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俺のアイテムボックスに、ビッチな女の子をぶち込んでみました  作者: 弘松 涼
第一章 伝説は始まる……破壊神と創造神の物語
21/70

21 勇者ルーンベルクの危機!?

 兄貴は超ピンチだ。

 急いで窓から外をみた。

 その辺をうろついていた野犬を、アイテムボックスに放り込んだ。



 犬。

 すまない。

 真の勇者と世界を救う為、時間稼ぎをしてくれ。




 隣部屋では、ゴンザにシャーマン、召喚士、挙句の果てには爺さんまで加わって、とんでもない方向へと話が展開していっている。




 俺が暗黒神の化身で、アリサはその婚約者。




 かつて暗黒魔界と神々は激しい戦争を繰り広げていた。

 暗黒魔界は戦いに破れ、生き残った暗黒神の忠実なる部下が、俺とアリサを地上へと逃がした。

 俺は神への復讐を心に誓い、完全なる悪になるために人間界に身を潜め、修行をしている……らしい。

 


 なんだよ!?

 その破天荒だけど、なんだかそれっぽい設定は。


 そして爺さんは、先程でてきた暗黒神の忠実なる部下だそうだ。


 召喚士のおっさんは、

「そ、そうなのか!? 暗黒魔界とか存在するのか?」

 と真に受けている。


 シャーマンは、「まったく分からんが、少なくとも悪行pt183億というのは事実なのだ。もし彼が暗黒魔界の神と言われても、違和感はない」


ゴンザは、

「ただ、この爺さんが暗黒神の忠実な部下というのは嘘だろう」


 爺さんは、

「嘘ではない!」


「おい、昨日何を食った?」


「う、うう……」


「今朝、何を食った?」


「う、うう……頭が……。頭が……」


「爺さん、あんた、名前は?」


「くううう……。お、思い出せん」


「あんたはタダのお人よしでボケた爺さんだ。アリサと別々に拾ったし何も接点がない。それにあんたは善行ptが高い。

 暗黒魔界の住人であるはずがない。

 あ、そうか!

 あんた、そうやってどさくさに紛れて暗黒神様の忠実な部下役というおいしい役職をゲットしようとしているんだな? 善行ptが高い癖して、なんてずる賢い奴なんだ! こうしてはおれん!」

 

 

 

 

 ゴンザは、ドタドタと俺のいる台所へやってきて土下座をした。

 

 びっくりしたアリサは、

「おじさん? どうしちゃったんですか?」


 ゴンザは俺に、

「神よ……。いえ、旅人さまよ。あなたとアリサはどのような関係だったのですか?」



 どのような関係と言われても……。

 助けて、その後、恩着せがましくパラサイトしているだけの間柄です。


「もしや、アリサのご家族とか?」


「いえ、違います」



 ゴンザは小声で、『やはり婚約者様であられた』と漏らし、顔を上げると、

「姫! これからこのゴンザはあなた様の忠実なる配下となります。なんなりと仰せつかってください」



「え? え? 姫?」


 困惑するアリサ。


 俺はゴンザに、「突然、変な事を言わないでよ」



「そうでしたね。これは神々と戦うためのお忍びの旅でしたね……。このことは絶対に他言しません」



 その様子を見ていた奥さんは、料理の手を止めて、ゴンザの横で土下座をした。


 奥さんは横目をゴンザの方に流して、小声で、

「あんた。やっぱり超大物勇者だったんだね?」

「ちげーよ。勇者とか賢者とか、そういった次元ではない。奴は暗黒神だ。そしてアリサは暗黒神の婚約者なんだ」

「ひぇ~。ど、どうしよぅ?」

「どーもこーもねーよ。いっぱい貢いで恩を着せまくるんだ!」

「そ、そうだね。さすがだよ。あんた」



 あんまり奮発して、このおうちが貧乏になってくれたら困る。

 俺を利用して稼ぐ気だろうけど、そんな力ないしね。



 だから俺は、

「おじさん。俺にあんまり気を使わないでください。しばらく住まわせて貰うだけでいいんです」


「ははぁー」と俺を崇め奉り、床に頭をつけて、「俺なんかに勿体ないお言葉です」と続けた。



 その直後、ドカドカとシャーマンと召喚士も部屋に入ってきた。



 二人ともゴンザと同じように、いかつい熊面である。

「どうか俺達もあなた様の配下に加えてください」



 俺は、

「いや……。別にいいけど……」



 何を狙っているのかは分からないけど、とにかく「やった!」と、のたまわっている小悪党共。



 こんなことしている場合ではない。


 アイテムボックスをのぞいた。


【アイテムボックス】

 破壊神 × 1

 邪神像 ×  298/300

 スライム × 1/3

 犬 × 1



 やばいぞ。

 犬はピンピンしているというのに、兄貴がさらに削れている。

 


 俺は「ちょっと所要が。料理が出来るまでには戻ります」と告げて、街の外へと急いだ。


 走りながらアイテムボックスに向かって、

『聞こえますか? 聞こえますか? 勇者ルーンベルク』


 勇者は今、石化中。

 やっぱり返事はない。


 それでも俺は繰り返した。


『もしかして邪神像は、鳥の形をしていませんか?』



 どうしたというのだろう。

 脳の中にルーンベルクの声が木霊してきた。

 


『魔神狩りの少年。

 今、直接君の心に話しかけている。

 あぁ、君の言うとおり、邪神の姿の俺には黒い翼があり、全身も黒い。

 一見、カラスにも酷似している。

 それがどうした?』



 やっぱり!

 犬に目もくれずに、固い石造を噛んでいるのはこのせいだ。



『その恰好、かなりヤバいですよ。

 ビッチは無類の鳥好きです。

 早く別の形に変身してください』


『なんだと!

 そうだったのか!?

 だから俺が邪神の姿で寝ていると、いつもビッチが噛みついてきたのか。

 今、ビッチは俺にしがみついて、ビーバーのようにカリカリやっている。

 今、石造化を解けば、防御力が急激に落ち、かなりやばい状況に陥る……』



 おのれ!

 ビッチめ。

 鳥だったら何でも食おうとするのか。



 ワイバーンは山頂付近にしかいない。



 チュンチュン鳴いている目玉のない雀ゾンビの群を発見。

 大きさは犬くらいもあり、わりとでかいし、臭いし、それ以上にグロい。

 所々、肉が剥げ落ち、骨だって見えている。

 

 さすがのビッチでも、これを食うだろうか?

 だけどこの際仕方がない。


 俺は『入れ』と念じる。



『わーい。賞味期限切れかけのトリ肉、キター!

 うまうま。

 ねーねー、知ってる? お姉ちゃんが言っていたけど、ちょっぴり痛みかけている時が一番おいしいんだよ!』



 知らねぇよ。

 それに、ソレ、完全に腐っているから。




【アイテムボックス】

 破壊神 × 1

 邪神像 ×  298/300

 スライム × 1/3

 犬 × 1

 ゾンビスパロウの骨 × 7




『わんわんわん』と吠えていた犬は、この惨状を見ていたのだろうか。

 急に黙り込んだ。

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