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俺のアイテムボックスに、ビッチな女の子をぶち込んでみました  作者: 弘松 涼
第一章 伝説は始まる……破壊神と創造神の物語
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16 さすらいの勇者ルーンベルク

『お兄ちゃん、助けてー』


 ビッチはアイテムボックスの中で、サイレンのようにうるさくヘルプを繰り返す。




 勇者ルーンベルクこと邪神の兄貴は、握っている剣を背中の鞘にしまうと、

「少年よ、もしかして余計なお世話だったのか? すまぬ。許せ。誰かが俺に助けを求める声がしてな。敵は既に消滅したというのに、いまだに聞こえてくるような気がする。どうも空耳のようだ」



 すごいお耳です。

 さすがさすらいの勇者。



 でも気付かないところを見ると、まさか俺のアイテムボックスから救援を求めているなんて想像の外なんだろう。



 敵を片付けたので、事件を解決させたヒーローの如くマントをひるがえし、何事もなかったように立ち去ろうとしている。

 


「あのぉ、勇者ルーンベルク様」とアリサ。


「なんだ?」


「危ないところをありがとうございます」


「いや、いいんだ。

 君のボーイフレンド。おそらくかなりのつわものと見た。レベルも40以上もあるようだ。おそらく先ほどのキメラ。敵ではなかったのだろう。私がいなくとも問題はなかったはずだ。ではっ」




『お兄ちゃん。助けてー』

 ビッチはビービー泣き出した。



「どこかで誰かが、俺を呼んでいる……。行かなければ」



『お兄ちゃん、私はここだよー!』



 突然、勇者ルーンベルクが苦しそうに頭を抑え始めた。


「グッ。ど、どうしたということだ。なんであいつの声が聞こえてくるのだ……!? 今、ハッキリ、ビッチの声が……」



 やべぇ。

 こうなったら、勇者もアイテムボックスに収納してしまうか。



 アリサは、

「だ、大丈夫ですか?」とハンカチを取り出した。



 ルーンベルクの額は、汗でびっしょりだ。



「あぁ……大丈夫だ。ふと妹のことを思い出してな」


「妹さんですか?」


「――あぁ。俺には兄と姉、そして妹がいる。俺はいずれ、奴らを倒さねばならない」


「え? 実の家族なのに、どうしてですか?」


「兄は悪道へ突き進み、多くの人間を地獄へ送り込んできた。姉と妹は兄を盲信している。

 俺は我が一族の償いの為、人界で正義の為に剣を振るっている。

 いずれ俺は……奴らを葬らねばならない。だが兄の力は強大だ。俺の剣技では、良くて相打ち……。更に姉と妹も驚異的な力を身に宿し兄に加担している……。

 ――あっ、俺はいったいどうしたのだろう!?

 このような話を見ず知らずの者にしてしまうなんて……。

 あいつを思い出して疲れているのか。すまぬ、忘れてくれ」



 きっとさっきのお話は、俺にとって忘れられない思い出になります。

 だって勇者ルーンベルクは、ビッチキラーだったのです。

 それは良い事を聞きました。



 それにしても危なかった。

 もうちょっとで、ビッチキラーの邪神勇者を格納することだった。

 俺のアイテムボックス内で、最終戦争を勃発されても困る。



 それよか、おい、ビッチ。

 いくら叫んでも、助けて貰えんぞ。

 ざまぁみろという目で嘲笑ってやった。



「ハンカチをありがとう。

 ――少年よ。

 君は良い眼をしておる。

 まるでだった一人で悪と戦っている孤高の勇者の目のようだ」



 よく分かりませんが、マジっスか?



「もし君がこれから正義の道を万進していくのなら、再び俺と出会う事になるやもしれない。その時は共に戦おう。さらば!」


 そして空に片手を掲げてユニコーンを召喚すると、「ハイヤー!」と嘶かせて走り出した。



 邪神の兄貴。

 なんかカッコええ。



 ついつい見とれてしまい、自然と手を振ってしまった。



「勇者ルーンベルク様、カッコイイですね。……あ、でも旅人さんもステキですよ」



 いや。

 多分、1:9であちらさんの勝ちだろう。



 背負っている物まで足したら完敗だ。



 ちくしょう。

 思わず俺もルーンベルクのマネをしてみた。

 馬を嘶かせるポーズを取り、『ハイヤー』と叫ぼうとした。


 慣れないことをしたもんだから言葉を詰まらせて、ハイヤーと言うつもりが、「ハイレヤー」と叫んでしまった。



 ――入れや?



 しまった。

 勇者ルーンベルクが、俺のアイテムボックスに収納されてしまった。





『ム!?

 ここはどこだ?

 薄気味悪い空間だ。

 それに白骨だらけだ。もしや地獄か?

 いよいよ兄が俺を召喚して、最後の決戦を挑んできたのか!?

 だが……。

 今の俺はまだ完成されていない。

 でも言い訳なんてしている余裕はない。もはやこうなった以上、やるしかないのだ。勇者として培った正義の力をこの剣に込め、今こそ邪悪を断ち切る!

 俺は逃げやしないぞ!

 出て来い! 閻魔大王!』

 

 

『あれ? お兄ちゃん?』



『お前はビッチ。どうしてスライムなんて食っているんだ?』



『お腹すいたよー!』



『よ、寄るな! お前は腹が減ったら見境なく何でも食っちまう悪癖がある。破壊神だった父を空腹という俗欲だけで胃袋に収めた前例まである。

 あと一歩近づくと、対閻魔戦の為にひそかに編み出した邪神究極奥義――暗黒ダーク月影斬ムーンナイトスラッシャーをお見舞いするぞ。瞬時に大陸ひとつ沈没させることができる最終秘儀だ。この至近距離から浴びたら、いくらお前とて――。

 だから来るなって!!!!!』




【アイテムボックス】

 破壊神 × 1

 邪神 × 1

 スライム × 1/3

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