YOMOTUHEGUI 〜黄泉への変貌〜
外は暑い。
まだ五月だというのにこの暑さはいったい何なのだろうか。
俺は上からも下からもくる暑さにうんざりしていた。汗が地面に落ち、アスファルトを濡らすが、すぐに乾いてしまう。
だが暑さはまだ大丈夫だ。涼しい所に行けばいいからな。木陰とか。
問題は‥‥‥。
「あら!哭沢さん家の娘さんの彼氏さんじゃない!、こんにちは~」
この近所のババアどもが多い!
そしてどうする事も出来ん!!
何だここ!?ここのオバチャンの人口密度(略してオバ密)、田舎の温泉より多いだろ!
更に一人一人がウザい!
「ああ、こんにちは」
俺は一応返事をしてやった。
すると、
「ねえねえねえねえねえねえ、哭沢さんの娘さんの下の名前何だっけ?ねえ何だっけ?」
すごくしつこい!あと『ねえ』が多い!
「女命です」
「そうそう女命ちゃん!可愛いでしょ~、ねえ?」
「はあ、そうですね‥‥‥、そうですか?」
「当たり前でしょ!オバチャン一可愛いこの私が言うんだから!ね?そうでしょ?ね?」
「はあ、‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥そうですね」
「やだもうお世辞もほどほどにしてよ~!え、そんな可愛く見える?見える?ねえ見える?ニタニタ」
‥‥‥うぜぇ。
「あー、すみません、僕用事あるんでもう行きますね」
「ええぇぇぇ!?もっと話したかったのにぃ。あと一時間ぐらい」
俺を辱しめの暴力で殺す気か。
「サヨナラ~」
「もう二度と会いたくない‥‥‥、はいサヨナラ!」
逃げるようにその場から離れた。
地獄だった‥‥‥。
何もすることがないのでぶらぶらと周辺の町を歩いてみる。
住宅街の真ん中に小さな公園があった。
子供達が色々な遊具で遊んでいる。
そこでふと頭によぎった事があった。
「俺の子供の頃の記憶ないな‥‥‥」
先ほど見た夢(記憶)ではいつどこで何をしていたのか分からないが、ちゃんとした記憶だった。
が、それ以前の記憶は全く思い出せない。
今でも先ほどの夢ははっきりとしていた。
よく響く夜のトンネル。
三人の『仲間』。
『カンブ』、『ガタイ』、『新人』。
仮面。
『仲間』が着ている黒色の服。
‥‥‥ん?
改めて思い出す。
『仲間』が着ている黒色の服。
そして、
『カンブ』の服に付いている『釜で煮込まれている鬼』のエンブレム。
「‥‥‥見つけた。俺に関するヒント」
そのエンブレムの下には赤いアルファベットでこう書かれていた。
『YOMOTUHEGUI』
つまり、
『黄泉戸喫』
それは食べたらもう二度と黄泉の国から帰れない、黄泉の国の釜戸で煮込んだ食べ物。
「このエンブレムがどこかにないか探してみよう」
俺は一歩踏み出した。
俺自身の記憶を探すために。
そしてここは哭沢家。
そこで一人、女は叫んだ。
「ああもう外に出た目的が違うじゃん!思い出せよ、外に出た目的を!」
そして別の場所。
ソファに優雅に座っている女は、机の上に置いてあったグラスにワインを注ぎ、赤く妖艶な唇に流し込む。
「ふぅ」
たった一つの、ため息にも似たその音は、周りの空気を変える。
それ程の力を持った女だった。
机には大きくエンブレムが載っていた。
赤いアルファベットの文字は光の反射で見えない。
その場所は、他の人から『社長室』と呼ばれていた。
女は軽く笑った。
「ここに来るかしら。ほのちゃん」
こんにちは。五月雨度巳です。
ええ。
相当長い間休暇(?)を取っていました。
待たせてしまい、本当に申し訳ございませんでした。
今回は、ヨモツヘグイが少し出てきます。
食べたら戻れなくなる。
意外と怖いかも?
これからも、不定期ながらも書いていきたいと思います。
それでは。
最後の女って誰?
五月雨度巳