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俺のアイテムボックスに、ビッチな女の子をぶち込んでみました  作者: 弘松 涼
第一章 伝説は始まる……破壊神と創造神の物語
22/70

22 チキンうまうま

 ビッチは、デタラメに食う速度が早い。

 とにかく餌を供給し続けなければ、兄貴をガリガリやり始める。


 鳥系モンスターを見つけては、アイテムボックスにぶち込んだ。



 コウモリ怪人。

 人面鳥。

 ハーピー。

 カラス天狗……

 


『わーい。チキンだ。うまうま』


「おい、ビッチ。大事に食えよ!」


『うまうま』



「勇者ルーンベルク。ビッチの好物の鳥系モンスターを突っ込みますから、早く石化を解いて……。いや、今のうちに――」


『だ、駄目だ。少年。

 俺が動こうとしたらビッチがすかさず反応する。とにかくもっとたくさんのモンスターを投入して、ビッチの腹を満腹にしてやる必要がある』


「ビッチは腹いっぱいになるんですか? 満腹中枢がぶっ壊れているのでは?」


『満腹中枢があるのかどうかは分からんが、腹が膨れれば幾分か動きが鈍くなる』


「そ、そうか! その隙にあなたを出すんですね」


『あぁ。頼む。だが十分注意してくれ。ビッチはアホっぽいが腐っても神だ』




 邪神像を削り取る強靭な歯と、何でも溶かす悪魔の胃袋を持っている。

 確かに神クラスの実力者だ。



 俺は山を駆け巡り、鳥系モンスターを次々にアイテムボックスに収納していった。

 このままだと、近い将来、この山から鳥が絶滅するのではないだろうか。



 上空にワイバーンの群れが見える。

 俺は空に手の平を掲げ、「みんなまとめて入れやー!」と叫んだ。


『わーい。手羽先キター!!!

 軟骨うまうま』





 なにやらヒソヒソ話が聞える。


「やはり暗黒神様は、想像していた通り最強だ。鬼神の強さとは、まさにこのことだ。敵なんざ、手をかざしてファイヤーと叫ぶだけで消滅している」


 この声はゴンザか。シャーマンに召喚士までいる。



「私にはどうも『入れやー!』 と聞こえますが……」


 これはアリサ。

 アリサもついて来てしまっているようだ。



「それはお耳の錯覚です」


 と説明するゴンザに、アリサは、


「それにしても、どうして旅人さんは鳥類だけ倒しているのですか?」



「それは鳥には翼があり、なんとなく神に似ているからです。暗黒神様は、神々を忌み嫌っております」



「旅人さんが、神を嫌っている?」

 


「はい、アリサ姫。さっきも申しましたが、あなたは記憶の一部をなくしおいでです」


「いえ、私は記憶喪失になっている自覚がまったくありません。

 幼い頃に両親が他界して、身寄りのいない私達姉妹をおじさんが引き取ってくださいました。今でもハッキリと覚えています」


「もっともっと以前の話です。覚えていますか?」


「……言われてみれば、2歳や3歳の頃の記憶はどうも曖昧で……」



 そんな昔の話、誰だって曖昧ですが。



「アリサ姫。あなたは暗黒魔界の女王になられるお方なのです」


「私と旅人さんが……。

 で、でも先程から暗黒神、暗黒神とおっしゃっていますが、旅人さんは良い人ですよ?」



「では、どうして勇者ルーンベルクを抹殺したんですか?」



「え、あれは……転移魔法で移動しただけでは??」



「違います。獲物を横取りされてカチンときた暗黒神様が、制裁を加えただけです」



「ど、どうしてそのような恐ろしいことを……」



「だから言っているでしょう。あのお方こそ、闇より生まれし悪の化身。そしてあなた様は、最強の悪を支える女神様」



「え? え? わ、私……。どうしたらいいんですか?」



「何も心配いりません。暗黒神様は、悪行ptを上げるのがお仕事。だから、この世界に巣食うムカつく奴らを片っ端からリストアップして暗黒神様に抹殺をお願いするだけでいいのです」



「え、え!? ムカつく人なんていません!」



「では、このゴンザがご指南致して差し上げます。

 なーに、簡単です。

 この世界にはムカつく者なんて腐るほどいますから。だって姫。あの方に喜んでもらいたいでしょう?」



「……は、はい」



「暗黒神様の食前の運動も、もうじき終わることでしょうし、冷えてきましたから、そろそろ帰りましょう。

 あれ、姫、どうして泣かれているのですか? あなたは暗黒神の妻になられるお方です。善行ptが高すぎると嫌われますぞ。このゴンザを信用して任せておけば何も心配はいりません。あはははは」

 

 

 

 

【アイテムボックス】

 破壊神 × 1

 邪神像 ×  298/300

 スライム × 1/3

 犬 × 1

 鳥の骨 × 627

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