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第三話 迷子継続中

 ……気がついたら、太陽はもう間もなく真上に昇ろうとしていた。陽に焼けちゃうよ?


 ボンヤリとそんな事を考えながら起き上がる。


「っ痛!」


 身体中に走る鋭い痛みと、頭の芯に響く鈍い痛みが同時に襲ってきた。


 イテテテ。

 そうだ、昨夜はゴブリンと戦ってたんだ。


 フラフラする頭を軽く振りつつ、辺りを見回してみた。


 昨晩、やっとの思いで点けた火はすでに消えており、微かにくすぶり白い煙を漂わせている。


 辛うじて、ランタンの灯りは消えてはいなかった。

 油を足して、灯りって言うか火を維持する。

 だって、コレが消えたらまた点ける自信無いもん! 浪費じゃあなくって生活の知恵。と言う言い訳なのはナイショです。


「あわわっ」


 情けない声を出して、その場にへたり込んだ。

 思ったより身体が言う事を聞かない。


「ステータス!」


 目の前に、ウインドウの様にステータスが表示される。


 名前 ウロ


 種族 人間 女

 職業 召喚士 Lv1


 HP 5/16

 MP 2/18


 うわぁあああ!!

 かなり瀕死!!


 わたしは、慌てて片膝を立てて祈る様な形をとった。『ヒーリング』状態だ。


 イマージュ・オンラインでは、戦闘等で傷ついた時、『ヒーリング』と呼ばれる体制をとる事で、少しずつHPとMPを回復する事が出来る。

 無防備な状態になるため、ノンアクティブモンスターであっても襲ってくる場合があって、ヒーリングする場所は慎重に選ぶ必要がある。

 けど、今はそんな事言ってる場合じゃない! だって死んじゃうよ? 余裕で。


 ……しばし待つ。


 ……まだ待つ。


 ……なんか、全然回復した気がしないんですが?


 もう1度、ステータスを開いてみる。


 HP 5/16

 MP 2/18


「あれ? やっぱり回復してない??」


 むう、もしかしてヒーリングは出来ないの!?


「……どうしよう?」


 ゴブリンから受けた傷は、幸いにも、剣がボロボロだったおかげで切り傷だけれど深くはないし血も止まっている。

 でも、このまま動いていたら傷が開いてしまうかも。痛いのは嫌いです。痛いから!


「何かなかったかなぁ?」


 鞄をゴソゴソと探ってみる。


 あった!

 大量の『薬草』と『包帯』だ。


 試しに、薬草を使ってみる。

 アイテムを自分にシュート!


「……何も起きない」


 ちなみに、包帯もダメでした。


「薬草って、どやって使うの?」


 食べるの?

 飲むの??

 傷に宛るの!?


 むう、使い方が解らない。

 包帯は、まあ、巻けばいいけど。


「……となると、ポーションかなぁ」


 HP回復の代名詞アイテム、『ポーション』。


 歴代イマージュでも登場する回復アイテムで、当然、イマージュ・オンラインでも存在する。


 飲んで良し!

 売って良し!

 愛でて良し! な、素敵アイテムである。最後は個人的意見である!


 ポーションは錬金術で作成でき、初心者の金策としてもおススメだった。


 当然、ウロもやってたのでスキル的にも問題無い。なんだけど。


「……素材が足らない」


 ポーションを1つ作るのに必要な素材は『薬草』と『水』。そして……。


「妖魔の骨かぁ」


 チラッと視線をソレに向ける。


 ソレは、今だ白い煙と異臭を漂わせている。

 もちろん、こんがり焼けたゴブリンだ。

 見たくなかった。だから、無視してたのになぁ。


『妖魔の骨』は、ゴブリンなどの人型モンスターが落とすアイテムで、様々な用途で使われる。


 ポーションなどの秘薬を作る上では欠かせないアイテムで、錬金術上位になれば『悪魔の骨』なんてのも必要になってくる。くるけど。


 もう1度、やっぱりアイテム化も消えもしないゴブリンを見る。


 アレから骨を切り出すのだ。わたしが。ナイフとかで。


「……えーと」


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

 恐い恐い恐い恐い!!


 だって、ワイルドバニーすら解体出来ないんだよ!?

 一方、木に吊るして血抜きしてたワイルドバニーはたまに吹く風にユラユラ揺らめいていたり。それも恐いんだけどさ!?


 結局、薬草をかじってみたら、少しだけHPを回復する事が出来た。

 ただし、苦さがハンパないレベルだったので1個しか食べられなかった。


 後は、少しキツく包帯を巻く事で誤魔化してみたり。

 ウサギも解体出来ず、鞄に突っ込んでしまった。


「あぁ、お腹空いたなあ」

 薬草1個と水だけでは、一瞬しかお腹はふくれない。

 わたしは、空腹のまま歩き出した。



 森の中を進む内、わたしはある事に気がついた。


 意識せずに見てる時はまったくなのだけれど、意識して見ると、物の名前や説明が浮かんでくるのだ!


 例えば、その辺に生えてるキノコ。


 良く見てみると、


『アカキノコ』


 と、名前が。

 そして、


『フォーンの森に生えるキノコ。毒性があり、食用には適さない』


 と言う風に。


 スゲェ!

 ナニコレ、超絶便利!! わたしってば天才気味?


 識別?

 鑑定?


 スキル的には、『博学』となってた。


 ゲームだった時には、アイテムとして所持すると普通に表示される機能だけれど、今は能力的な扱いみたい?


 感じとしては、ゲームの機能プラスわたしの知識みたいな? あぁ、図鑑読んでてよかった!


 そんな感じに、何か食べられそうな物を探しつつ、人里目指して歩きましょう。そうしましょう。




 さて、どの位歩いたかな?

 もはや、ランタンの方が明るくなりつつありますが大丈夫です。きっと。


 だけれど、実は、あんまり歩けてなかったり。


 空腹でフラフラ。

 頭痛でクラクラ。


 空腹はアレだけれど、頭痛は何なんだろう?


 片頭痛?

 脳疲労?


 最初は、空腹で血糖値が下がっての頭痛なのかな? とか思ったんだけれど。

 もしかして、昨晩の火トカゲが原因なのかも知れない!?


 と言うのも、火トカゲが現れる前に体から何かが抜けていく感覚があった。

 もしかしたら、もしかしたらだけれど、わたしが呼び出したのかもしれない。

 あ、忘れてるかも知れないけれど、わたしってば召喚士なのですよ!


 となると、わたしがMPを消費して召喚した可能性がある! ……気がする。きっと。たぶん。


 聖騎士だった頃、多少の魔法は使った事があった。 けれど、ダメージと同じで数値的なMPの減少は認識するけれど、魔法を使った時に何かが抜けるなんて感覚には覚えがない。


 さらに自信が無いのは、所持魔法リストに何も無かったりするからなのですがなあ。


 召喚魔法の獲得には、古文書の解読だったり専用クエストをクリアしたりするとかが必要なのだけれど。


 むう。

 どうやっても謎は深まるばかりなので、超魅力的なワタクシに火トカゲが魅了されて助けずにはいられなかった! って感じで納得。 ……夢、見たっていいじゃない!


 とは言え、このままでは遭難ですよ?

 或いは強制ダイエットで餓死ですよ!?


「餓死はヤダ! ダイエットはいいけど餓死はイヤだ!!」


 美味いご飯!

 いえ、贅沢は言いませんから温かいスープが飲みたい!


 ふらつく足で、わたしはもう1度歩きはじめた。



 ……もう夜です。それはもうトップリです。


 行けども行けども森。

 或いは木がイッパイ。

 もしくは樹木天国。


 どうしよう。

 本格的に遭難したかも?

 そう思っていたら、薮がきれて唐突に森が拓けた。


「あ、アレって!?」


 そこには、1軒の丸太小屋があった。

 明かりは点いていないけれど、明らかに人工建築物だ!


 ご飯!

 いえ、贅沢は言いませんからコップ1杯の砂糖水をください!


 そんな想いで、まるでゾンビみたいな足取りで、わたしは小屋に向かった。


 ギィ


 扉は、何の抵抗も無く開いた。施錠はされてないみたい。


「こ、コンバンハ~」


 無人。

 でも、使われているのか埃が積もっている様子はなかった。


「お、お邪魔しま~す」


 ランタンで辺りを照らす。

 綺麗に片付けられた室内は、小さめのテーブル1つと簡素なイスが2脚。

 ベッドが1つ、壁際にはかまどが備え付けてある。

 また、部屋の奥には作業場らしき所もあり、天井からは何かの毛皮がいくつも干してあった。


「狩人の小屋かな?」


 室内を見る限り、そんな感じだ。

 窓は、落とし窓になっていて今は閉まっている。つっかえ棒も立て掛けてあった。


「う、うおお!?」


 わたしは眼を見張った。

 天井の毛皮に紛れる形で干されている物。


「ほ、干し肉だ!!」


 干し肉の1つを、勢い良くひったくる。

 いえ、普通に取ろうとしたら思ったより凄いスピードが出てしまっただけです。 空腹のなせる技です。本当です。


『野ウサギの干し肉


 ワイルドバニーの肉を塩漬けにして干した保存食。長期保存が可能だが、湿気に弱い』


 やったー!!

 食べ物だ!!


 神様、ありがとうございます。

 干し肉の制作者様、勝手に押し入った上に食料を奪ってごめんなさい。いただきますごめんなさい!


 早速、干し肉を1口。


 ガッ!


「か、硬い」


 ヤバイ、スッゴい硬い!

 ナイフで切ろうにも、硬くて無理。


 ならば、火を通すまで!

 幸い、かまどらしき物はあるし鍋もある。

 さらに、かまどの近くには麻袋に入ったジャガイモがあった!


 タンパク質に炭水化物。 あらやだ最強!?


 まず、ランタンから火をかまどに移します。

 火口は、麻ヒモをほどいて用意して。

 たくさんあった薪をお借りして。

 うん、何となく形になった。やれば出来るもんだ!

 そうしたら、やたらいっぱい持ってきた川の水で鍋を洗って火にかけて~。


 皮剥いて切ったジャガイモと干し肉を水から煮ていきます。


 おイモが柔らかくなったら完成。


「野ウサギの干し肉とジャガイモのシチュー!」


 ただ煮ただけなのに、スッゴい美味しい!!

 塩気も良い感じだし、煮込んだ事で干し肉も柔らかくなってる。


 あぁ、わたし生きてる!!


 お腹がイッパイになると、眠くなるのが人情です。

 疲れてるのです。

 グーグー寝たいですグーグー。

 それはもう、思う様ベッドで寝たいですグーグー。

 それから、どうなったのかは覚えてない。

 あ、立ち上がったまでは覚えてるかな?


 もういいや。

 明日、明日考えよう。


 明日は……きっと……誰か……に……。グウ。

名前 ウロ


種族 人間 女

職業 召喚士 Lv1


器用 8

敏捷 10

知力 30

筋力 9

HP 10/16

MP 2/18


スキル


知識の探求


錬金術 Lv30

博学 Lv1

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― 新着の感想 ―
[気になる点] どうしても気になったので失礼します 川の水って寄生虫とか安全とか色々大丈夫でしょうか、 あと 皮剥いて切ったジャガイモと干し肉を水から煮ていきます。  おイモが柔らかくなったら完成。…
2020/01/15 18:45 はじめまして
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