11 俺は極悪姉妹を敵に回す2
ガーゴイルは老人にナイフを握らせて「早くしろよ!」と叫ぶ。
「死んでもできぬ」
「分かったよ。俺が手伝ってやるよ」
と強引に老人にナイフを握らせると、腕を掴んで、村娘の胸元へ刃を向けた。
その時だった。
俺のお腹がグゥと鳴った。
ガーゴイルが、俺に気づいた。
こちらに向かって、
「誰だ!?」と叫んだ。
俺?
名前なんて言っちまったら、ビッチが出てくる。
さっきまでぎゃーぎゃー騒いでいたビッチは、聞き耳を立てている。
仕方ない。
しらばっくれるか。
「悪党共に名乗る名はない」
ガーゴイルは「まさか、てめぇ、正義の味方とでも言うのか!?」
ニックネームや代名詞も駄目なんだって。
ビッチに俺の呼称が知られたら、俺の身体が操られてしまうんだからさ。
「悪党に返す言葉なんて何一つない」
「カッコつけやがって! ふざけた野郎だ」
ガーゴイルは何やら念じた。
仲間を呼んだようだ。
どす黒い霧が現れて、その中から似たような悪魔が次々とでてきた。ガーゴイル総勢8匹は、俺を取り囲む。
最初からいた親分格のガーゴイルは、俺を真上から見おろすと、
「ククク。言っておくが俺のレベルは72だ。死神の姐さんに村人達を貢いで、ここまで強くしてもらったのだ!」
死神は高笑いを浮かべる。
「死にかかっているボッチ君が、刃向ってくるなんていい度胸じゃない? どうせ早かれ遅かれ死ぬ運命だったの。もう待ちきれないわ。ガーゴイル、殺っておしまい!」
俺はガーゴイル総勢8匹に向かって『入れ!』と念じた。
死神は目を丸くした。
「え? ボッチ君。いったい何をしたんだ?」
あなたの妹にエサを届けただけです。
ですが、とても言えません。
俺は死神に手の平を向けた。
後は念じるだけです。
さぁ、感動のご対面をさせてあげます。
死神はチィと舌打ちをして、姿を消した。
アイテムボックスの中では――
『あれ? あれれ? ここはどこだ?
あ、姐さん??
目と髪の色が違いますが、イメチェンでもしたんですか? それよか何を食べているんですか?
え!? もしかしてスライムを食べているんですか? そんなの食べちゃぁダメですよ! 猛毒だから吐いてください!』
『……スライムおいしくない……。あ、チキンが来たー!』
『え? 姐さん、何をするんですか? ぎょぇええええー!』
ガツガツ。
ガリガリ。
ジュルジュル。
俺はテーブルの上にのっけてあるチキンを手に取って、ガブリと食らいついた。
うめぇ!
生き返った!!!
しばらくして縛られている村人達の視線に気付いて、縄をほどいてあげた。
赤く目をはらした村娘たちは、
「あのぉ。あなたのお名前をお聞かせください」
「名前なんてないの!」と返し、また肉にがっついた。
老人は涙していた。
「悪党共を華麗に倒し、名前すら告げず去っていくなんて……。この世に正義はあった!」
いや。
名は教えてあげないけど、去るつもりなんてサラサラないよ?
お礼、ちゃんとしてよね。
しばらく、あんたらの家にパラサイトするよ?
一人で生きていく力、無いしね。
【アイテムボックス】
破壊神 × 1
ガーゴイル × 5
ガーゴイルの骨 × 3




