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第三十四話 中庭に響く鬨の声

 前回のあらすじ。


 なんか、強そうなの来ちゃった。


 今、わたしの目の前には敵が5人いたりします。


 全員、戦士風の格好。

 装備がバラバラなので、冒険者なのかな?



 名前 モノン(以下、戦士A)


 種族 人間 男

 職業 戦士 Lv1


 HP 15

 MP 3



 名前 ジール(以下、戦士B)


 種族 人間 男

 職業 戦士 Lv2


 HP 19

 MP 5



 名前 トリク(以下、戦士C)


 種族 人間 男

 職業 戦士 Lv2


 HP 20

 MP 7



 名前 デトアン(以下、戦士D)


 種族 人間 男

 職業 戦士 Lv1


 HP 13

 MP 1



 みんなレベル1~2なのだけれど、1人だけ、やたらレベルの高い奴がいる!



 名前 バルガ


 種族 人間 男

 職業 戦士 Lv8



 器用 12

 敏捷 23

 知力 17

 筋力 35

 HP 64

 MP 15


 スキル


 共通語

 礼儀

 蛮勇



 格闘 Lv5

 斧の扱い Lv5

 剣の扱い Lv2

 槍の扱い Lv2


 剣技 Lv5


 兜割り

 渾身の一撃(斧使用時のみ)

 武器破壊(斧使用時のみ)



 レベル8!!

 何コレ、強っ!


 ゴーズさん並の巨体は、筋肉だけで出来てるみたいに盛り上がっている。血管とかアレな感じに。


 サンタクロースみたいな髭を伸ばしていて、年齢や表情は解らないけれど、鋭い眼差しから〝殺ってやる!〟みたいな雰囲気が感じられて怖い。


 巨大な戦斧で武装した姿は、それだけでも十分に威圧感があるのに、身体のあちこちにある傷痕が、さらに迫力を増してるみたいだよ。


 でも、どっかで見た事がある様な? などと。


「……バルガか」


 ゴーズさんが、ポツリと呟いた。


「知ってる人ですか?」


「知り合いじゃないがな。北の方じゃあ、少しは知れた名の傭兵だ」


「さっき言った、騎士崩れさ。コイツは、そこいらの雑魚とは話が違うぞウロ殿?」


 わたしの質問に、ゴーズさんとファルさんがそれぞれに答えてくれた。


 ところで、騎士崩れって?


「元騎士な奴!」とゴーズさんが言った。あ、はい。


「かつて騎士の叙勲を受けていたが、何らかの理由で剥奪された者」とファルさんが言った。


 自由騎士が何らかの理由で帰る城を失ったり、街道警備の騎士が、守るべき村々に盗賊紛いの事をしてグタグダになったり。みたいな感じらしい。


「どっちにしても、騎士としての訓練経験がある分、盗賊や食いつめ冒険者よりは断然手強い!」


 そう言ったファルさんは、真ん中のバルガから目を外そうとしない。


 それは、ゴーズさんも一緒だった。


 こうやって話してる間も、バルガは仲間に何やら指示を出してるみたい。


 ゆっくりとだけれど、戦士たちが左右へと広がって行く。


「いいか、姫。

 バルガの奴はオレが押さえる。その間に、姫はファルと一緒に周りの雑魚共を片付けてくれ!」


「うぇ!? そんな無茶な!」


「ああ、だからさっさと片付けてくれよ?」


 ゴーズさんは、そう言って片目をつむって見せた。


 あらやだカッコイイ!


 わたしは、ゴーズさん越にファルさんを見た。


 それに気づいたファルさんは、軽くうなずいて見せた。


「いいか、てめぇら!

 首はニコルだ。

 こんな雑魚共、とっとと片付けるぞ!」


「オオー!!」


 バルガが吠え、周りがそれに呼応する。


「あー!!」


 そして、同時にわたしも大声を出してしまった。


「う、ウロ殿?」


「な、なんだよ姫?」


 ファルさんとゴーズさんが。敵もまた、みんなキョトンとしている。


 だ、だって、声を聞いて思い出しちゃったんだもん。


「は、廃城のバルガ!!」


「ほう、俺の通り名を知ってるとは嬉しいね。

 俺も名が売れたもんだな!」


 そう言ってバルガは、ゲラゲラと笑った。


「なんだよ、やっぱり姫も知ってたんじゃないか!」


「……だろうな」


 やれやれと言った感じに、ゴーズさんとファルさんがため息をついた。まあ、知ってたけれどね。


 廃城のバルガ。


 ゲームだった頃に、騎士のジョブを獲得するための連続クエスト『騎士見習いの受難』で最初に闘う事になる相手だ。


 簡単な見回り任務のはずが、盗賊まがいの傭兵団と闘う事になっちゃう。地味に難しいクエストだったのを思い出す。


 いくつかあるクエストの中で、最初に辛酸と床をなめさせられる相手が、このバルガだったりですよ!


 わたしは、このクエストをクリアするのに3回殺られた不具合を今思い出したなう。


 確かに、騎士だった設定があった様な気はするけれど、だいぶ脳筋だったイメージしかないよ?


 それはさておき、イロイロ思い出したら腹立って来た!!


「おいでませ!」


 怒りにまかせて、勢い良く地面に手を着いたら少し痛かった。おのれ、バルガ!


 それはさておき、お久しぶりのレプスくん召喚!


 続けて、ストーンゴーレムちゃん召喚!


「ゴーレムちゃん、ゴーズさんのサポートをお願い。

 レプスくんは、わたしと行くよ!」


 ゴーレムちゃんは、ガクンと揺れてからゴーズさんに寄って行く。


 レプスくんは、鼻をヒクヒクさせてからトントンとリズムを取り出した。


「おおっ!?

 俺を知ってるばかりか、召喚魔法が使えるのか。

 おいっ! あの娘は俺が貰う。殺さずに捕まえろ!」


 バルガが、髭を撫でながら言った。


「ほう!」


「へ~!」


 ファルさんとゴーズさんが、何やら感心してる!?


「な、何ですか?」


「いや、良くウロ殿を女だと気づいたな……と」


「良かったな、姫。モテモテじゃないか?」


 お、おのれら!!


「う、うるさい!

 行きますよ!?」


「おお!」


「おおー!」


 かけ声と共に、ゴーズとゴーレムを倉前に残してファルが右へ、わたしは左へと走り出す。


 わたしから見て、左から戦士A・B、真ん中にバルガがいて、戦士C・D。


 わたしがA・B、ファルがC・Dを倒すのだ! ……たぶん。


 わたしよりも速く、レプスが戦士Aの前に踊り出た。


 Aが剣を振り下ろすより速く、レプスが高く跳躍する。


 同時に、巻き上げられた土埃がAの視界を奪った。


 わたしは、横に回り込みつつバッシュの体勢に入る。


 狙うのは、ガードの無い首の後ろ。


 わたしは、そこに剣の腹を叩きつけた。


 ドッギャッ


「はぐぅ!」


 戦士Aは、ヨロヨロと2、3歩進んでから前のめりに倒れた。


 もちろん、状態は気絶。


 視線を前方に戻しつつ、戦士Bを捕捉する。


 まだ、舞い上がった砂埃が邪魔だ。


 !?


 今、一瞬だけ砂埃の向こう側が光った気がしたけれど。気のせい?


 気を取り直して、わたしは走り出した。


 数メートル先では、レプスが戦士Bと接敵している。


 低く沈んだレプスが、Bに向かって体当たりを繰り出す寸前だった。


 ほぼ、ゼロ距離からの超高速ダッシュは、目で見てからかわすのは難しい。


 ドンッと音をたてて、地面がくぼむと同時にレプスの姿が消える。それ位に速い。


 やった!


 わたしがそう思ったの瞬間、Bは、レプスの体当たりを軽々とかわして見せた。


「えっ!?」


 思わず声が出た。


 何、今の?

 有り得ないよ!?


 いや、熟練した高レベルの者なら余裕でかわせるのだろうけれど。


 Bのレベルでは、今の攻撃をかわせるハズがない! ……と思う。まぐれ?


 だけれど、その後もレプスの攻撃は当たらず、代わりにBの攻撃が当たっている。


 そこでわたしは、起こっている違和感に気づいた。


 てゆーか、Bのハンドスピードがおかしいよ!?


 シングルレベルの戦士が、あんなに速く動ける訳がない! たぶん。めいび~。


 吹き飛ばされてきたレプスを、わたしは慌てて抱き止める。


 かなりボロボロだ。


 ごめんね、レプス。


 わたしの身体から、レプスに生命力が流れ込んで行く。


 あれ?

 全快しない!?


 半分も回復していないのに、レプスへの生命力供給が途絶えた。


 レプスは、カッと目を開いてわたしから飛び降りる。


 鼻をヒクヒクさせ、何かを言ってるみたいだけれど?


「ボクなんかより、か弱くて可憐なご主人様はご自分を労ってください!」


 とか言ってるのかな?


 ああ、何て健気でカワイイのかしらレプスくん!


 そんな事を妄そ……考えていましたら、レプスくんはわたしの後ろにサッと隠れた。


 ん?


 さらに、頭でわたしをグイグイ押している!?


 ……ああ、お前が闘え! って事ですね。


「へっ、せっかく毛皮を剥いでやろうと思ったのによ?」


 コノヤロー。

 戦士Bのクセに喋んな!! などと。


 わたしは、立ち上がりつつBのステータスを確認する。



 名前 戦士B (ヘイスト状態)



 ぬ!?

 ヘイスト!?


 ヘイストは、対象の敏捷度を短時間だけ上昇させる支援魔法だ。


 ゲームだった頃に、チームの先輩から敏捷度上昇値の計算を教えて貰ったけれど。


 術者のレベルと知力と対象のレベルと敏捷値と~ムニャムニャ。



 忘れちゃった!


 まあ、大体2倍弱になったと思う。


 とは言え、この場の誰も使えるレベルの魔法じゃないよ!?


 最低でも、50レベル以上の魔法使いがいる事になる。


 いやいやいやいや。

 そんなの勝てないから!


 てゆーか、そんなレベルの魔法使いがいたなら、こんな闘いの前に全員が消し炭になっててもおかしくない不具合ですよ!?



 にじり寄ってくるBを見ながら、わたしはそんな事を考えて身震いした。


「なんだあ? ビビッてんのかあ?」


 Bは、いやらしい薄ら笑いを浮かべながら言った。


 いや、お前じゃねーし!


 周囲を確認したけれど、それらしい人物は見当たらない。


 マズイ。

 早く、魔法使いを見つけないとですよ。


 もし、ヘイストがバルガにかかってしまったら?


 わたしは、視線をゴーズの方へ移した。


 倉の入口付近、ゴーズとバルガが激しくぶつかり合っている。


 巨大な戦斧を軽々と振り回し、強烈な一撃を放つバルガ。


 それを紙一重でかわしつつ、両手に持った片手斧を自在に操って闘うゴーズ。


 時おり、ゴーズの盾となって戦斧を弾くゴーレムがそこにはあった。


 さすがに厳しい闘いは、ゴーズを少しずつ後退させ、ゴーレムの身体を削っている。


「よそ見してんじゃねー!」


 頭上で、Bの叫ぶ声が響いた。


 ヤバッ、油断した!


 振り上げられた剣は、すでに最上段にまで達している。


 わたしは、慌てて迎撃体勢をとった。


 が、Bの攻撃が予想以上に鋭い!


 中途半端に構えた剣を、Bの打ち下ろしは簡単に弾き飛ばした。


 うわー!!

 ヤバイマズイヤバイマズイ!!


 体勢の崩れたわたしに、Bは剣を突きつけてニタリと笑った。


 と、次の瞬間。


 Bの顔を、横から何かが高速で打ちつけた。


 揉んどりうって倒れるB。


 そこには、誇らしげに鼻を鳴らすレプスの姿があった。


 あ~、やっぱり仕返ししたかったんだ。

 そして、わたしを囮にしたんだ。ぬう。でも、ありがとう!


 なんて、悠長に構えてる暇ないよ!


 大急ぎで剣を拾ったわたしは、立ち上がろうとしているBに向かって走り出す。


 不意を突かれたBは、まだ体勢が整わない。


 わたしは、低い位置からバッシュの構えに入った。


 狙うのは、顎!


 Bもこちらに気づいたけれど、もうわたしの間合いだ。


 わたしは、Bの顎めがけて剣の腹を打ち上げた。


 チッ


 渾身の一撃は、Bの兜を弾き飛ばしただけだった。


 ……あ、ヘイストかかってるの忘れてた。


 攻撃を透かされて、わたしの身体は宙を泳いでいる。


 よろめきながら、剣を構えるB。


 その剣を、わたしの胴をめがけて薙ぎ払った。


 防御、間に合わない!

 回避、絶望的!!


 血走った目でわたしを睨みながら、Bが高速で迫ってくる。


 その目が、一瞬だけ大きく見開かれたのが見えた。


 ドッ


 Bの剣が、わたしのお腹に当たる!


 ……あれ?


 痛いけれど、斬れてはいない?


 Bの剣は、わたしの革鎧に食い込んで止まった。


 Bは、わたしの横をすり抜けて進み、そのままドサリッと、うつ伏せに倒れて動かなくなった。


 数秒、何が起きたか解らなかったけれど、倒れたBを見て、その訳が解った。


 Bの後頭部には、ナイフが深々と刺さっている。


 ハッとして、わたしは顔を上げる。


 その先には、ファルの姿があった。


 ファルの投げたナイフが、Bの後頭部を見事に捉えたのだ!



 すでに戦士C・Dを倒しているみたい。


「大丈夫か、ウロ殿!?」


 ファルはそう言いながら、辺りを警戒しているみたいにキョロキョロと見回した。


「だ、大丈夫です。ありがとうございます!」


 わたしは、お礼を言いながら少しだけ恐怖していた。


 だって、わたしとファルの間は10メートル以上あるよ?


 どんな威力で、どんなコントロールなの!?


 おそるべしファル。

 でも、感謝!!


「ファルさん、どこかにもう1人隠れてるかもしれないの!」


 わたしは、ファルに駆け寄って言った。


「……ああ、その様だな」


 そう言って、ファルは小さくため息をついた。


 近づいて良く見ると、ファルの身体はあちこち傷だらけになっている。刀傷じゃあないみたいだけれど。何だろ?


「何処からか、急に石礫(いしつぶて)が飛んできた。

 あれは、投げた物じゃなさそうだ!」


 投げたんじゃないって事は、やっぱり魔法使いが何処かに潜んでる!?


「ファルさん、何処かに魔法使いがいるかもしれない。しかも、かなり高レベルの!」


「やっぱりそうか。

 ウロ殿、悪いが魔法使いは頼む。私はゴーズの応援に行く!」


 言うが早いかファルは、軽くわたしの肩を叩くと、勢い良く走り出した。


「ちょっ!?」


 ぬう、やるしかないよねぇ。


 敵は、ヘイストの魔法が使える位の高レベルな魔法使い。


 でも、ファルが受けた石礫は、土属性魔法の中でも初級のストーン・ブラストだと思われる。


 ……もしかしたら、敵はマジックアイテムを使ってるのかも!?


 ヘイストも、今姿を消しているのもマジックアイテムなら、魔法の実力は初級レベルなのかもですよ。


 でなければ、ストーン・ブラストじゃなくって、一撃必殺な魔法を使えば言い訳だしね。


 ……ならば。


「レプスくん、この近くに敵が潜んでるかもしれない。見つけて!」


 わたしの声に、レプスはフンと鼻を鳴らす。


 そして、耳をピンと立てて警戒モードに入った。


 激しい打撃音が響く中、それ以外の何かに全神経を集中させてるのが解って、わたしまでキリキリする感じだよ。


 もの凄く長く感じられた沈黙。

 実際には、ほんの数十秒なのだけれど。


 レプスの右耳が、くるりと逆を向いた。


 同時に、レプスが警戒から威嚇のステップに入る。


 間を置かず高速で飛び出すレプスは、ファルやゴーズの方へと移動している。


 次の瞬間、レプスに向かって無数の石礫が炸裂した。


 見えた!


 石礫が、ストーン・ブラストの魔法が発動する瞬間、ローブのフードを目深に被り、長くてねじれた杖を持った人物がハッキリと浮かび上がった。


 わたしとゴーズたちの、丁度真ん中位の場所。


 おそらく、バルガに加勢するため移動してたんだと思う。


 石礫を受けて、弾き飛ばされるレプス。


 うん、生きてる! 割りとギリギリ。


 ごめんね、後で回復してあげるからね!?


 わたしは、魔法使い目指して一直線に走り出した。


 再び、一瞬だけ魔法使いの姿が見えた。


 同時に、わたしに無数の石礫が飛んで来る!


 痛いよ!

 凄く痛いよ!! 超絶痛い!!!


 でも、来るのが解っていれば耐えられる! 痛いけれどね。


 少しだけ勢いが落ちたけれど、わたしは構わず突進する。


 三度、姿を現した魔法使いは、魔法ではなく杖を構えている。


 だけれど、もう、わたしの間合いだもんね!


「バッシュ!」


 低い姿勢から、一転、高く飛び上がる。


 そのまま、わたしは剣の腹を魔法使いの頭に叩きつけた。


 グボンッ


 あ、手応え超バッチリ!


 ローブのフードが外れて、魔法使いの姿が現れる。



 名前 ペドウ (気絶状態)


 種族 人間 男

 職業 妖術師 Lv3



 HP 3/9

 MP 2/25



 残りMP 2。


 もう、かなりギリギリだったみたい。


 わたしは、急いで魔法使いの装備を確認する。


 プリズムマント


 光属性の魔力によって、使用者の姿を消す事が出来るマント。ただし、攻撃や魔法、アイテム使用時には効果が失われる。


 良い物を持ってるなあ。

 でも、これじゃないよ!


 俊足の指輪


 ヘイストの魔法を封じた指輪。

 使用時、MPを1消費。

 回数制限 残り2


 やっぱりあった。

 これだよ!!


 わたしは、魔法使いから俊足の指輪を抜き取って身につけた。


 倉の前では、ゴーズとファルが懸命にバルガと闘っている。


 強打に晒され続けているゴーズは、直撃こそ無いけれど、肉体的にも精神的にも消耗してるハズ。


 ファルも連戦と、予期せぬ魔法攻撃を受けたせいで動きにキレが無いよ。


 ゴーレムも、あちこちヒビが入っていて、そろそろ限界かもしれない。


 わたしは、指輪に魔力を流し込んだ。


 もちろん、対象はファルとゴーズ。


 指輪は、わたしの意思に従って魔法を行使。

 役目を終えた指輪は、音もなく崩れて消えていった。


「おおっ!?」


「うおおおっ!?」


 ヘイストの魔法を受けた2人から、感嘆の声が上がる。


 明らかに手数が増えたゴーズが、大振りのバルガを圧倒し始めた。


 また、ファルにいたってはえげつないスピードでバルガを斬りつけて行く!


「がっ、くそ、なんだ一体!?」


 押していたハズの戦局が、アッという間にひっくり返って、バルガは転がる様に距離を取った。


「もう、仲間はみんな倒しちゃったよ!」


 スビシッ!

 言ってやったぜ!!


「なっ!?」


 周囲を見回して、バルガは顔色を変えている。


「諦めて投降しろ!」


「死ぬ事はねえぜ、バルガよ?」


 呼吸を整えつつ、ファルとゴーズがバルガに迫った。


「ちっ、誰が降参なんかするかよ!」


 バルガはそう言うと、懐から1巻きのスクロールを取り出した。


「いいか、この借りは必ず返させてもらうからな。

 あと、女!

 お前は必ず、オレのモノにしてやるからな!」


 バルガは、スクロールに自分の血を押し当てた。


 すると、スクロールが激しく輝き出す。


 目も眩む光が消えると、もう、バルガの姿は何処にも無かった。


「消えちゃった」


「……逃がしたか」


「いかにも傭兵らしいじゃねーか。クソッ!」


 ファルさんがため息をつき、ゴーズさんが悪態をついた。


「……しかし、何だな?」


「想い人が出来て、良かったじゃないか姫?」


 ニヤニヤしながら、2人がわたしを見てる!?


「ちょっ、冗談じゃないですよ!!」


「まあまあ、照れるなよ姫!」


「照れてないよー!」


「2人とも、遊んでないで生きてる奴を縛るぞ!?」


 あ、あれ?

 わたし、怒られたよ!?


 納得がいかないのだけれど、グスグスしてもいられない。


 気絶している戦士A・Bと魔法使いを拘束したわたしたちは、わたしのポーションで少しだけ傷を癒してから、倉の中へと入った。


 透明マントを貰っちゃおうとか思ったのだけれど、これって、クルーエル家の宝物庫にあった物なので断念。ちぇっ。


 当たり前だけれど、レプスくんもしっかり回復。


 ゴーレムちゃんは、ゴーズさんを守ってちゃんと役目を果たしてくれたみたい。


 ゴーズさんが、〝ありがとうよ戦友〟って言ってたのが印象的だった。


 ニードルスの元で、しっかりメンテナンスしてもらわなくちゃですよ。


 片腕、折れちゃったしね!!

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