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43 肖像権と泣き虫ビッチ

 契約を済ませると、急ピッチに話が進んでいった。

 光の精霊使いは、ルーンベルクに並ぶ超大物だったらしい。

 コロシアム関係者の中では、もう大変なことになっている。


 コロシアム内の会議室では――

 オーナーフォスマンに、広報担当のスタッフ、そして専属マネージャー諸々が集まって熱烈に会議をしている。


 コロシアムは全面改装することとなり、あらゆるメディアを使って大々的にPRするみたいなのだ。


 やめてよ。

 ひっそりやろうよ。

 オリジナル様にばれたら終わりなのよ。

 俺の任期がすぐに来ちゃうじゃない。


 さて、どうしたものか。

 やっぱスケールダウンさせた方が無難かな。


「ところで賭けとか成立するの? 俺、圧倒的に強すぎるから、対戦相手がみつからないかもしれないよ。名前を伏せて八百長試合をした方がいいんじゃない? うん、それがいい」


「ご心配には及びません。選手さえ人気があれば賭けなんて何でも成立します。あなたが何秒でモンスターを倒すかでもいいですし、どういう手段で敵を倒すかでもいいと思います。それにあなたの名前を聞けば、賭け事そっちのけでスーパーアクロバットバトルを一目見たいだけのお客様だってたくさん来られます。そうなれば入場料が跳ね上がります」



 さすが商売人。

 俺の猪口才な切り口では潰せなかった。


 うーん。どうしよう。

 まぁいっか。

 最悪、一日で引退すればいいだけだ。

 だったら……


 俺は手の平を差し出してひとこと、「肖像権」と呟いた。



「あ、そうでした。もちろんです。一日のギャラに乗せさせて頂き、この金額でいかがでしょうか?」


 契約書に記載された金額は、100億コロン。

 たしかコロンは100倍すれば円換算できるんだったな。


 ひぃ、ふぅ、みぃ。


 すげぇ!

 たった一日働けば一兆円だ。

 こんなに貰えるの?

 つーか払えるの?

 まぁ、ルール無用の大リーグの元締めみたいなところだから払えるか。

 一日でオリジナルにばれても全然OK。

 もうこれ以上、金はいらん。

 

 でも、一応いつでもトンズラできるように「前金で」と言ってみた。


 

「すいません。それは原則できないシステムになっております」


「なら、やっぱやめようかーな。めんどくさいし、基本、俺、正義の味方だしなー。あ、悪の臭いがする。プチっと退治しよっかな?」


「えーとですね……、他の選手もこの契約ですので、不公平が生じないためにも例外を作りたくないのですが……。ですが、分かりました!」



 やったー!ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿



「こういうのはどうでしょうか?

 試合の日の朝、全額お支払というのは」



 朝か。

 まだ犯罪前だし、オリジナル様に見つかっても未遂で済む。金を貰って「ごめんねー」でトンズラできる。


「分かりました。俺も男です。その条件で引き受けましょう」


「ありがとうございます」


「いえ、一緒にガッポガッポ儲けましょう!」



 商談が終わり、俺がてくてく歩いていると、またビッチが話しかけてきた。

 どうせまた難癖つける気だろう、うぜぇな。


『ボッチ君、悪いんだー。悪いんだー。アルファリアさんに言いつけちゃおうかな?』


 そんなことか。くだらん。


「おい、ビッチ。言えるもんなら言ってみろ」


『あービビってる。ほんとに告げ口しちゃうからね』


「いいさ。言えよ。ほら、言ってみろよ。いいぞ、言えよ」


『言うもん』


「どうした?

 言わないのか?

 何も起きないぞ?」


 俺は知っている。そこからだと、外界とコンタクトがとれないってことくらい暗黙の了解ってやつだ。だって、それができたら、今頃、閻魔や死神に救援を頼めただろうに。


『あーん、あーん。本当に言うんだからね。後悔しても知らないからね』



 また泣いた。

 ビッチが挑発してくるからだ。

 やれやれ。

 ギャーギャーうるさいから、ビッチの会話レベルに合わせてやった。

 

「おい、ビッチ。教えてくれよ。どうやってアルファリアに告げ口するつもりなんだよ? 俺、知りたくて知りたくて夜も眠れそうにないよ」


 どーでもいいけど。


『でしょ? でしょ? ボッチ君。相当ビビってるね。ここから出してくれたら特別教えてあげてもいいかも。おっぱいも見せてあげるよ』


 ビッチはすぐに語尾におっぱい云々をつける。

 バカか、見たくないわ、と言えばまたギャーギャー泣くから、


「へぇ、そんなことを言われたらドキドキするじゃねぇか。ちなみに出たらどうするんだ? うまいものでも食いに行くのか?」


『うん』


「ショッピングも行くのか?」


『うん、うん!』


「旅行にも行くのか?」


『うん、うん、うん!』


「そんでもって俺を抹殺するのか?」


『うん、うん、うん、プチッと!』


 ……。


『あ、今のは冗談だよ。冗談。あははは。私、ボッチ君のこと、お友達だと思っているんだからね。出してくれたら恋人になっちゃうかも。おっぱいも見せてあげるよ。なんか話のノリと弾みで、本音を暴露したというか、……あっ、いや……。てか、今のひどくない? 誘導尋問っぽかったよ?』


「出すか。バーカ」


『あーん。あーん。あーん』

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