30 ビッチと犬2
ビッチよ! 苦しむがいい!
今までお前が地球からこの世界にぶち込んできた、いたいけなボッチ達を代表して、俺がキッチリと引導を渡してやる!
俺は右手を突きだして念じた。
アイテムボックスにワイルドドッグが投入される。
【アイテムボックス】
破壊神 × 1
邪神像 × 295/300
スライム × 1/6
犬 × 4
さぁ、ビッチよ、どうする!?
『あーん、あーん、あーん』
ビッチがビービー泣き出したぞ。
俺はビッチの隙をうかがっていた。
――勇者ルーンベルク。聞こえますか?
『魔神狩りの少年よ。どうした?』
――今、ビッチはどうなっています?
『わんわんが怖いと言って泣きじゃくっている』
――もしかして隙だらけですか?
『あぁ、どうもこちらに注意が向いていないようだ』
しめた!
――今のうちにあなたを取り出します。
『――待て。少年。どうもビッチの様子がおかしいのだ。ちょっと話をさせてくれ』
様子がおかしい?
それはどういうことだ。
もしかして巨大化するのか?
俺はルーンベルクの指示に従い、しばらく待つことにした。
『おい、ビッチ。どうした? 相手はたかだかレベル3のワイルドドッグだ。何をそんなに怯えている?』
確かにそうだ。
破壊神にとってワイルドドッグなんて敵じゃない。
今はきっと、仲たがいした勇者としてではなく、血のつながっている兄貴としてビッチが気になるのだろうか?
『あのね。私、わんわん、食べたいの。
でもね。わんわん食べたら、閻魔のお兄ちゃんと死神のお姉ちゃんが悲しんだの』
もしかしてビッチは、過去にお腹が空いて、兄貴たちのペットのケルベロスとヘルハウンドを食べてしまった。
そして、それを後悔していたのか?
ビッチに反省するという、人間らしい心があったのか!?
だがそれなら丁度いいじゃないか。
ビッチが勝手に後悔している内に、ルーンベルクを取り出してしまえ。
――勇者ルーンベルクですか? ビッチなんてほっといてください。今取り出します。
『少年。済まない。浅はかだった。
俺がビッチに話しかけている間に――』
ど、どうしたんだ!?
『ビッチが犬を全部平らげてしまった』
『あーん、あーん、あーん。また、わんわん食べちゃったよー』
【アイテムボックス】
破壊神 × 1
邪神像 × 295/300
スライム × 1/6
犬の骨 × 4




