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41 コロシアム

 ここはすり鉢状の闘技場控室。


 部屋の入り口にはプレートがあり、『餌の間』と書かれている。

 俺とレオの他にも子供達がいて、彼らは震えている。


 餌に抜擢された子供達を残虐ファイターやモンスターが派手に殺して、その強さと凶悪性を徹底的にアピールし、その後カッコいい騎士が颯爽と登場して子どもを殺した悪役を退治する趣向らしい。

 必ずヒーロー役が勝つとも限らず、わりと行き当たりばったり。そんでもってお金を賭けて遊ぶギャンブルみたい。


 まぁこういう趣向のお店に正義なんてないけどね。



 やっぱりレオも震えている。


「おい、どうしてついて来たんだよ? お前、剣も振れないし戦えないじゃん?」


「魔法ならちょっとは使える」

 とマッチ棒くらいの炎を指先に灯してみせた。


 実際、俺は魔法すら使えん。

 レオの方が強いのかもしれんが、俺には無敵のビッチ入りアイテムボックスがある。 



 アイテムボックスを閲覧した。


【アイテムボックス】

 ぶかぶかの服を着た破壊神 × 1


 奴隷商のおっさんの骨が消えている。

 やっぱ、残さず食ったか。

 そしておっさんの服を着たんだな。

 よかったな。

 服が手に入って。



「おい、ビッチ。これから次々に凶悪モンスターをぶちこむぞ」


『鳥さんいる?』


「知らん」


 そういえば対戦相手のポスターが壁に貼ってあったな。

 どれどれ、俺とぶち当たるのはどいつだ?


 ほぉ、こいつか。

 強そうだな。

 名前を読み上げた。


「なになに、月下の殺し屋――ウェアウルフのジャルガーか」


『わんわん、怖い』


「こいつは犬じゃねぇよ。狼だ。わりとうまそうな顔しているぞ」


『ボッチ君。やめて。わんわん怖い』



 知るかよ。

 どうせなんでも食っちまうんだろ。



 それよか腹ごしらえだ。

 控室にはスープとパンが支給されている。

 これが餌の子の最後の晩餐である。

 もっといいもの出せよ。ケチだな、とぼやきながら俺は支給品のパンを手に取ってかぶりついた。牢屋の中ではカビパンしか食っていなかったら、しけたパンでも結構いける。


 そういや、アリサ、どうしてっかな?

 彼女の作ったサンドイッチは最高だった。


『ボッチ君。自分だけズルイ。

 パンちょうだい!』



 やるか、ボケ。

 わんわんをぶち込んでやるからから、そいつを食っとけ。



『あーん、あーん』


 レオが、「おい。さっきから誰と話しているんだ? もしかして君は精霊の声でも聞こえるのかい?」


 

 は?

 なんだよ。それ?

 ビッチの声しか聞こえねぇよ。



「あっ!」


「なんだ、デカい声だすなよ。ビックリしたじゃないか。パンを落しちゃった。もったいねぇ」



「やっぱりそうだ!

 善行ptが高くなると清き精霊の声が聞けるようになるという。更に修行を積むと、精霊を自在に操れるようになる。昨日見せたあの技、手を振れず敵を倒した。あれは精霊の力を借りたものだろ? 君は善行pt8億の聖人。光りの精霊使いアルファリアだろ?」



 誰だよ、そいつ。

 俺はそんな聖人ではありません。

 悪行pt184億の地獄行きが決定した哀れなボッチです。



「実は俺、ずっとあなたを探していたんだ。覚えていますか? あなたに弟の命を助けてもらった者です。手を振れず悪党を消滅させ、そして病気の弟を治療して名前を告げずに去っていかれました。あなたは後ろ姿しか見せてくれなかったけど、バッチリ覚えています。まぶたの裏にはあなたの後ろ姿が焼き付いています。絶対に見間違える筈がありません。あなたは光りの精霊使い、アルファリア様です」



 いえ、まったく別人です。



「みんな、泣くな! もう大丈夫だ! 光の精霊使いが助けてくれるぞ! 俺、あなたにもう一度会いたくて、過酷な奴隷になったんだ。あなたは可愛そうな子どもを助けて回っているスーパーヒーローだから。だからもう一度――」



 


 さっきまで泣いていた他の子ども達も、

「本当ですか? あなたがアルファリア様?」




「違うよ。おい、ビッチ。俺はアルファリアじゃないからな!」



 ビッチに俺の名前(偽名も可)を知られると大変なことになる。だから首をぶんぶん横に振って全力で否定した。



『うん、知っているよ』



 なんだと。

 ビッチの知り合いだったか。

 なんか、こんな展開、前もあったな。


『アルファリアはね、お兄ちゃんの彼女なんだよ』



 は?

 女の人、だったの?

 レオよ、お前の目は節穴だ。



『私が住んでいた地獄界のご近所さんにね、修羅界っていう超絶殺人ワールドができる面白い場所があるの。アルファリアさんは修羅の国のお姫様なのに、あなた方のように悪列非道な者とこれ以上一緒にいられませんと言って家出した不良のお姫様なんだよ。死神のおねーちゃんが目の色変えて追っかけていたけどね』




 世間は狭いな。

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