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42 光の精霊使い

「強い! 強すぎます! 突如流星の如く現れた謎の少年! 彼が軽く手をかざすだけで凶悪モンスターは消し飛びます!!」



 解説者が場内の興奮を熱弁しているここコロシアム内では、今、熾烈なバトルが始まっている。

 セコンドにはレオ、そして餌の間で出会った子供達。



 余裕をぶっこいていた狼男をアイテムボックスにぶっ込み、続いてキマイラ、ドラゴン、そして今度はベヒモスが現れた。



【アイテムボックス】

 ぶかぶかの服を着た破壊神 × 1

 ウェアウルフの骨 × 1

 キマイラの骨 × 1

 ドラゴンの骨 × 1




『鳥さんが来ないよー。あーん、あーん』


 虐殺しながらわがまま言うな!



 客席は荒れている。

 モンスターに大金を大張りしていた者がほとんどで、この大番狂わせの組み合わせに苛立ちを覚えている者も少なくはないが、まさかの逆転劇に会場は沸いている。



 そしてセコンドの子ども達も大興奮している。


『いけえ! アルファリア様!!』



 違うけど。



 そして15体倒したところで、コロシアムは閉店となった。

 さっきまで賑やかだった場内の人々は、蜘蛛の子を散らすように姿を消した。


 さてと。

 ぎゃーぎゃーうるさいビッチにたっぷり餌をやれたし、飯を食って寝るとするか、と選手に与えられた個室に帰ろうとしていた。後ろをズラズラとレオと子供たちがついてきている。



「お待ちください」


「はい?」


 スーツ姿で八の字の口髭をした男が深く頭をさげ、名刺を差し出してきた。


「私、このコロシアムのオーナー、フォスマンと申します。少々お時間をいただけませんか」


 フォスマンと名乗る男に、応接間に通された俺とレオたち一行。

 丸いガラステーブルを挟んでソファーに座った。


「宜しければどうぞ」

 

 俺の目の前には、紅茶とケーキが並べられてある。


 まるで大切な客でももてなすかの態度で、何となく察しはついた。この強すぎる俺と何か契約でも結びたいんだろ? 

 ありがたいシチュエーションだ。

 もちろん、遠慮なんてしないさ。

 ニートの力を見せてやる。


 ケーキを手に取って、そのままガブリとかぶりついた。うめぇ。


「おい、みんなのはねぇのか?」

「あ、ただいま」


 みんなの前にもケーキと紅茶がやってきた。


「これ食べてもいいの?」と問う子どもたちに、フォスマンはにっこり笑って、「どうぞ、どうぞ」と言う。

 先日まで奴隷扱いだった子供達は困惑していたが、恐る恐るケーキに手を付けた。

 甘い味が口いっぱいに広がり幸せそうな顔へと変わった。



『ボッチ君。私のがないよ?』


 さっきたっぷり食っただろ。やるか、ボケ。


『あーん、あーん』




「さて本題ですが」

 と話しを切り出すフォスマン。



「私どもと専属契約を結んでいただきたのです」


「金くれるの?」


「はい。これで如何でしょう?」



 提示してきた金額は10億コロン。



「これ、年棒?」


「いえ、一日です」


「マジ?」


「はい、本当です。あなたにはそれだけの価値がございます」



 やった。

 もうアイテムボックスの中の金なんてどーでもいい。ビッチがでてくることを恐れてアイテムボックスを展開できなかったかが、展開する必要がなくなった。

 これでビッチに怯えなくても済む。

 俺に弱点はなくなった。

 完全勝利だ!



 もちろんと言いかけたところで、レオが割って入ってきた。

 さっきからケーキにも口をつけず、難しい顔をしていたレオ。

 腹でも痛いのか?



「光の精霊使いアルファリア様が、お前達の薄汚れた金を貰う訳がないじゃないか! アルファリア様はお前達に天誅をくだそうとしていんのだ。さぁ、悪の親玉に制裁を!」



 は?

 なんでよ?



 フォスマンの顔が青くなる。レオの話を真に受けているに違いない。「あなたがあの光の精霊使いだったのか!」と悲鳴をあげ、ゴキブリが這うようにカサカサと逃げようとしている。早くこの紳士に俺が凡夫であることを証明しなくては!



「フォスマン氏。契約を結びましょう。俺はあなたと共に繁栄していくことを望んでいます。力を合わせてコロシアムでぼろ儲けしましょう!」


「え? なんか裏心とかない? 実はこうやって仮面の姿を演じて、闇に紛れて私を抹殺しようとか考えていない?」


「まったく。あなたはお金を稼ぐ人。俺は貰う人。それでいきましょう!」


「世間では光の精霊使いアルファリア様は、悪には容赦ないお人だと聞きますが」


 

 いや、俺、違うし。

 まてよ。


「光りの精霊使いがそんな安い契約金で動くと思う?」


「あ、そういうことだったんですね。今までの小悪党共はアルファリア様がお望みになる金額を提示できなかったのですね。分かりました。二倍、いえ、三倍お支払いたしましょう。これでどうでしょうか?」



 やったー!ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿



 でも真面目な顔で、

「まぁ、お試し期間中はそれで我慢しましょう」


「もちろんです。いずれは10倍、いえ20倍の報酬をお支払していこうと思っています。光の精霊使いが看板になれば、このコロシアムは派手に儲かります」



『ねーねー、ボッチ君。アルファリアさんにばれたらどーするの?』



 ビッチのやつ、聞いていたのか。

 

 だけど勇者ルーンベルクの彼女なんだろ?

 ルーンベルクなら少々のことなら「ごめんねー」で許してくれそうだ。

 カップルなんだから似たモノ同士なんだろ。家出した経緯も一緒だし。

 アルファリアにばれたらこんな商売即中止、「ごめんねー」で立ち去る。

 こんな仕事、一生しようとは思わないし。

 それまで稼ぐだけ稼ぐぞ。

 

 

 それよか、レオ。

 なんでそんなに泣きそうな顔をしているんだ?


「おい、レオ。どうした? ケーキ食わんのならおくれ」


「アルファリア様。俺、あなたのことを尊敬したのに。だから俺……」


 レオはソファーから立ち上がると、どこかに走って行った。



『あーあ、泣―かした、泣ーかした。ボッチ君が泣ーかした』


 おい、ビッチ。

 俺、なんか悪いことした?



『極悪』



 破壊神に極悪と言われてもなぁ。


 そもそも善悪のカオスフレームはザルシステムで、直接犯罪をしなければ悪行ptは増えない仕組みになっている。

 それに俺は一言も自分はアルファリアだと言っていない。

 勘違いを利用しているだけです。

 カオスフレームを閲覧しても、偽名を語る等の記載はなかった。



 ビッチがビービーうるさいから、レオが食べなかったケーキをぶちこんでやった。


『うまうま。もっと頂戴』


 大切に食え。



【アイテムボックス】

 ぶかぶかの服を着た破壊神 × 1

 モンスター達の骨の山 × 1

 ケーキについていた銀紙 × 1

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