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第八十四話 試練の塔 リベンジ

 前回のあらすじ。


 マジック・ポーションはチョコミント味だけれど、後味はほんのり酢ダコの風味。


「それでは、行って来る!」


「アルバート様、皆様。どうぞ、ご無事で!」


 アルバートの言葉に応えて、エセルがわたしたちの背を押す言葉を返してくれる。

 その余韻をかき消す様に、塔の扉は、重い金属音と共に固く閉じた。


 アルド先生の研究室を訪ねた日から、1ヶ月と少しが経った。


 わたしたちは、アルバートとジーナの魔力上昇訓練のため、日々、魔石の欠片から魔力を吸っちゃあアルバートとジーナに注入すると言う暴挙を行っておりました。


 ……これって、わたしとニードルスがマーシュさんから散々受けた事なのですがなあ。


 だけれど、これが思ったよりもかなり難しい!


 魔石から魔力を吸い出す事は、魔力のコントロールが出来ればそんなには難しくない。

 問題なのは、魔石がイロイロな『属性』に染まっていると言う事なのですよ。


 魔石の魔力が『無属性』ならば、特に問題無く吸い出す事が出来るのだけれど。

 魔石の魔力が、何らかの属性に染まっていた場合、そのまま取り込むと、取り込んだ者は属性に影響されてしまう。


 〝火〟ならやたらポッポしたり、〝風〟なら涼しかったり。

 〝水〟ならチャプチャプしたり、〝土〟ならスゴい広大だったり。などなど。


 それだけならば、そんなに問題無いみたいに聞こえるかも知れないのだけれど、どの場合も必ず体力、つまりHPにダメージが入ってしまう不具合です。


 別に怪我する訳じゃあないのだけれど、身体が超絶ダルくなって、節々が痛くなったり。カゼじゃないよ?


 なもんで、出来るだけ魔力のみを取り出したいのだけれど。難しいんだなコレが。


 手に握った魔石の欠片から、ゆで卵の殻を剥くみたいな感じをイメージしつつ、魔力だけを取り出していく。

 でも、上手く属性が剥がれなかったり、取り出し損なった魔力が消えちゃったり。


 1つの欠片には、多くても10ポイント位しか魔力が入っていない。

 だから、まとまった魔力を得る為にはいくつもの欠片を使わなきゃならなくなり、結果、属性剥ぎの作業が付加されてしまうのでありました。


 上手く魔力だけを取り出しても、次は注入の作業ですよ。


 魔力の注入には、取り出す時とは別の集中が必要になってくる。

 注入する相手の持つ魔力の、リズムに合わせるって言うか。同調するって言うか。


 とにかく、無闇に注入すると反発して、せっかく注入した魔力が逆流してくる不具合です。


 そして、逆流した魔力は魔力酔いを呼ぶ負の連鎖。


 お陰でわたしたちは、みんな仲良く、見事に魔力酔いでぐわんぐわんになってましたよ!


 こんな感じだから、慎重に魔力の取り出しと注入を行わなくちゃならなくって、中々、アルバートとジーナの魔力を満タンにしてあげられない残念仕様。


 こんな大変な作業を、わたしとニードルスの2人に、しかも瞬間チャージで日に何度も繰り返していたマーシュさん。


 やはし、化け物だったに違いない! などと。


 アルバートとジーナの方も大変で、魔力上昇には〝出来るだけ沢山の魔力を使って昏倒、そこからの復活〟が条件である以上、なるべく多くの魔力回復して、それを使い切らなくっちゃいけない。


 本当なら、与えられた魔力を空っぽの魔石に戻すのがベストで、そうすれば、塔の最上階で使える魔石も作れて一石二鳥なのだけれど。

 魔石に魔力を戻すのは、とんでもなく繊細な魔力コントロールが必要な上に、反発も大きくって断念。

 生活魔法を連発したり、アルバートなら回復魔法をわたしやニードルスにかけたり。

 ジーナなら、『邪悪探知』を使って、魔力の消費に明け暮れたりするのでありました。……アルド先生は邪悪らしい。マジで?


 その結果、この様になりました。



 名前 アルバート・タヴィルスタン

 HP 40

 MP 28 → 42




 名前 ジーナ・ティモシー

 HP 22

 MP 31 → 46



 名前 ニードルス・スレイル

 HP 39

 MP 51 → 59



 そして、わたくし。


 名前 ウロ

 HP 40

 MP 58 → 70



 なんと言う急成長!

 単純に、アルバートとジーナのMPは約1.5倍になりましたよ!


 わたしたちがマーシュさんから修行を受けた時には、こんなに伸びなかったのに。何でかな?


 ついでに、わたしとニードルスのMPも少しだけ増えると言うサプライズ!

 わたしの方が少しだけ多かったのは、お薬大量摂取のせいだと思います。身体には悪いと思います。きっと。


 あと、気づいたのだけれど、レベルが上がった時以外でも能力値は伸びるのだと知る。

 今回は、MPに限った事だけれどね。

 これも、ゲームの時とは違ってる事柄だと思ってみたり。


 アルバートとジーナも、魔力の数値を視覚的には解らなくっても、少しずつ増える魔法の使用回数に、自分たちの魔力の増加を実感して、感動しているみたいだった。


「ふむ、魔力上昇訓練は成功の様じゃな。

 アルバート君にジーナ君。

 良く頑張ったの!」


「はい、ありがとうございます!」


「ありがとうございます、ウェイトリー先生!」


 アルド先生の言葉に、かなり疲れているだろうアルバートとジーナが笑顔で答えた。


「ニードルス君、ウロ君も、ご苦労だったのう。

 マシュ……マーシュ殿も、さぞや鼻が高い事じゃろう!」


「ありがとうございます、ウェイトリー先生。

 貴重な資材を提供して頂き、感謝します!」


「あ、ありがとうございます、アルド先生。

 マーシュさんも、きっと喜んでくれると思います!」


 ニードルスに続いて、わたしもアルド先生にお礼を言った。

 欠片とは言え、みかん箱大のケースいっぱいの魔石を無償で提供してくれるとか、どんだけ太っ腹なのか。

 なので、マーシュさんの名前を噛んだ事は黙っててあげよう。うひひ。


「……しかし、良いデータが取れたわい。

 エルフと人間では、魔石から受ける作用も随分と違ってくるんじゃな!」


 えっ!?


 ボソリと呟いたアルド先生の言葉に、わたしとニードルスはギョッとして目を見開いた。


「んん!?

 あ、いや、こっちの話しじゃ。気にせんでくれ!

 そ、そんな事より、早く帰って休みなさい。

 身体を休めるのも、大事な修行じゃよ?」


 明らかに動揺してるアルド先生。

 やはし、アルド先生もこの学院の先生なんだわよ。

 邪悪って言うのも、何だかうなずける様な気がして少しだけ怖くなったりした。


 それからの3日間、わたしたちは謎の高熱に悩まされたりしました。


 ……きっと、張り詰めた物とか、イロイロ無理してたからだと思うし、しかたないね。


 回復したわたしたちは、その足でレティ先生の元を訪れました。

 目的はもちろん、試練の塔再挑戦の許可を得るため。


 何やらゲッソリしているレティ先生は、動くのも面倒くさそうに許可書を差し出し、シッシッと言うジェスチャーをするだけだった。


 何だろう、ダイエット失敗かな? などと。


 こうして、わたしたちは再び試練の塔の扉をくぐったのでありました。


 ボンヤリと浮かぶ通路と、前方に見える部屋は前回と同じだった。

 違うのは、わたしたちがそれほど興奮していない事だと思う。


 程良い緊張感と、修行をやり遂げた自信が、アルバートとジーナから伝わって来る。

 それは、わたしとニードルスも同じなんだけれどね。


 おお、そうじゃ!


「みんな、部屋に入る前にこれを……」


 前回の失敗を踏まえて、わたしはみんなに『身代わり人形』を配ろうとした。だけれど。


「大丈夫だ、ウロくん。

 皆、既に身に付けているよ!」


 そう言って、アルバートが制服のポケットから前回渡した人形を取り出して見せた。


「貴重な品だけど、せっかくウロさんがくれたんだもんね!」


「呪いはもう、体験しましたからね。

 そう何度もは、御免こうむりたいですから」


 ジーナとニードルスも、それぞれ、制服のポケットから人形を取り出して見せる。


 何だろう。

 やたら嬉しいんだけれど!?


「……うん。良かった!」


 込み上げてくる何かを、わたしはグッとこらえて呟いた。


 わたしも、人形を1つだけ制服のポケットに忍ばせる。


「良し、では行こう!」


 アルバートの声に、わたしたちはうなずいて歩き出す。


「……ウロさん」


 不意に、ニードルスに声をかけられた。


「どしたの、ニードルスくん?」


「先に渡しておこうと思いまして……」


 そう言って、ニードルスは制服のポケットから何か取り出した。


 ジャラリと手渡された物は、一握りの魔石の欠片だった。


「……ニードルスくん、これ!?」


「私も、ウロさんに習って備えです!」


 そう言ったニードルスは、制服の別のポケットをポンと叩いた。


 ジャラリと音を立てたポケットの中には、更に多くの欠片が入ってるみたいに思えた。


 ニードルス、アルド先生のくれた魔石の欠片、だいぶ失敬して来やがりましたね!?


 抜け目無いニードルスに呆れつつ、わたしたちは、アルバートとジーナの後を追って通路を走った。


「これより、第1の試練を行う。

 試練が始まれば、再びは来ない。

 自信無きは、引き返すがよかろう。それままた道であるが、いかに?」


 通路の先の小部屋では、前回同様、炎がわたしたちに語りかけてくる。


 わたしたちは、無言でうなずき合った。

 それから、アルバートが1歩前に踏み出す。


「さあ、試練を始めてくれ!」


「承知した。

 では、知の試練を始める」


 アルバートの声に応えて、炎が大きく燃え上がった。

 同時にわたしたちの背後で通路が消え、部屋が少しだけ広く、明るくなる。


『知の試練』は、前回と同じ様に石板の文字を解読して、魔法陣を選ぶ仕様みたいだった。


 波打つみたいに、上から下へと別の言語に変化を続ける文字列と2つの魔法陣。

 そして、からっぽの砂時計だ。


「試練を受ける者、自らの魔力を砂とすべし!」


 今は石板になった炎の、試練の説明をする声が辺りに響く。


「じゃあ、わたしとニードルスくんで時間を貰おう。

 どの位あるば足りるかな?」


「文章量は、前回とあまり変わらない様ですね。

 余裕を見て、10分ずつでどうでしょうか?」


 わたしに応えて、石板を見詰めていたニードルスが呟いた。


 わたしたちが、事前に立てた作戦としては……。


 まず、時間の砂はわたしとニードルスが。

 文章の解読は、アルバートとジーナが『読解』の魔法で行う。


 実に簡単で解りやすい作戦!

 失敗した時は、わたしが力技でゴリ押しますがなあ。


 とまあ、こんな感じ。……なのだけれど。


 もしかして、前回と全く同じ設問だったりして?

 だとしたら、答えは左なのだけれど。


 そんな考えが一瞬、わたしの頭を(よぎ)った。


 いやでも、全く同じ設問なんてあるのかな?

 仮にも、国立の魔法学院だよ!?


「……ロさん、ウロさん大丈夫?」


 いつの間にかボーッとしてたみたいで、心配そうな顔のジーナが、わたしのスカートをツンツンと引っ張っている。


「ご、ごめんねジーナちゃん。

 ちょっと、ボーッとしちゃった」


 少しだけ、考えを言ってみようかとも思ったのだけれど。

 怒られそうなので止める。


「ハッハッハッ、ウロくん。

 気を抜くのは、まだ早いぞ?

 さあ、ニードルスくんと共に魔力を込めたまえ。

 私とジーナくんとで、見事解読して見せよう!」


「見ててね、ウロさん!」


 アルバートとジーナが、素敵すぎる笑顔で言った。


「う、うん。

 頑張ってね2人とも!」


 そう言いつつ、砂時計に手を添える。


「……何を考えていたんですか?」


 小声で、ニードルスが呟く。


「みんな同じなら、今回も左かなーって」


「さすがに、それ程甘くは無いでしょうね」


 わたしの答えに、ニードルスが小さくため息を吐いた。


 そんなやり取りをしつつ、わたしとニードルスは砂時計に10分ずつ、20分の魔力を込める。


 魔力の抜ける感覚と同時に、器の中に真っ白な砂がサラサラと降り積もって行く。


「準備は整った。

 それでは、健闘を祈る!」


 石板からの声が辺りに響き、砂時計がくるりと反転。

 試練開始の合図となった。


「良し、やるぞジーナくん!」


「はい、アルバートさん!」


 〝未知なる文字よ 我が心に語れ〟


 アルバートとジーナが、魔力を巡らさせながら声をそろえて呪文を唱える。


「……ううむ!?」


「……読みにくい!?」


 魔法が完成した2人から、小さく声がもれた。


『読解』の魔法で解読を行おうとする時、術者には、その文字が自分の最も馴染みのある文字になって現れる。

 ただし、地の文字に対して翻訳された文字は、立体的に浮かび上がる感じになってしまい、少しだけ読みにくい。


 通常でもそんな状態なのに、波打つ様に変化する文章は、2人には恐ろしく読みにくくなっていると思われる。


「頑張って、アルバートくん! ジーナちゃん!」


「慌てず、少しずつ文字を追ってください!」


 わたしとニードルスの応援が、まるで、小さな子が本を読む練習をしてるみたいな感じに聞こえるのですがどうでしょう?


 およそ10分の時間を残して、アルバートとジーナは翻訳に成功した。


 〝汝が知は、道を示すに在るか。

 在るならば、眼に見える物が真実に在らず。

 偽りの狭間を歩むべし〟


 2人の文章は、これでほぼ一致。

 わたしの翻訳でも、同じ結果だった。


「……違いましたね」


「……あい」


 真顔で、小さく呟いたニードルス。

 もう本当、すみませんでした。マジで。


 き、気を取り直して!


「お疲れ様。

 アルバートくん、ジーナちゃん!」


「大した事はしていない。

 だが、少し目がくらむな……」


「で、出来ました!

 だけど、目がぐらぐらしますー!」


 わたしの労いの言葉に、少し疲労気味の2人が答えた。


「ご苦労様です、2人とも。少し休んでいてください。

 さて、翻訳された文章に従うなら、2つの魔法陣の間と言う事になるのですが……」


 語尾をためらいながら、ニードルスが呟いた。

 その視線は、2つの魔法陣の間を見詰めている。


 2つの魔法陣の間は、パッと見にはただの石材の床である。

 2つの魔法陣のせいで、ギリギリ人1人分スペーシがやっとの隙間だった。


「……何も無い様に感じられますが」


 隙間を見詰めるニードルスの目には、しっかりと魔力が集められている。


 むう、それでも見えないとなると……。


 わたしは、ニードルスの見詰める先に焦点を合わせて、目に魔力を集中させる。


「あった!」


 思わず叫んでしまった。


 きっと、『召喚士の瞳』が発動しているんだと思う。

 かなり魔力を集中させて、それは、やっと見えるレベルの代物だった。


 2つの魔法陣の間に、うっすらと浮かび上がる小さな魔法陣。

 丸イスの、クッション部分が置いてある位の大きさだけれど、確かにそこにあった。


「見えるのですか!?」


「うっすらとね。

 小さな魔法陣が1個あるよ!」


 ニードルスに答えて、わたしは魔法陣を指差した。


「……」


「ぬ?

 ニードルスくん?」


 今、何か聞こえた気がしたのだけれど?


「……私は何も。

 さあ、アルバートくん、ジーナさん。道が解りました。

 参りましょう!」


 小さなため息を吐いてから、ニードルスがアルバートとジーナに声をかける。


「う、うむ。

 今度こそ、次だな!」


「はい、頑張りましょう!」


 ニードルスの言葉に、笑顔で答えた2人は、ヨロヨロと立ち上がる。

 少し疲れ気味に見えるけれど、MP的には10ポイントも減ってはいない。


「さあ、ウロさん。

 ボーッとしてないで、魔法陣の明確な場所を教えてください!」


「あ、ごめん!」


 また、ボーッとしてたみたいなわたしを、ニードルスが呼んだ。


 うむ、イロイロ気のせいである!

 何となくモヤモヤした物を振り払う様に、わたしは頭をブンブンと振った。


 ……魔法陣の場所って言っても、魔力の集中は解いてしまってるから、大体でしか示せないんだけれどね。


「えと、確かこの辺りだと……」


 小走りに、みんなの所までやって来たわたしは、魔法陣のあった辺りを指差して……。


「うわっ!?」


「ウリョしゅわ……」


 瞬間、わたしは地面に吸い込まれた!


 正確には、魔法陣のある場所の上に指が入ってしまったんだと思う。

 わたしの名前を叫んだニードルスの声が、グニャッとなって聞こえた気がした。


 次の瞬間には、わたしの身体は魔法特有の光に包まれていた。


 慌てて周りを確認すると、少し後ろの方にみんなの姿が見て取れた。


 これって、前回と同じ状態だと思う。

 となると次は……。


「おめでとう、試練を受ける者。

 汝らを、知ある者と認める。次の試練へと導こう」


 頭の中に、炎の声が響く。


 わたしは、拳をグッと握って次を待つ。

 間を置かずに、再び頭の中に声が響いた。


「転移に伴い、魔力を徴収する。

 次なる試練での、汝らの健闘を祈る。さらば!」


 炎の声が消えると同時に、わたしの中から魔力が抜けて行った。


 大丈夫、知ってた。

 問題は、この後ですよ!


 前回は、ここで魔力枯渇者が出てリタイアだった。


 だけれど、今回は……。


 目を開けているのか、閉じているのか。

 解らない程の光が、目の前いっぱいに広がって行く。


 と、思ったのも束の間。

 一転して、辺りは暗闇に。


 身体に重さを感じて、わたしはその場にひざまずいた。


 ボンヤリとした視界が、少しずつ鮮明になって行く。


 最初と同じ、石造りの壁や床。

 3メートル四方の、小さな部屋の様な場所にいるみたいだった。


 ぬぬ!?

 みんな、どこ??


 自分が無事だと解ったとたん、みんなの事が心配で不安になった。


「……ウロさん、重いです!」


 不意に、地面から声が聞こえてきた。

 ギョッとしたわたしが視線を落とす。


「わーっ!

 ごめん、ジーナちゃん!!」


 わたしの下敷きになって、ジーナが倒れてるし!

 通りで、何だか床が柔らかいと思った。などと。


「だ、大丈夫、ジーナちゃん!?」


 慌てて飛び退いたわたしは、少しだけ平らになってるジーナを抱き起こした。


「大丈夫。

 ウロさん、軽いから!」


 そう言って、ジーナはヨロヨロと立ち上がった。


「それより、アルバートさんとニードルスさんは?」


 制服の埃を払いながら、ジーナが辺りを見回す。


「解んない。

 ここにいるのは、わたしたちだけ……」


 そう言いかけた瞬間、頭の中に聞き覚えの無い声が響いてきた。


「試練を受ける者、技の間へようこそ!」


 思わず、わたしとジーナは無言で顔を見合わせる。

 不安に眉を下げるジーナが、わたしの心を写しているみたいに感じた。


 そんなわたしたちの思いとは裏腹に、試練は、次なる課題をわたしたちに示すのでありました。


「私は、第2の試練を司る者。

 これより、第2の試練を行う。

 お互い、別れた友を捜し集いて前に進め。

 しかし、侮るなかれ。

 技の試練は、それを阻み追うだろう。

 知を連れる者、技に挑む者。

 健闘を祈る!」

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