39 ビッチとボッチ
懲りずに第二部が始まりました\(^o^)/
ここはどこだ……?
頭がいてぇ……
ハンマーでぶっ叩かれたように、後頭部がガンガンする。
いったい俺はどうなっちまったんだ?
確か冥界へ行き、そしてルーンベルクと再開して……
そこまでは覚えている。
いきなりラストバトルに突入したんだっけか……
その後、どうなった?
敵は死神ネキに閻魔ニキ。
対する俺達は、邪神ルーンベルク、偉大なる賢者……そして俺だっけか……
とにかく俺は尊大な存在だったような気がする……
まったく思いだせねぇ。
閻魔が「もしやお前は×××なのか! まさか我らが宿敵と再び相見えることになろうとはな!」と天を割るような怒声をあげ、襲いかかってきた。×××の言葉が思い出せないが、俺には無敵のアイテムボックスがあるから、あんな奴ら、手をかざして「入れ」と念じれば一発だ。
俺は閻魔に向かって手をかざそうとした、その時だった。
ルーンベルクが叫んだ。
「まずい! 君の名前をビッチに知られてしまった」
うん、確かそう言った。
俺はなんて名前だったっけか。
ぐぅ……
まったく思い出せない。
思い出そうとすると頭が割れるように痛くなる。
まるで意図的に記憶を封じ込められているようだ。
ルーンベルクは早口で続けた。
「このままではビッチが外へ出てしまう! そうなれば閻魔、死神、破壊神の三魔神を我々だけで抑えなければならない……。言いにくいが賢者殿は長く記憶を封じられ魔力のほとんどを失っている。それに君も己の存在を知ったばかりだ」
俺は、
「勇者ルーンベルク。ここまで来て逃げる訳には……」
「ならん! このままビッチを外へ出しては駄目だ! 今、君のアイテムボックスの中でビッチがわくわくした気持ちで機をうかがっている。こうなればやむを得ん!」
そこで俺の記憶は途切れた。
そういやアリサから借りた指輪がないぞ。
あの指輪に祈りを捧げたりピコンとデコピンをしたら、なんとも晴れやかな気持ちになって、日頃のストレスがすっきりと解消した気がしたんだが。
どこへいったんだろ?
それにここはどこなんだろう。
アリサ達と別れた湖ではないようだし、えらく寒いぞ。
俺は顔を上げて辺りを見渡した。
どうやらここは馬車の荷台なのだろうか。
カラカラと車輪の音がする。
「あ、気が付いたな。大丈夫か?」
誰なんだろう? この子。
年は12、3くらい。
ボロを着ていて顔はススだらけだし、手枷までしてある。
他にも似たような子が数名いる。
「オレはレオ。お前、早く体調を整えた方がいいぜ」
「ここはどこなんだ?」
「覚えていないのか?」
「あ、うん」
「これは奴隷狩り達の馬車さ。エーンブルクって街に向かっている」
俺にも手枷がしてある。
「なんと! もしかして俺は売られちまうのか?」
「どうだかな。死にそうなガキには値段がつかないらしい。そうなっちまったらコロシアムとかの余興で、敵の強さを図るパロメーターにされちまうって話だ」
??
俺が首を傾げていると、レオが苦笑いを浮かべ、もうちょっと詳しく付け加えてくれた。
「剣闘士が武器を持って猛獣と戦ったりするだろ? その猛獣がどれくらい強いのか死んでもいい奴隷を使ってあらかじめお披露目しておくんだよ」
なんですと!?
いやです。
いや、待てよ。
俺には無敵のビッチがいる。
だったら何も心配いらない。
猛獣だろうが怪獣だろうが、次々にアイテムボックスにぶっこんで腹ペコビッチに食わせればいい。
……本当にまだいるのか不安になってきた。
アイテムボックスの状態をチェックした。
【アイテムボックス】
破壊神 × 1
ビッチはご健在のようだ。
『ねーねー、神さま、お腹すいたよー。なんかちょーだい』
誰だよ。神って。
神はてめぇだろ!?
相変わらずビッチは訳の分からん事ばかり言う。
まぁいいか。
ビッチらしい。
――おい、ビッチ。もうちょっと待ってろ。すげーモンスターをぶっこんでやるから。
『わーい』




