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第四十五話 ひよっこ捜索隊

 湿度100%は溺れると思ってた。ウロです。あと、豪雨の中では一瞬なら泳げると思ってた。……今もなお。


 そんな訳で、流れる様に有無を言わさず探索メンバー入りを果たしてしまいましたがどうでしょう?


 てゆーか、探索とか言ってるけれど血染めのお馬さんが見つかっただけで、レト様が行方不明になったとかは全然解ってもいないのですが大丈夫なんでしょうか?


 それこそ騎士団に報告するべき事柄なのでは? とか思うのですがなあ。


 なんて事をカレッカさんに言ってみますと、


「い、いや、ダメだ。レト様に便宜を図って頂いたアレやコレが表沙汰になるのはまずい。

 最悪の場合、この村に責任が及ぶぞ!?」


 ……えと、もう、及んでます。たぶん。


 裏で何が行われてたのかは知りませんし、知りたくありません!

 でも、少なからずその恩恵を受けてるだろう村全体としては、「村長が全部悪い、わたしたち知りません!」は、きっと通じないと思うのです。


 それとは別に、レト様の背後にどのクラスの貴族がいるか解らないとなると、都合の悪くなった貴族様の手によって、元々、地図に無かったこの村が物理的に消えちゃう可能性もあったりするのでしょうか。


 ……むう。

 何やら、考えたら怖くなってきちゃったよ。


 わたしとカレッカさんがそんなやり取りをしている間に、今回のメンバーが続々とやって来ました。……続々と?


 集まったのは、わたしとニードルス(気絶中)、狩人のジャン、自警団見習いからはリックとライナスの計5名だった。


「すまん、ウロ先生。俺たち以外は集まらなかったよ」


 リックが、すまなそうに頭を掻いた。


「……みんな、臆病だ」


 リックに続いて、ライナスがボソッと呟く。


「おはようございます、リックさん。ライナスさん。

 急でごめんなさい」


 わたしは笑顔で挨拶する。


「気にするなよ、先生。

 俺たちゃ、日頃の成果を試せるって喜んでるんだから。なあ?」


 笑って話すリックに、ライナスがコクンと頷いた。


 わたしを先生と呼ぶリックは、自警団見習いの23歳。

 背はわたしより頭1つ分くらい高くて、農作業で鍛えられているらしいガッシリとした体格をしている。

 短く刈り込まれた髪は白に近い金髪で、陽に焼けた肌に良くあっている。

 見習いの中で、最もやる気と才能があり、実力的にも1番だと思う。


 ライナスは、わたしと同じ21歳。

 背が高く、スラリと長い手足のせいで細く見えるけれど、しっかりと筋肉がついている。

 肩口まである髪は少しクセのあるオレンジ色で、ヒモで後ろ手に束ねている。

 口数も少ないし、あまり目立つ所は無かったけれど、言われた事を黙々とこなすし手を抜いてる様子は無かったと思う。


 ……せっかく来てくれて、嬉しい反面とてもとても不安になってみたり。


 わたしとニードルスは置いといて。


 ジャンは、普段からトーマスさんと森に入っての狩猟生活だから大丈夫だと思う。


 問題なのは、リックとライナスですよ。


 訓練では良い動きをする2人だけれど、彼らは実践経験が無い!


 それは、わたしにゴブリン殲滅隊のトラウマを思い出させる恐怖の記憶。


 そして、彼らの装備なのですがなあ。


 武器は、それぞれ鉈と干し草用のでっかいフォーク。

 馴れない真剣を扱うより、馴れ親しんだ物を手にする方が余程良いと言う物です。


 だけれど、防具が絶望的だった。


 頭には鍋をかぶり、普段着の上から2枚の木の板をヒモでくくった物を鎧代わりに着けている。


 防具なんて、ほとんど村から出ない彼らにとっては必要無いし当然の結果なのだけれど。


 何かあってからでは後悔しか出来ないのですよ!


 なので、急きょ、わたしの持ってる防具の中から彼らに合いそうな物を試してもらう事になりました。


 胸板の厚いリックに、わたしの革鎧は何故か無理だったので、薄い板金加工のされた革の胸当てを着けてもらう。

 背中側でコルセットみたいにヒモで固定するタイプで、少し窮屈そうだったけれど我慢してもらった。


 細身のライナスには、わたしの革鎧が着られたので良し。


「ありがとう、先生!

 鎧だよ、鎧!!」


「……ありがとう」


 初めて着けた鎧にはしゃぐリックと、微妙にニヤけながらくるくると自分を見回すライナスが面白い。


 ……まあ、2人とも鍋はかぶったままなのですけれどね。鍋の信頼度にビビる。


 わたしたちが装備を整えていると、びしょ濡れの村人が2人ドタドタと駆け込んで来た。

 冷たい雨の中を走って来たのか、息は弾んでいるけれど、寒さに震えている。


 それに気づいたカレッカさんが、慌てて立ち上がる。


「おお、どうだった?」


「地面が少し荒れてたけど、何も無かったし誰もいなかった!」


「……そうか、ご苦労だった」


 2人の話を聞いたカレッカさんが、ため息混じりにそう言った。


 ん?

 何の話??


「あの、カレッカさん。何事ですか?」


「いや、お前さんたちが用意してる間に様子を見に行かせたんだよ。

 もしかしたら、道の途中で倒れてるかも知れんからな!?」


 んぎゃー!!

 こんの、お馬鹿村長!!


「何してるんですか!

 もし、まだ野盗か何かがいたらどうするつもりだったんですか?」


 わたしが叫ぶと、カレッカさんと2人の顔色が一瞬で青ざめた。


 ……ああ、本当にダメだこの人。


「もう、お願いですから何もしないでください。……何もしてないですよね?」


「し、しない。しとらん!」


 わたしの質問に、カレッカさんは激しく首を振って答えた。


「用意は出来たのかい?」


 ややあって、今度はマーシュさんがやって来た。どこ行ってたの?


「マーシュさん、どこ行ってたんですか?

 ニードルスくんを起こしてくださいよう!?」


「ああ、悪い悪い。ちょいと探し物をね」


 そう言いながら、マーシュさんはニードルスの傍らに腰を下ろす。


 ニードルスの背中に手を当て、何事か呟くと、その手に魔力が集まっていった。


「ハッ、金貨の泉!?」


 意識を取り戻したニードルスの、第一声がこれである。

 どんな夢見てたんだろ?


「気がついた、ニードルスくん?」


「ウロさん? 私は??」


「気を失ってたんだよ。大方、興奮し過ぎたんだねえ?」


 マーシュさんの言葉に、思わず吹き出しそうになるのを慌てて堪えた。

 マーシュさん、それはだいぶ無理があると思います!


「……そう、ですか。失礼しました。

 で、話し合いはどうなったんですか?」


 わたしとマーシュさんの顔を見比べたニードルスは、何かを悟ったみたいな顔をした後に言った。空気の読めるエルフ。


 わたしがニードルスに現状を話すと、ニードルスは目を丸くしていたけれど、やがて目を伏せてため息をついた。


「……解りました。参りましょうか」


 その声には、聞き分けの良いと言うよりあきらめに近い何かが感じられた。


「お待ち、ニードルス。あんた、その格好で行くつもりかい?」


「はい、おかしいでしょうか?」


 立ち上がるニードルスに、マーシュさんが声をかけると、ニードルスは不思議そうに首を傾げた。


 ニードルスの装備は、マーシュさんからもらった杖(枝)と、普段着の上から麻のローブを着ただけ。

 足元は、木の靴だった。


 外は雨だし、さっきの村人の報告からすると、森に入る事になるかも知れない。


 森歩きに、裾を引きずる長さのローブはあまり向かないかも?


「ニードルスくん、他に装備は用意してないの?」


「してません。こんな事態、想定していませんでしたから」


 ですよね。

 ならば仕方ない。


「じゃあ、わたしの装備を着るが良いよ!」


「!?」


 何やら急に慌て出したニードルスだけれど、返事を待ってる時間も無いので無視しました。


 わたしは、再び鞄の中を探る。


 ぬう、もう革鎧が無い!?

 いや、あるにはあるのだけれど、わたしやみんなが着ているソフトレザーではなくってハードレザーしか残っていない。


 ハードレザーは、ソフトレザーに比べて重いし動きにくいからわたしは苦手だったり。

 とは言え、ニードルスに金属鎧が着れるとは思えない。


「ニードルスくん、ちょっとこれ着てみて?」


 わたしは、ニードルスにハードレザーの革鎧を渡す。


「わ、解りました!」


 やや、上ずった声で答えたニードルスは、村人の手助けを得て鎧を身に付ける。


 その過程で見えたのだけれど、ローブの下のニードルスは、本当に細かった。良く言えばモデルさんみたい。悪く言えば、ちゃんとご飯食べてるのか疑うレベルだよ。


「どう? 動けそう? 重くない?」


「えっ? あ、はい。少し堅いですが、重くはないですし問題ありません」


 腕を動かしながら、ニードルスが可動範囲を調べて言った。


 重くなければ、まあ平気かな?


 ただ、今履いているスボンはダメだ!


 ニードルスの履いているズボンは、あちこち擦りきれてしまって穴だらけのボロボロだった。

 今まで寒くなかったのか、不思議でならない。


 とは言うものの、わたしの手持ちにニードルスに合いそうな脚装備が無い!


 ヒョロヒョロの脚に、金属装備は無理だし。

 スカートとか、罰ゲームとしか思えないし。


 ……むう。

 悩んだけれど、これしか思いつかない。


「ニードルスくん、わたしのレザーズボン履いて。身長差があるから、ゆったりとは履けないけれど」


「!?」


 瞬間、ニードルスが目を剥いてピキッと硬直した。だから、忙しいんだっての!


 わたしは、メニューから装備を選択。レザーズボンから、革のショートパンツへと切り替える。


「はい、これ。履いてみて?」


 わたしはレザーズボンと、木の靴では心許ないので革のブーツも合わせて渡した。


「は、はい」


 わたしと目を合わせず、ぎこちない動きでズボンとブーツを受け取ったニードルスは、フラフラと荷物箱の裏へと回る。なんか、大丈夫なのかな?


 着替え終わったニードルス。

 やっぱり、ズボンの丈が少し短くて7分丈になっちゃってる。

 まあ、そこはブーツでカバーしてもらいましょう。


 それはそうと、ニードルスの顔が上気したように赤くなってる気がするのだけれど。何でなんだぜ?


「さあ、さっさと出発しましょう!」


 さっきまでとは違って、やたら元気そうに言ったニードルス。何なの? この不安定エルフ。


「では、行きましょう」


「これ、お待ち!」


 わたしが声を挙げると、マーシュさんが呼び止める。


「これを持ってお行き」


 そう言って、わたしとニードルスに1つずつの指輪をくれた。


 わたしの手には、銀色の飾り気の無いシンプルな指輪。

 ニードルスの手には、大理石の様な気持ちマーブル模様の入った指輪があった。


「マーシュさん、これは?」


「お守りだよ。

 ウロに渡したのは『ささやかな治癒』の魔法を封じた指輪。ニードルスに渡したのは『小さな盾』だ」


『ささやか治癒』は、初歩の回復魔法。

 消費魔力5ポイントで、10ポイント前後のHPを回復する。

 神聖魔法の回復とは違い、接触する必要はないけれど、回復量はかなり低めだ。


『小さな盾』は、目に見えない盾を作り出す魔法。

 消費魔力3ポイントで、あらゆる力から身を守る魔法の盾を出現させる。ただし、その名前の通り、すべての威力を防ぐ事は出来ないし持続時間も30秒とかなり短い。


「マーシュ殿、これは……」


「だから、お守りさね。さあ、さっさと行って来な!」


 マーシュさんの声に、ニードルスは指輪を握りしめて目を閉じた。


 わたしの指輪は、もしもの時の備えだけれど、ニードルスの指輪は、まさにお守りだよ。

 だって、『小さな盾』は付与魔法初期の補助魔法なのだから。


 いよいよ出発。

 なんだか、だいぶ長かった気がするのだけれど?


 わたしたちは、それぞれに雨具を身にまとう。


 リックとライナスは、牛のなめし革に蝋を塗った物。


 ジャンは、何かの毛皮に植物油を染み込ませた物みたいだ。


 ニードルスは旅人用の外套で、わたしはもちろん、ピチョピチョカエルマントだ。


「なあウロ、お前そんな目立つ外套止めてくれないかな?」


 わたしのカエルマントを見て、ジャンが眉をひそめた。


「ええっ、何で!?」


 訳の解らないわたしに、ジャンが外を指差した。


「今の時期、下草のほとんどは茶色くなってるんだよ。緑の部分にしたって、かなり色あせているんだ。そんな真夏の牧草みたいな鮮やかな緑、目立って仕方がないよ!」


 むう。

 狩人から、真面目なダメ出しを受けてしまいました。


 ああ、こんな事ならカエルマントHも取っておけば良かった。


 わたしのカエルマントは、タイプ・アマガエル。レアアイテム。

 Hは、タイプ・トノサマガエル。ハイレアアイテムだ。


 色がダークブラウンだったから、無理して取らなかったのに。ぬうう。


 余談だけれど、カエルマントにはさらに上のEXなる物があったらしい。その名も、タイプ・ヤドクガエル。装備したら毒で死にそうですがなあ。


 仕方がないので、わたしは、マーシュさんから外套を借りて事無きを得ました。


 外は、来る時と変わらない小雨状態。強くは降っていないけれど、まとわりつく様な雨は、徐々に体力を削られると思う。


 村の入口から延びる私道を、わたしたちは歩いて行った。

 地面には、もう崩れかけの馬の足跡らしき物が続いている。

 脇に続く、まだ新しい2つの足跡は、様子を見に行った村人の物だろう。


「止まれ!」


 約30分ほど歩いた所で、先頭を歩いていたジャンが声を上げた。


 ジャンは、その場にしゃがみ込むと地面を真剣な眼差しで見つめる。


 そこは、他の地面と違ってかなりでこぼこしている感じだった。

 だけれど、降り続いた雨のせいか、わたしにはただの荒れた地面にしか見えない。


 わたしたちが覗き込むと、「暗い! 邪魔だ!」と手を振って追い払った。


 ぬう、なんかちょっとプロッポイ。ジャンのクセに。などと。


「くそ、あいつら踏み散らかしやがって!」


 足跡らしき荒れた地面を見ていたジャンが、そう言って立ち上がった。


 どうやら、様子を見に行った村人たちが、この辺りを踏み荒らしてしまったみたいだよ。やれやれだね。


「どう、ジャン。何か解る?」


「もう、ほとんど原形を留めちゃいないけど、ここで争ったのは間違いないと思う」


 地面を見据えながら、ジャンが答える。


「では、手がかりはもう無いのですか?」


「……いや、ある。これは、何かを引きずった跡だな!」


 ニードルスに、ジャンが地面指差しながら答えた。


 その場所には、言われてみれば、何か大きな物を引きずった様な跡があった。


「この、周りの小さいのは足跡だな」


 太い線状に続く引きずり跡の左右に、子供の足ほどの大きさの跡がいくつか見てとれた。……指摘されなければ、ただのでこぼこ道だよ。やるなジャン。


 引きずり跡は、しばらくは道の上を続いていたけれど、やがてクイッと方向を変えて森へと消えてしまっている。


「どうやら、レト様はここで何者かに襲われ、さらわれたみたいだな。

 ご丁寧に、荷物は全て持ち去られてる」


 辺りを見回しながら、ジャンが呟いた。


「て事は、盗賊が出たって事?」


「……うーん」


 わたしの問いに、ジャンは腕組みして唸った。


「盗賊なら、こんなに小さな足跡ではないと思うんだ。もちろん、ドワーフやリリパットの可能性はあるんだけど。でも……」


 何やら、含む感じに唸るジャン。


「何か、ひっかかるの?」


「うーん、でも。いや、やっぱり……」


 イラッ


「何よぅ、言ってみなさいよぅ」


「いや、そんな。でもなあ、うーん」


 思考のループにハマったジャンを救うべく、わたしはジャンの後頭部を手刀で連打した。


「イデデデッ!?」


「悩んでないで言ってみなさいよう?」


「恐ろしい事するな、お前。

 解ったよ、言うよ!」


 わたしから1歩、距離を取ったジャンは深呼吸をしてから言った。


「たぶん、レト様はゴブリンに襲われたんだ!」


「ご、ゴブリンだって!?」


 リックが悲痛な叫びを上げ、ライナスが困った様に眉間にシワを寄せる。


 ……ああ、またゴブリン。

 イヤな予感しかしないよう。


「ゴブリンが、レト様を襲った?」


「ああ、たぶんな」


 わたしのゲンナリ気分をよそに、リックとライナスは怯え、ニードルスとジャンが真剣に話している。


「じゃあ、みなさん。ゴブリン退治に参りましょうか」


 わたしがそう言うと、ジャンが慌てて口を挟んで来る。


「待て待て、ウロ。そんな簡単な状況じゃあないんだ!」


 ……む?

 どゆ事??


 わたしが首を傾げていると、代わりにニードルスが質問する。


「簡単な状況じゃない、とはどう言う意味ですか?

 詳しく教えてください!」


「いいかい、ゴブリンってのは……」


 ジャンの話しによると、ゴブリンが人を襲う事自体は、珍しい事でも何でもない。

 おかしいのは、この場に何も残されていない事だと言う。


「普通、馬があれだけボロボロになってたんなら、鞍の部品や持ち物が散乱しててもおかしく無い。ここは、キレイ過ぎるんだ!」


 ……なるほど、言われてみれば遺留品らしき物が1つも無い。変かも?

 でも、たまたま珍しいと思ったゴブリンが全回収してった可能性もあるんじゃないのかなあ?


 わたしがそんな事を考えていると、ジャンがさらに続ける。


「もっとおかしのは、足跡の数だ。

 普通、ゴブリンってのは集団で襲ってくるのに、ここにある足跡は、どう見たって2匹分しか無い」


「確かに、それはおかしいですね!」


 ニードルスが、神妙な顔でうなずいている。


 ……そ、そうなのですか?


 ゲームだった頃、モンスターとのエンカウントなんて単体は当たり前だったし、ゴブリンだってそうだった。

 この世界の常識に疎いわたしには、そんな事もあるのでは? みたいな感じなのだけれど。


「い、1度戻って応援を……」


「いや、これ以上の応援は無理だな。

 現に、自警団からはあんたら2人しか来なかっただろ?」


 戸惑うリックに、ジャンが冷静に答えた。


「では、どうしますか?

 このまま追跡しますか?

 危険な事には変わりませんよ?」


 ニードルスが、全員の顔を見回した。


「敵はゴブリンだけれど、だいぶ不可解。

 応援は無い。でも、放っては置けない。そんな現状?」


「だな!」


「ですね!」


 わたしの問いに、ジャンとニードルスがうなずいた。


「お、おい。本当に行くのか?」


 リックはかなり怯えてしまってるみたいだけれど。これはダメかな?


「……オレは行く」


 静かに、でも、力強くライナスが言った。


「では、私とウロさん。ジャンさんにライナスさんが行くと言う事で良いですか?」


「!?」


 ニードルスの言葉を聞いて、リックがあからさまに慌てた顔になった。


「リックさん、無理はしなくていいですよ?

 村を守るための自警団だし。ここ、村の外だし?」


「……い、いや、俺も行く。俺は、戦士になるのが夢だったんだ!」


 ぬう。

 何かのフラグな気もするけれどなあ。


「では行きましょう。

 かまいませんね、ウロさん?」


「良いですけれど、みなさん、無理は絶対にしないでくださいね?」


「決まったかい?

 引きずった跡は、こっちに続いてる。行くよ!」


 リックの決死の決断中も、マイペースに探索してるジャンにビビった。


 何かを引きずった様な跡は、道をそれて森へと続いている。


 雨の森は、昼間とは思えないほどに暗くて、やけに重苦しく見えたりしたのでしたさ。

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