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俺のアイテムボックスに、ビッチな女の子をぶち込んでみました  作者: 弘松 涼
第一章 伝説は始まる……破壊神と創造神の物語
25/70

25 果たしてビッチに知恵はあるのか?

 ビッチは犬が怖いと言った。



 明日の早朝、猛犬を100匹程度、アイテムボックスへぶち込んでやるつもりだ。

 ようやく今夜こそ、良い夢を見ることが出来そうだ。


 



 眠る事、ちょびちっと。


 ハッと目が覚めた。

 汗びっしょりだった。


 どうも、俺はうなされていたようなのだ。


 悪夢を見たのだ。





 夢の中で――

 ビッチは、犬が大好物だった。

 そしてビッチの目的は、大量の犬をアイテムボックスに送り込んでもらう事だったのだ。

 

 それはまるで昔話で聞いたことがある――『まんじゅうこわい』という話に酷似していた。

 

 

 まんじゅうこわいとは、江戸時代にあったとんち話で――

 

 暇をもてあました街の者が数名集まり、それぞれ嫌いなもの、怖いものを言いあっていく。「クモ」「ヘビ」「アリ」などと言い合う中にひとり、「いい若者がくだらないものを怖がるとは情けない。世の中に怖いものなどあるものか」と言ったそうな。

「本当に怖いものはないのか」と聞くと、男はしぶしぶ「本当はある」と白状する。


「では、何が嫌いなのか」と念を押され、男は小声で「まんじゅう」とつぶやく。男はその後、「まんじゅうの話をしているだけで気分が悪くなった」と言い出し、隣の部屋で寝てしまう。

 残った男たちは「あいつは気に食わないから、まんじゅう攻めにして脅してやろう」と、金を出し合い、まんじゅうをたくさん買いこんで男の寝ている部屋へどんどん投げ込む。 

 目覚めた男は悲鳴を上げ、ひどく怯えてみせながらも、「こんな怖いものは食べてしまって、なくしてしまおう」などと言ってまんじゅうを全部食べてしまう。一部始終をのぞいて見ていた男たちは、ようやくだまされていたことに気付く。

 

 怒った男が、「お前が本当に怖いものは何だ!」と聞くと、

「このへんで、濃いお茶が1杯怖い」






 ビッチは、

「わんわん、おいしくないよー」と言いながら、次々に犬を平らげていく。

 そして犬を食うたびに、ビッチは巨大化していくのだ。



 高層ビルを一蹴りで破壊できちまいそうなくらいのまるで怪獣みてぇな大きさになったビッチは、口を大きく開いて「あーん」と言い、邪神像を一飲みにしてしまった。



 ビッチは一口で邪神像を食えるサイズまで巨大化するために、敢えて犬が怖いフリをしていた。



 これが俺の見た悪夢だった。




 ドンドンという音で、俺はビクリと身を仰け反った。

 物置がノックされている。



「旅人さん。大丈夫ですか?」


「アリサか。何でもないよ」


「そうでしたか。良かったです。前を通りかかったら物凄い悲鳴を上げていたので心配して……。お水をお持ちしました。ここを開けてくださいませんか?」



 戸を開けた。

 アリサは目を赤くはらしていた。


「どうしたんだ? 目が真っ赤だよ」


「あ……。……私、もしかして旅人さんに嫌われたんじゃないかと……」


「え? なんで? あ、水、おいしいよ」


 

 水を受け取ってごくごく飲んだ。

 ビッチが巨大化するという恐ろしい夢を見たせいもあり、喉はカラカラだ。

 よく冷えていてうまい。

 


 ビッチが何か言っている。


『喉かわいたー。お水、ちょーだい』


 誰がやるか。


 それよか、こいつ。

 もしかして知恵があるのか!?



 アイテムボックスをのぞいてみた。



【アイテムボックス】

 破壊神 × 1

 邪神像 ×  297/300

 スライム × 1/5

 犬 × 1

 



 兄貴が若干削れていて、骨の山は綺麗さっぱり消滅している。

 スライムは1/3から1/5まで減っている。

 それなのに、犬はピンピンしている。

 犬はタンパク質だ。

 絶対スライムよりうまいと思う。



 ビッチのやつ。

 知恵が無いフリをして、俺を誑かしているのかもしれない。

 とにかく確認を急いだ方がいい。



「アリサ。ありがとう。もう一眠りしたいから、また」


「……どうしてですか?」


 ??


「どうして、私のお部屋に来てくださらなかったのですか? やっぱり聖書を渡した私を嫌いになったのですか? ……私、あの優しかった旅人さんが暗黒神様だと信じたくありません」



 なんか、これは色々とめんどうな展開ですね。

 俺にはアイテムボックスの中でビービー言っているビッチ攻略で頭がいっぱいなんです。



「ごめん。ちょっと俺……やることがあるから……」


 そう言って物置の戸を閉めようとした。

 悪いけど、ビッチが犬好きかどうかを、一刻も早く突き止めなければ真の勇者は食われてしまうんだ。



『お水ちょーだい。喉かわいたー』


 骨ばっか食うからだ。

 スライムでも飲んどけ。


『スライム。おいしくない』



「旅人さんのやることってなんですか?」



 アリサに言っても分からんだろ。

 だけど適当にあしらうのも何だか可哀そうなので、話せる範囲で話すことにした。



「えーと……。なんつーか、俺は、あるヤツの弱点を探しているんだ」



「ある人の弱み……ですか? それは、どうしてですか?」



「そいつ、ビッチという名でな、とにかく嫌らしい事ばかりするんだ」



「えっ!? ……旅人さん。……ビッチと……とにかく、やらしい子とばかりしているのですか?」



 ん?

 なんかおかしいぞ。



「とにかく俺は、ビッチを倒さなければならない」


「……ビッチを押し倒してどうされるんですか?」



 押し倒す?

 まぁいいか。



「あ、でも、よく考えたら、倒したらまずいんだ。ビッチはあれでいて役に立つ。倒すというより、動きを封じた方がいいな」



「押し倒すのをやめて、縛るのですか?」



「アリサは簡単に言うけど、ビッチは容易に縛れる相手ではないんだ」



「縛り方に注文が多いのですか? ……私は特に面倒な注文をしませんよ? シンプルで構いません」



 んん?


 どうも話がおかしい。

 それになんでアリサは、顔を赤くして、それでも食らいついてくるんだ。

 これ以上話しても、理解を得れそうにもない。

 結論を述べて終わりにしよう。

 


「なんか話が噛みあっていないようだけど、とにかく俺はビッチをなんとかしなければならないんだ。ビッチがいるせいで金すら持ちだせないから、このままだと誰かの世話になって生きていくしか道がないんだ。

 それだけじゃないんだ。

 俺、悪行ptが上がりまくり、その上、勘違いまでされまくって――

 なんつーか、このままビッチの弱点が分からないままだと、俺はまったく良い事できないんだ!」

 


「……分かりました。旅人さんは、良い子と、できないんですね……」



 ――良い子とできない??



「――私、頑張って悪い子になりますから……。あなた好みのビッチを目指しますから、だからどうか一人で苦しまないでください」



 アリサはそう言うと走って立ち去った。

 泣いていたようにも見えた。




 静かになった物置で声がした。



『ねー、お水マダー?』


「おい、ビッチ。マジで犬は苦手なのか?」


『わんわん。怖い』





【アイテムボックス】

 破壊神 × 1

 邪神像 ×  297/300

 スライム × 1/6

 犬 × 1

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