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俺のアイテムボックスに、ビッチな女の子をぶち込んでみました  作者: 弘松 涼
第一章 伝説は始まる……破壊神と創造神の物語
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28 ビッチの過去3

 勇者ルーンベルクの話は続いている。



 邪神とは、人々をよこしまな心から救済する神だったのか。

 まるで現代に降臨したブッダのようだ。



 なんだか知らないが、聞いているこっちの方が熱くなる。

 


 けれど――

 いっこうに犬のくだりは出てこない。



 ちなみに今は、ビッチがまだ小さかった頃の話だ。


 あの世の決まりごとを丁寧に話してくれている。

 この当時はまだ、悪い事をしたら悪行ptが増えるといった、カオスゲージのシステムが無かったらしい。


『地獄の裁判官は閻魔。

 天国の審査官はゼウス。

 いずれかの審査員を通過すれば、それぞれの世界で住むことが許される。

 まず三途の川でアルバイトの鬼の手によって、大まかに振り分けられる。

 ここのシステムがザルで、大抵の場合第一印象か人相で決められている。

 そして人相が悪いという理不尽な理由で一方的に悪人と決めつけられた人間は、地獄の入り口までやってくる。

 閻魔の仕事は、彼らに尋問して善悪を確かめる事。

 だが閻魔はたくさんの労働者が欲しい。

 全員地獄へ落とした』



 ひでぇ。



『一方、ゼウスも困っていた。

 彼も適当に人相で決めていた。

 あんまりクレームを言いそうにない者だけを天国へと招待していた』



 クレーム?



『天国へ行くと、ありとあらゆる贅沢ができる……ことになっている。

 生前頑張ったご褒美という名目でな。

 だが、人は贅沢をしているうちに感覚がマヒしてしまうのだ。

 昼飯に髪の毛が入っていたという理由だけで、シェフの天使を殴った人間まで現れた。

 飯は無料だというのに、感謝をする者はほとんどいない。

 天国のスタッフ達は、日々クレーマー死者を恐れて仕事をしていた』



 なんとも哀れな。



『ある日、ゼウスが兄の元へ訪ねてきた。

 先祖代々犬猿の仲と称される両家ではあったが、どういう訳か兄とゼウスは仲が良かった。

 ゼウスは、ストレスに悩まされていたのだろう。

 もともと薄かった頭は、日に日に寂しくなっていく。

 そして、ことある度に兄の休みの日を狙って愚痴りに来ていた。

 難しい話しになると、当時まだ幼いビッチは隣の部屋に行って一人で遊び出す。

 ビッチを退屈させまいと、兄と姉が我が子のように可愛がっていた愛犬――地獄の番犬ケルベロスと赤い目を持つ黒妖犬ヘルハウンドも隣部屋に消える』



 ほぅ。



『この日もゼウスはいつものように愚痴っていた。

 ゼウスは、姉の持ってきたコーヒーを一口で飲み干すと、

「おい、閻魔、聞いてくれよ。

 今日な、死者共がまた酷い注文をしやがるんだ。

 死者の注文はなるべく叶えてやる約束だが、今回はさすがに堪忍袋の緒が切れそうになった。

 不味いメシを出した天使を地獄に落とそうとかぬかしやがったんだ。

 そうすれば、必死になってうまいメシを作るだろうって。

 天使は手を抜いてはいない。

 あいつら、働きもせず、腹もたいして減っていないのに贅沢ばかりしているから、メシがおいしくないんだ。

 閻魔はいいよな。

 死者共を奴隷のようにこき使えるなんて、マジで楽しそうだぜ。

 俺も死者共をぶち殴って、ムチでたたきたいぜ』



『すればいいじゃん?』



『そいつが駄目なんだよ。

 わし達は、頑張った人間にご褒美するという役割で神ギルドに登録されている。登録許可外の事をしてしまえば、神ギルドから追放される』



 ――神ギルド? 

 何でもあるんだね。





『こんな調子で、閻魔とゼウスは互いの悩みを語り合っていた。

 しばらくは、同じのような日々を繰り返した。

 相変わらず、閻魔はいい加減な裁判を続けている。

 来る者拒まず。訪れる者は、とにかく全員地獄行き。

 俺はいつも閻魔にちゃんと仕事をするように言っていたのだが、一日の死者数は膨大だ。それを裁くのは容易ではない。確かに雑になるのも分からなくはない。

 俺は、良い方法がないかと模索していた。

 

 そんなある日、ゼウスは喜び勇んで地獄にやってきたのだ。

『――おい、閻魔、聞いてくれ。ワシはグッドアイデアを思いついたぞ』

『なんだよ、ゼウス』


『地上の連中すべてに、カオスゲージという指標を標準装備させてみてはどうだ? 良い事をすれば善行ptが上がり、悪い事をすれば悪行ptが上がるって仕組みだ。

 そうすれば、システマチックに天国と地獄に振り分けることができる!』


 その時の俺は、ゼウスの発言をグッドアイデアに思えた。

 これでデタラメな裁決に苦しむ者はいなくなる。

 兄も、俺に判決で文句を言われない画期的なこのシステムを喜んで導入した。


 地上の民にこのシステムを説明して回ったところ、天国に行ける指標がハッキリした為、善行を行う者が増えた。


 俺は喜びに打ち震えた。


 皆が、自ら進んで良い事を始めたからだ。


 だが天国まで行く敷居は高く、少々善行を積んだだけでは天国に行けない。

 選ばれた者だけが天国に行ける。

 ゼウスの狙い通り、モンスタークレーマーは激減した。


 だが、今度は地獄に面倒な住人ばかりやってくる。

 悪知恵を持った輩は、色々な手段にでてくる。

 そいつらは、ムチで叩いても脅して、働かないのだ。

 地獄の亡者は何をしても死なない。

 それを逆手に取られた亡者流ストライキだ。

 今度は兄が、弱り出した。

 兄からすれば、天国に行けるようなお人よしを地獄に落としたいのだ。

 ある日、兄と姉は気付いたのだ。

 このシステムには大きな欠陥があるということに。

 行動履歴でしか判定していない。

 つまり、間接に悪事をしても悪行ptは増えないのだ』



 そういえばガーゴイルは、死神と取引をしていたな。

 自分に変わって誰かに悪い事をさせてしまえば、問題ないということか。

 つまりゴンザが召喚士に俺を殺させようとしたのも、罪は召喚士が召喚した何も分かっていないモンスターにいく事になる。

 もう少し付け加えれば、モンスターが人を殺すのは対立した間柄だから問題ないということなのか。



『兄と姉は、扱いやすい善良な者を悪党として地獄に落とす計画を立てた。

 そして彼らの狙いの矛先は、異世界に向いた。

 異世界の住人は、こちらの世界の仕組みを理解していない。

 もっとも容易に騙せて、地獄へ叩き落せる』



 その役目を、成長したビッチが。



『ああ、そうだ。これが神々の呪われた因縁たる物語だ』



 カオスゲージにはそんな深い過去があったのか!



 でも?

 あの?

 犬は?




『そうであった。

 えーとだな。

 ビッチは幼い頃、地獄の猛犬と仲良く遊んでいた。

 ゼウスが訪ねてくる度に、隣の部屋で遊んでいたのは知っている。

 だがある日を境に、兄達の愛犬は姿を消したのだ』

 

 

 

 ――ビッチと犬が隣の密室に入り、犬だけが姿を消しただと!?

 

 

 

 いったい何があったんだ?

 

 

 

『分からぬ。すべては謎だ』

 

 

 

 どうなったのか気になるが、

 そもそもこの話、最後の一言だけで済んだのではないだろうか??

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