第五話 村人三昧
召喚士の前に、村人になったりしましたが平気です。ウロです。
トーマスさんの家に寄せていただいての村人生活も、すでに3日が経ったりしています。ぷちホームステイ気味。
いわゆる『中世ヨーロッパ』的な、そしてファンタジーな世界であるイマージュ・オンライン。
でも、今あるのは『なんか田舎』だ!
当たり前だけれど、電気やらガスやら水道なんてない。
ロウソクかオイルランプの灯りと干し草を詰めたベッド。
主食はパンではなくジャガイモで、野菜と野ウサギのシチューがメインだ。 味はシンプルに塩味ね。
香辛料は、ゲームの時は高くなかったイメージだけれど。どうなんだろう?
トーマスさん家は狩人なので、森で獲れた獲物と村の野菜を交換してる生活の知恵です。
わたしは、狩りを手伝うのは難しいので、家のお掃除やお洗濯。ライク・ア・家政婦。
その後は、村のお仕事を手伝ったり子供たちと遊んだりしてました。
村の人たちは、あんまり文字を読んだり計算したりが出来ないみたいだったので、村長夫人であるドーアさんから子供たちに混じって勉強したりもしてました。
そして、いくつか分かった事がある。
まず、『ステータス』について。
ステータスは、自分のはもちろんだけれど、他人のも見る事が出来た!
例えば、今、身を寄せさせてもらってるトーマスさん(あとジャン)。
トーマスさんをグリグリ見てみますと、半透明なステータスウィンドが浮かんでくる。『博学』スキルに近いけれど違うのかな?
名前 トーマス
種族 人間 男
職業 狩人 Lv5
こんな感じ。
もっと詳しく見る事も出来るけれど、まあ良し。
ジャンはこんな感じ。
名前 ジャン
種族 人間 男
職業 狩人 Lv0
え? レベル0!?
最初はそう思った。
けれど、村人のほとんどは『職業 村人 Lv0』となっていた。
高い人でも4か5だった。
そう言えば、前にチームの先輩拳闘士が話してたっけ。
なんでも、レベル1って言うのは町道場での師範クラスの腕前なのだとか。
んで、基本的にNPCは0レベル扱いなのだとか。
そのくらいでないと、冒険に出ようなんて思わないとか。
たまに、NPCでも高レベルな人がいたりするけれど、それは野生のプロって感じなんだって。
なるほど~。
あの時は、へぇ~位で聞いていたけれど、今は何となく解る気がします。気がするだけだけど。
ちなみにプレイヤーのレベル上限は1000だったり。
差がヒドイ! って言ったら、「NPCが事件解決していいのかい?」って。
むう、なるほど納得。
次に、言葉。
メニューの設定から、言語設定が出来たけれど、これが結構細かく設定出来て面白い。
吹替えと字幕。
これを同時にも出来るし、字幕だけにも出来る。
さらに、二か国語同時とか、文字だけ翻訳とか。
そして、わたしが天才なのか『ウロの頭』が良いのか召喚士の持つ特性『知識の探究』のせいなのか、字幕やら吹替えやらをチョイチョイ替えながら村の子供たちと遊んだり習い事していたら、いつの間にか話せる様になってた!
文字は、まだ中途半端だけれど時間の問題じゃろうて。フェッフェッフェッ!
スキル的には、『共通語』となってた。
この頭脳ってゆーか学習力、持って帰れたらいいのになぁ。……帰れるのかなぁ?
最後に、この『世界』。
……うん。
もう、認めよう。
この世界は、イマージュ・オンラインに良く似た『異世界』だと思われる。
メニュー画面は開けるけれど、ログアウトやヘルプは使えない。
また、『フレンド』も誰もいない。
あ、友達がいないって事じゃーないよ!? フレンド登録された他のプレイヤーって意味よ!?
てゆーか、『プレイヤーサーチ』が出来なかった。
プレイヤーサーチは、ゲームだった頃に、ゲーム世界のどのエリアに誰が居るか調べる機能。
これで、フレンドがどこにいるか分かったりするし、名前が分かればその人を探す事も出来る。
今のこの世界には、わたししかプレイヤーだった者はいないみたい。……たぶん。
そして、異世界だと思う理由がこのイムの村。
ゲームだった頃、この村は存在しなかった!
く、くやしいから言う訳ではないけれど、いくらわたしが方向音痴でも、王都付近でこんなに迷うはずが無い! ……きっと。たぶん。めいび~。
恐らく、世界の大きさ自体がゲームだった頃に比べてずいぶん大きいのだと思う。
村の人から聞いた所によると、村から王都まで馬車で丸1日かかるらしい。
ゲームだった頃、王都から次の街まで徒歩で1時間(ゲーム時間で半日)だった。もちろん、途中にイムの村は無い。
むう。
背中にジワリと嫌な汗をかく感じがしたので思考停止!
それより、お手伝いなどして体動かして働きましょう! そうしましょう!
そんな感じで、トーマスさんに声をかけたわたしが手伝っている作業は、野ウサギの解体だったりですがどうでしょう?
いやぁ、背中に汗かきますね。
でも、まあ、いいいいつかででで出来る様にならなきゃだしね。こーゆーの。
恐くねーし! 血とか平気だし?
あ、内臓はヤメテクダサイ! ぎぇああああ!! ……暗転。
……復活!
そして、リトライ。
毛皮を傷つけないように、出来るだけ丁寧に剥いでいきます。
なるほど、毛皮ってこうやって入手するのですね。
モンスターを倒せば、自動的にアイテムをドロップする。
だけれど、今、この世界ではゲームで省略されてた事が重要になってたり。
……ラビットファーのコートに憧れた。そんな時代もありました。
気を取り直して、今度は保存食です。
野ウサギの肉を、砕いた岩塩で塩漬けにします。
森の中に、岩塩の取れる場所があるんだとか。
むう、ゲームだった頃には見た事なかったけれど。 やっぱり、色々と違うのですね。
あまり、手際が良いとは言えないアリサマにトーマスさんが苦笑いですがめげません。泣いてません!
そんなこんなで、スキル『採取(解体)』が追加されたょ。剥ぎ取りじゃないんですね。ありがとうございます。
次のお手伝いは、水汲みになりました。
これは結構、適役なんじゃね?
わたしの鞄は、アイテム化してしまえば重量が無くなるステキ使用なので、いくらでも汲んで行けるのです! 大活躍!!
……の、ハズだったのだけれど。
水汲みって、井戸から水の入った桶を引き上げるのが恐ろしく大変なのですね!
スッゴい重い!
何これ? おかしいでしょレベルだよ!?
1回で腕パンパンとかどーなの?
奥様方が、スイスイと水を汲み上げるのに対し、わたしはインターバルが長すぎです。かなり非効率!
頼まれた分は瓶20個分。
道は険しく長い。
改めて、水道ってスッゴい物だったんですね。
……技術って便利だ。
そんな感じに、両腕がダルンダルンで、まるで別体パーツみたいにしながらやっとの事で水汲みを終える頃には、すっかり陽も落ちて辺りは暗くなってたりする不具合です。
その日の夜、夕食時にジャンから質問があった。
「ウロって、召喚士なんでしょ? なんか、召喚して見せてよ!」
こ、コノヤロ~!
そこは、今のわたしにとって触れてはいけない危険なレイヤーだと言うのに!!
「……出来ないよ」
「あ、ごめん」
謝んな!
あぁ、労働後の美味しい食事が、たった今、砂を噛んでいるようになった不思議。ジャンはもげればいいよ。
「まあ、ワシには魔法の事は分からんが、マーシュなら色々知ってるじゃろ」
「マーシュ……さん?」
マーシュさんは、村の外れに住んでるお婆さんの事らしい。
なんでも、昔は風来の魔術師としてならしたんだとか。
現在のわたし、召喚士を名乗ってはいますがまったく魔法が使えません。
聖騎士だった頃、魔法は使ってたけれど、それは魔法リストから選んでシュートだったから。
『精神力を使って魔法詠唱してドーン』って、何だか良く解りません。
魔法リストに魔法が無い今、どうして良いのやら。
これはなんと素敵な情報でしょう!!
せっかく歴戦の魔術師がいらっしゃるなら、その庵にワラジを脱ぐのも必要だとか思います。むしろ推奨と言えよう!
「ぜ、是非、お会いしたいです!」
「では、明日にでも行ってみたらいい。場所はすぐ分かるじゃろ」
まさかの光明じゃないですか!
その夜、明日が待ち遠しいわたしは、ワクワクとドキドキで寝られないかと思ったけれど疲れすぎでアッサリ寝てしまいました。
睡眠重要。いや、基本!
名前 ウロ
種族 人間 女
職業 召喚士 Lv1
器用 8
敏捷 10
知力 30
筋力 9
HP 16
MP 18
スキル
知識の探求
共通語
錬金術 Lv30
博学 Lv1
採取(解体) Lv1