12 俺は居候になる
俺は助けてあげた爺さん達の宅へ転がり込んだ。
二人の娘は12歳と14歳。
気の良い姉妹のようで、とにかく俺に親切にしてくれた。
だが、無料の宿をGETできたと思えたのは最初だけだった。
家の主である40代くらいの男性とその奥さんは、とにかく俺に冷たい。
招かざる客に迷惑千万といった感じだ。
いや、初日だけは歓迎してくれた。
持って帰ったご馳走の山を目にした時は、確かに感謝をしてくれた。
だけど、そんなの一瞬でなくなる。
宿泊すること二日経過。
今朝も朝食を済ませて、俺が食堂から出ていくと、
「おい、エリナにアリサ。それと爺さん。いつまであの少年を泊めておく気だ?」
娘は、
「ここに居たいだけずっと。だって命の恩人なんですから」
「命の恩人だからって何泊もされちゃぁたまったもんじゃねぇ。うちは貧乏なんだ。ああやってお前らの弱みに付け込んで、永久に居座るつもりなのでは?
そもそも、名前すら名乗れないってのがあやしい。
流れ者の危ない輩なのではねぇのか?」
「おじさん、違うよ!」
この夫婦の事を娘達はおじさんと呼ぶ。
どうも、実の家族ではないようなのだ。
とにかく、たった数日で居心地が悪くなったのは事実である。
ビッチはというと――
結論から言うと、ビッチは賢い訳ではなかった。
スライムを計画的にゆっくり食べていたのかと思っていたが、単に食えたもんじゃねぇくらいマズいから、我慢して無理をしながら食べていただけだった。
それを証拠に、
『チキン、うまうま』
と言いながら夢中で食べ尽くした。
ガーゴイルが全滅すると、
『チキンもっと頂戴。スライムおいしくない!』
と、喚きだした。
ガーゴイルは意志をもつ石造の悪魔とも聞いたことがある。
さらに先日、夢の中で数人が教えてくれた。
ビッチの胃はどうなっている?
これ以上の詮索はしないが……。
【アイテムボックス】
破壊神 × 1
ガーゴイルの骨 × 8
スライム × 1/2
スライムが増えている。
半分くらい吐きだしたのか?
まぁビッチの食料が無くなった。
もう数日、我がままを言ってこの家でパラサイトができれば、ビッチは疲弊していくはずだ。
昼飯の時刻がやってきたので、借りている物置から出て食堂に向かった。
ムスッとした主と奥さん。
昼飯はオムライスのようだ。
俺のだけ小さいが、文句は言わない。
タダで飯が食えるだけありがたい。
数日前の浮浪者から考えたら、すごい贅沢だ。
神への祈りを捧げたあと、スプーンで口へと運んだ。
イテッ!
オムライスに何か異物が入っていた。
慌てて喉の異物にめがけて『入れ』と念じた。
『魚の骨、キター!』
そんなものを混ぜていたのか。
エグイことをしやがる。
『魚の骨、うまうま。もっと頂戴』
ビッチは喜んでいるようだ。




