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第七十四話 ハーピィの娘たち

 前回のあらすじ


 フリッカ、超絶ヤバイ!!


「……何で、ここにいるの??」


 思わず、心の声が口からこぼれた。

 だって、昨夜あんなに説得したのに。

 てゆーか、岩屋の大人たちは何してるの!?


 困惑と憤りが混ざって、無駄な焦りが頭をぐるぐると回っている。


 こうしている間にも、アウルベアたちはフリッカへと近づいているのに。

 アウルベアの背中越しに、恐怖に固まるフリッカの姿が見てとれた。


「何してる!? 飛べ、鳥娘!!」


 突然、わたしの隣から大きな声が轟いた。


 ヘンニーだ。


 耳がキンとなる程の大声は、意味は伝わらなくてもフリッカを恐怖の呪縛から解き放つのには十分だった。


 ハッとした表情で、慌てた様に羽根を広げるフリッカ。

 それと同時に、3匹中2匹のアウルベアがこちらに向き直った。


「くそっ、気づかれたじゃねえかヘンニー!!」


 忌々し気に、ダムドがヘンニーを睨みつける。


 ……えと、わたしとしては3匹とも来てくれて良かったのだけれど。


 残った1匹は、猛然とフリッカに向かって走り出した。


 フリッカまでの距離は、およそ20メートル。

 既に半分は進んでしまってるアウルベアに、わたしのスピードではとても追いつけない!!


 むう、ならば!


 わたしは、低く構えて地面に手をついた。


「おい、ガキ。無茶するんじゃねえぞ!?」


 すかさず、ダムドから牽制されてみたり。


「解ってます!!」


 空いた手の親指をグッと立てつつ、地面についた手に魔力を巡らせて行く。


「おいでませ、レプスくん!」


 淡い魔力の光と共に、ワイルドバニーのレプスが現れる。


「じょ、嬢ちゃん!?」


「ガキ、お前……!?」


 ヘンニーとダムドが困惑してるけれど、今は詳しく説明してはいられない不具合です。


「行け、レプスくん。ハーピィを守って!!」


 辺りをキョロキョロと見回していたレプスは、フンと鼻を1回鳴らすと、身体を低く低く沈み込んだ。


 次の瞬間、ドンッと言う破裂音と共に地面を蹴ったレプスが、弾丸の様に飛び出して行く。


 緩い弧を描く様に疾走するレプスは、あっと言う間にフリッカに迫るアウルベアへとたどり着いた。


「ゴガッ!?」


 勢いそのままに、体当りするレプス。

 真横からの不意打ちに、アウルベアは、かなりの体格差があるにも関わらず弾き飛ばされたみたいだった。


「いえっふぅ、レプス!!

 それでは、わたしも行くので残ったあいつらをお願いします!」


「あ、ああ。無理はするなよ、嬢ちゃん!?」


「オオッス!」


 ヘンニーの言葉を背中に受けながら、わたしもレプスの走った軌跡をなぞる様に走る。

 前回と違って、足がガクガクする様な事はありません! 疲れてはいるけれどね。


 横目に、2匹のアウルベアに向かって走るヘンニーとダムドが。

 その後ろに、エセルに守られる形でアルバート、ジーナ、ニードルスの姿が見えた。


 剣を抜きつつ、目の前の状況を確認。

 薄くかかる土煙の中に、レプスとアウルベアの姿が見えた。


 起き上がろうとするアウルベアに、レプスが体当りと踏みつけを繰り返しながらそれを阻止している。


 やるな、レプス!!


 わたしは、バタバタとぎこちなく羽ばたこうとしているフリッカへと駆け寄った。


「フリッカ、大丈夫?」


「ち、力が入らないよう!?」


 わたしの姿を見たフリッカは、目に大粒の涙を溜めながら言った。


 ……ああ、いわゆる〝腰が抜けた状態〟ってヤツね。たぶん。


「下がってて、アイツやっつけちゃうから!」


「う、うん!」


 這う様に、わたしの後ろへと回るフリッカ。


 少しだけ安堵したわたしは、1つだけ深呼吸をしつつ剣を構えつつアウルベアを睨んだ。


 レプスの攻撃を受けつつも、アウルベアは何とか体勢を立て直している。


 赤い目を歪ませて、レプスの攻撃を機敏にかわすアウルベア。


 何だか、最初の体当り以外はダメージになって無いみたいに元気なのですが気のせいですか?


「レプス!」


 わたしの声に、レプスの長い耳がくるりと反応する。


 わたしが地面を蹴ると同時に、レプスは、アウルベアの股下を潜り抜けて行った。


 下に気を取られたアウルベアに対して、飛び上がりながら剣を大上段に構える。


 狙うは兜割り!


 わたしは、振りかぶった剣をアウルベアの頭めがけて力一杯に振り下ろした。


 ズガッ


「ゴアアアッ!!」


 苦痛に悲鳴を上げるアウルベア。


 手応えアリ! ……だけれど。


「ぬう!?」


 わたしの剣は、アウルベアの頭ではなくって、左腕に食い込んでいる。


 ガードされてる!?

 死角だったのに!?


 わたしの予想とは裏腹に、下を向いたと思ったアウルベアの首はあり得ない角度で曲がり、真っ赤な目は、しっかりとわたしを見詰めていた。


 ふ、フクロウ頭、恐るべし!! ……なの!?


 などと考える間も無く、ぶら下がったわたしに、アウルベアの右腕が飛んでくる。


 鉤爪が、わたしの頭を狙う刹那、ドンッと言う振動を受けて前のめりにバランスを崩すアウルベア。


 咄嗟に剣から手を離したわたしの顔のすぐ横を、アウルベアの爪が高速で通過して行く。


 振られるままに、わたしは草の上に投げ出された。


 あ、危なかった!


 たぶん、さっきのはレプスの体当りだと思うのだけれど。後で、ニンジンご馳走しなくちゃ!


 草の上を転がりつつ、再び剣を……って、無いし!


 わたしの剣は、アウルベアの左腕に食い込んだまま。

 そして、例によって鞄は無意識に置いてきちゃってるし!


 ヤバイ!

 武器が無い!!


 わたしは、自分のステータスを確認する。



 名前 ウロ


 種族 人間 女

 職業 召喚士 Lv9


 HP 31/36

 MP 18/52



 むう。

 魔力がもう、あんまり無い。


 ゴーレムちゃんを喚び出しても良いのだけれど、たぶん、敏捷性で圧倒的に勝るアウルベアには、ゴーレムちゃんの攻撃は当たらない。


 守りに徹してもらって、その内に鞄を取りに行く?

 或いは、手元にあるダガーで……??


 などと考えておりましたら。


「しゃがめ、ガキ!」


 わたしの後ろから、ダムドの声が聞こえた。


 わたしが反射的にしゃがむと同時に、わたしの背中を強い衝撃が襲う。


「ぐえっ!?」


 空気を押し出される様な悲鳴を上げるわたしの目に、高く飛び上がるダムドの姿が見えた。


 そこからは、瞬く間の出来事だった。


 ダムドの手が高速で動くと同時に、アウルベアが金切り声を上げる。


 アウルベアの顔から赤い光が消え、代わりに、その部分には黒塗りのナイフが突き刺さっている。


 上体を起こして絶叫するアウルベアだったけれど、その声は途端にゴボゴボといった奇っ怪な物へと変わった。


 仁王立ちで、開いたクチバシから血の泡を吹き出すアウルベアの胸からは、巨大な金属の板が突き出ていた。


 それが剣だと気づくのに、数秒間。

 わたしは、草の上で腹這いでキョトンとしていたのだと思う。


 ゆっくりと剣が引き抜かれ、アウルベアがドサリと崩れ落ちると、その後ろからヘンニーが顔を覗かせた。


「よう、大丈夫か嬢ちゃん?」


「まったく、いつまで寝ていやがる気だ?」


 ヘンニーとダムドの声に、我に帰ったわたしは、慌てて、何故か正座してみたり。


「あ、ありがとうございました!」


 わたしがお礼を言うと、ダムドはナイフを回収しながら手をヒラヒラと振ってみせた。


 ヘンニーは、アウルベアからわたしの剣を引き抜くと、アウルベアの羽毛で血糊を拭ってから、


「良い打ち込みだったぜ、嬢ちゃん?」


 そう言って、剣を手渡してくれた。


「あ、ありがとう。ヘンニーさん」


 わたしが再びお礼を言うと、ヘンニーとダムドは顔を見合わせた。


「打ち込みは良かったが、重さが足りなかったみたいだな。

 ちゃんとメシ、喰ってるか?」


「そうだ。そうすりゃ、胸も膨らんで良い事尽くめじゃねえか?」


 それから、ギャハハと笑う2人。


 チクショー!

 わたしのお礼を返せ!!


 ふぉ!!

 そんな事より、フリッカですよ!!


「フリッカ、大丈夫だった!?」


「ふっ、ふええええ!!」


 駆け寄ったわたしに、フリッカはしがみついて泣き出した。

 よほど怖かったのだと思う。……けれど。


「フリッカ。貴女、何でここにいるの?

 ちゃんと待ってる約束だったでしょう!?」


「……だって、あ、あたいも、お、姉ちゃんを、助けた、かったんだもん!」


 泣き声で、しゃくり上げながらそう言ったフリッカ。


 ああ、どうしよう??


「……とにかく、みんなの所へ行こう」


 まだ震えて、足に力の入らないフリッカを抱える感じで、わたしたちはニードルスたちの所へと戻った。


「ふむ。どうやら、無事だったみたいだな」


 剣を腰に戻しながら、アルバートが笑顔で迎えてくれる。

 足元には、アウルベアの死体が2つ転がってるのだけれど。


「アルバート殿とエセル殿が、鮮やかに倒してくれましたよ。

 帰りにでも、魔石を回収したい所です」


 腕組みしながら、ウンウンうなずいているニードルス。


 ……どうせ、わたしは鮮やかじゃないもん。フーンだ!


「それより、ウロくん。

 君は召喚魔法が使えるのだな!? 凄いじゃないか。何故、黙っていたんだ?」


「そうですよ、ウロさん。

 解っていれば、馬車じゃなくってペガサスとか喚び出してあっと言う間に……」


 楽しそうなアルバートと好奇心満載の笑みが眩しいジーナ。


 すみません。

 黙っててすみません。

 あと、ペガサスなんて喚べなくてすみません。


 てゆーか、後ろでクスクス笑ってるニードルスがかなりムカつくんですけれど!?


「アルバート様。

 人には言いたくない事柄と言う物がございます。詮索は、紳士としていかがなものかと……」


 エセルが、静かだけれど凄味のある声で言う。

 途端に、アルバートの顔色がみるみる変わって行った。


「す、すまなかったウロくん。

 私とした事が、とんだ失態を。どうか、許してくれ!」


 そう言って、頭を下げるアルバート。


「えっ!?

 い、いや、その、黙ってたって言うか、わたしってば、まだまだレプスくんくらいしか喚び出せなくって。

 だから、その、もっとイロイロ出来る様になってからの方が良いかな~。みたいな?」


「そうですよ、ジーナさん。

 召喚魔法は、そんなに万能ではありません。

 それに、ペガサスなんて幻獣、一生かかってもお目にかかれるか解りません!」


 シドロモドロになっているわたしに、ニードルスが続く。……これって、助け船的な何かよね?


「そうなんだ。

 じゃあ、これから頑張りましょう。ウロさん?」


「う、うん。頑張ろう、ジーナちゃん!」


 何を??

 とか思ったけれど、アレやアレやアレだろうと納得する。はふう。


「入口は、やっぱりここだけみたいだな」


「裏口も無けりゃ、窓の1つもありゃしねえ。

 当然、屋根にも何も無しだ!」


 建物の周りを回って来たらしいヘンニーとダムドが、少しだけ疲れた顔で言った。


 さっきは、見張り気味なアウルベアをやり過ごしつつの侵入計画だったけれど、もう、バレバレだろうし。


 ならば、改めて探索って事だと思う。


「……良いぞ。ヘンニー!」


「おう!」


 ドキャッ


 扉の安全を確認したダムドの合図で、ヘンニーが扉を蹴破った。


 もう、あれだけ暴れちゃった後だしね。

 中にもバレバレってとこで。


 1枚戸の入口は狭くて、大人が2人並ぶのは難しい。

 ダムドを先頭に、1列に並んでの侵入となりました。


 通路は、窓が無いのにボンヤリと明るい。

 恐らく、魔法の灯りが施されているのだと思う。

 ただし、学院のそれみたいに明るくは無いのだけれど。


 数メートル程進んだ所で、通路は右へと曲がっていた。

 先頭のダムドは、警戒しつつ鏡を使って確認する。


「誰もいないみたいだぜ?」


 ややあって、通常の声量で話すダムド。

 スクと立ち上がると、スタスタと歩き出した。


「問題無いみたいだな!」


 そう言いながら、ヘンニーが後に続く。

 それに習って、わたしたちも先へと進んだ。


「何だ、ここは。

 ただの狩猟小屋か??」


 通路先は、少し広めの作業小屋みたいな場所だった。


 板張りの床に作業台。

 壁際には粗末なベッドとテーブル。腐ってはいない水の入った水瓶。かまど。

 天井には、動物の毛皮がいくつか干されている。


 パッと見は、トーマスさんの小屋みたいな雰囲気だけれど。


「……ここに間違い無いのか?」


「ああ、間違いねえよ旦那。

 ただ、この中には血の1滴も落ちちゃいねえんだ!」


 エセルの問いに、ダムドが答える。


 確かに、ここまで点々と続いていた血痕は、建物の中から急に消えてしまっている。


「掃除好きな住人かな?」


 そう言いながら、ヘンニーがスンスン鼻を鳴らす。


「変ですね」


「何がだね、ニードルスくん?」


「天井には、煙突はおろか煙りの出口が1つも無いのにかまどなんて。と思いましてね」


 アルバートの問いに、ニードルスが答え、その場の全員が目を見張った。


「……特に、変わった所は無さそうだが?」


 かまどを探っていたダムドが、手を開いて首をかしげる。


 わたしは、かまどをジッと見詰める。


『???』


 ん?

 何だコレ??


 かまどの説明とか出るかと思ったら、『???』が出ちゃった。

 後、微妙に魔力を帯びている?


「ニードルスくん、これってもしかして……」


「ええ、間違いありません!」


 そう言うと、ニードルスはかまどの中に手をかざす。

 ニードルスの手に、魔力が集まって行くのが解った。


 魔力が強まるにつれ、かまどの灰が透明になって行く!


「何だ、こりゃ!?」


 仰天するヘンニーたちをよそに、ニードルスは魔力を注ぎ続けた。


 やがて、灰が完全に透明になると、かまどだった場所は地下へと続く螺旋階段へと変わっていた。


「隠し通路!?」


「ふう。その様です。さあ、行きましょうか?」


 ダムドの疑問に、ニードルスが汗を拭いながら答えた。


「何で解ったんだ?

 触った感触じゃあ、間違いなく灰だったのに……」


「そう言う(まじな)いです。

 私も、魔術師の端くれですから」


 笑顔で、ダムドにそう答えたニードルス。


 ……違いますう。

 ニードルスも、同じ様な事してるから仕掛けに気づいたんですう。


 なんて事を思ったのだけれど、かなり魔力を消費してるみたいなので言いませんでした。

 頑張ったね、ニードルス! 後で、耳をひねってあげよう。フニッと。


「見ろ、血痕だ!」


 アルバートが、小さく声を上げる。


「どうやら、この部屋全体に幻覚の魔法がかかっていると思われます。

 この下は、その範囲外なのでしょう」


「良し、見えるなら問題無い。行くとしようぜ?」


 ニードルスの言葉を受けて、ダムドが階段をナイフでつつきながら言った。


 長い螺旋階段は、少しずつ幅を広げながら、かなりの深さまで続いていた。


 降り始めて5分以上はたった頃、わたしたちは、終点と思われる部屋へとたどり着いた。


 何も無いガランとした部屋は、奥の壁に大きな扉があるだけみたいだった。


「この先まで、血は続いてるな」


 ヘンニーの言葉に、フリッカはわたしにしがみつき、ジーナはエセルにしがみついた。


 ダムドが扉に触れると、扉は自動で音も無くスウと開いて行った。


「何だ、ここは!?」


 アルバートが、思わず息を飲む。


 扉の先に広がっていたのは、小さ目の集会場くらいありそうな広い空間だった。


 学院で慣れ親しんだ魔法の灯りに照された室内は、理科室……今なら、錬金室を思わせる様な機材が満載で、得体の知れない薬品が所狭しと置かれている。


 その更に奥には、いくつかのベッドが置かれていて、何か、動く物の姿があった。


 それを見るや、フリッカが急に身を乗り出した。


「……リュッカお姉ちゃん?」


「えっ!?」


 思わず、聞き返しちゃったけれど。

 今、確かに〝リュッカ〟って言った!?


 フリッカの声に反応して、何かはゆっくりと動き始めた。


 ベッド脇から立ち上がったそれは、美しい女性の顔に大きな翼を持った、ハーピィに間違いない。


 と言うより、その顔は、ハーピィたちの長であるエヴィンドを若くした様にしか思えなかった。


「フリッカ!?」


「リュッカお姉ちゃん!!」


 フリッカが、泣きながらリュッカに抱きついた。


「お姉ちゃん、無事だったのね!?

 あたい、お姉ちゃんの事が心配で!!」


「ああ、フリッカ。

 心配かけて、ごめんなさい。

 私も、貴女の事が心配だったのよ?」


 良かった。

 リュッカが無事で、本当に良かった。


「感動の再会中に悪いんだが、急いでここを出よう。

 ここはまだ、敵の縄張りの真っ只中だぜ!?」


「確かにか。そう言うのは、帰ってから存分にやりやがれ!」


 ヘンニーとダムドが、やれやれと言った具合にため息を吐く。

 でも、その目にはうっすらと光る物があるみたいだった。ぐふふ。


「良し、急いで脱出だ!

 ウロくん、彼女たちに伝えてくれ!」


「うん!」


 アルバートに答えて、わたしはフリッカたちの方へ向き直る。


「フリッカ。

 さあ、帰ろう? ここはまだ、安心出来ないよ!?」


「うん。

 お姉ちゃん、さあ、行こ?」


 手を引くフリッカに反して、リュッカはその場を動かない。


「お姉ちゃん、どうしたの? あたいたちと帰ろう?」


「帰る? どうして?

 せっかく、貴女がここまで来たのに?」


 !?


 リュッカの髪が、ゆらりと立ち上がる。


 ゾワリ


 わたしの肌が、再び泡立った。


「フリッカ、逃げて!!」


「!?」


 わたしの叫び声に、フリッカが、みんなが振り返る。


 わたしたちの目に写ったものは、立ち上がり硬質化した髪が鋭い刃となって、フリッカに向かって降り注ごうとしているリュッカの姿だったのである。

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