか。

 なんかする度に悪になっていく。

 こうなったら仕方ない。

 とっとと、この悪の組織を壊滅させよう。

 そうすれば少しは改善されるに違いない。


 俺は戸を蹴り開けて、片手を前方に掲げた。


「心の弱みにつけこむ悪党共。成敗してくれる!」



 だが。

 目の前にいたのは。


 レガスが俺を指差して声を上げた。


「悪行pt200億越えのお方は、暗黒神様でしたか!

 お会いしたかったです!」



 社長と呼ばれたおっさんも号泣している。

 熊ズラをしたあの人だった。



「た、隊長。

 どこへ行っていたんですか!?

 あっしら、あれから大変だったんですぜ。金なんてねぇからこうやってすばらしいビジネスを考えてコツコツ頑張っておりました」


 すばらしいって……

 いや、あんたらしい。


「そういや、アリサは?」



「実はアリサ姫は……」


 急に顔を曇らせたゴンザ。

 どうしたんだ!?

 アリサに何かあったのか!?



「アリサ姫は……。アリサ姫は……」


「だからどうした!? 教えろ!」


「怒らないでください。あっしらは一生懸命接してきました。暗黒神様のフィアンセとして、悪行を積むように言ってきたのですが、悪いことをすることに抵抗があったのでしょう。

 すいません。あっしらも頑張ったんです。

 ですがアリサ姫は行くとこ行くとこ、良い事ばかりして、善行ptは鰻登りなのです。

 姫君自身、悪い事のできない自分の性格を悔やみ、毎日のように泣いておりました。

 そして先日、置手紙をして出ていかれたのです。

 私は悪のビッチを目指す旅にでます、探さないでくださいとだけ書かれていました」



 マジか。

 悪のビッチなんて目指してどうなるんだよ!

 悪のビッチなんて、こいつだけで十分だ!


 アイテムボックスをチラリと見た。


『ハカー、怖いよー』


 だから、あんたの方が怖いって。

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