3 俺はビッチにバトルをさせる
考えてみたら、俺の交渉は正しかったのだろうか。
俺のアイテムボックスにはビッチが住んでいる。
奴はもうカンカンだ。
アイテムボックスの出入り口は別々のようで、物を収納するときは手をかざして『入れ』と念じるだけだが、出す時はアイテムボックスを展開する必要がある。
その隙にビッチが出てくる恐れがある。
つまりこのボックスには、入れることはできても、取り出すことはできないってことか。展開すると最後。俺が抹殺される。
いきなり序盤でつまずいてしまった。
こうなったら、もはや街へ行って就職するしかないのか。
はぁ、辛いぜ。
街へ向かう道中――
かれこれ半日以上は歩いた。
「何か頂戴。幻覚が見えてきたよー」
というビッチを無視しつつ、 時折現れるモンスターから逃げ回りながら、とにかく道を急いでいた。
装備は何一つないし、回復の薬さえないのだ。
その辺の雑魚モンスターにさえも勝てる見込みは皆無。
だが、とうとうゴブリンの群れに囲まれてしまった。
仕方ない。
俺はゴブリンに手をかざして、『入れ』と念じた。
俺のアイテムボックスにはゴブリン8体が収納された。
俺のアイテムボックスに、またゴミが増えた。
アイテムボックスの中から声がする。
『ここはどこだ? お、美人がいるじゃねぇか』
『あ、うまそうな肉が湧いてでてきた』
『ひぃ!』
じゅるじゅる。
ガリガリ
ちゅるちゅる。
不気味な音がこだましている。
ビッチはいったい何をしているのだろうか?
その時だった。
俺のレベルがひとつ上がった。
ヒロト
レベル2
HP:12
MP:0
【アイテムボックス】
破壊神 × 1
ゴブリンの骨 × 8
ビッチはどうやら肉食のようだ。




