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第十三話 知る程に知らない世界

 だいぶヘロヘロ状態ですが、商業区を爆走中! ウロです。お店が閉まっちゃうよ!!


 先ほど採取した薬草。

 まあ、12個ほどですが売りにやって参りました。


 錬金術ギルドか薬師ギルドのどちらかが買ってくれるとの事なので、まずは、良く知ってる錬金術ギルドの方へとやって来ました。


 外観はは変わってなかったけれど、中はずいぶんと変わっててビビッたりしましたがナイショです。


 木製のカウンターはそのままだけれど、丸見えだった作業場は仕切りで見えなくなっている。


 代わりに陳列棚みたいなものがあって、ポーションやら見た事のないアイテムが陳列されている。


「おや、冒険者の方。当ギルドに何用ですかな?」



 カウンターの奥から、緑色のローブを頭からすっぽり被った、少し神経質そうな細身の若い男性が出てきた。


「あの、薬草を買い取って欲しいんですけれど」


「ええ、承りますよ。物を見せて頂けますか?」


 丁寧だけれど、どこか冷たい印象だ。


 何となくステータスチェック!


 名前 ニードルス・スレイル


 種族 エルフ 男

 職業 付与魔術師 Lv10



 器用 10

 敏捷 11

 知力 18

 筋力 9

 HP 33

 MP 41


 スキル


 共通語

 古代語

 エルフ語


 錬金術 Lv15

 鑑定 Lv5

 薬学 Lv2

 裁縫 Lv1


 付与魔法 Lv8

 生活魔法 Lv2


 エルフ!! そして、付与魔術師!!


 エルフは、ゲームだった頃のイマージュ・オンラインで1番人気の種族だった。

 長身・細身・美麗と、デフォルトでキャラメイクしても美化100%な感じになるらしい。


 設定だと、これに長寿があるけれど、ゲームだからあんまり関係なかったかな。

 あと、お約束の長い耳が特徴的ですね。ピコピコ動くかな? 今は見えないけれど。


 そして、付与魔術師。


 マジックアイテムを造り出せる、唯一のジョブですよ。


 武器や防具、装飾品などに属性効果や、魔法そのものを付与したり。


 炎の剣とか。ファイアーボールを撃てる指環とか。売ってもいい感じに高かったかな?


 戦闘では、魔法防御や属性ダメージ軽減などの魔法を駆使する補助系魔法が便利だった印象。だけれど。


 それはそれとして、「スマイルは?」とか言いたくなるくらいブスッとしてますけれどどうでしょう?


 てゆうか、ジョブが錬金術師じゃないし。

 スキルもわたしより低いんですけど!?


「えと、これです」


 わたしは、カウンターの上に薬草を3株置いた。


「……ずいぶん少ないんですね?」


 ぬぬ?


「これで全部ですか?」


「い、いえ。まだありますけど……」


「……3株だけでよろしいんですか?」


 ぬう。

 ニードルスさんは、明らかに不満そうな顔をしてる。


「い、いやあ、いくらになるのかなあって」


 ああ、なんかスゴい嫌そうな顔になったよ。


「1株銀貨2枚です。……ちなみに、薬師ギルドでも値段は同じですよ?」


 むう、そう言うつもりじゃあなかったんだけれどね。


「そ、そうですか。じゃあ、あるだけお願いします」


 そう言いつつ、わたしはさらに3個の薬草を取り出した。


「……全部で金貨1枚ですが、よろしいですか?」


 !?


「えっ? 金貨1枚と銀貨2枚じゃないんですか?」


 わたしが声を上げると、男性は少し驚いた顔をした。


「これは失礼。金貨1枚と銀貨2枚でしたね」


 おにょれ。

 計算出来ないと思って誤魔化そうとしたね!?


 薬草とお金を交換して、ギルドを出る。


「また、お願いしますね?」


 薄ら笑いを浮かべたニードルスが、去り際に言った。


 ふん!!

 次、こんな態度だったらアレだぞ!? ……その、アレだかんな!? 耳とかアレするぞ!?


 なんて事を考えつつも、わたしは走ります!


 次は、薬師ギルド!!


 見た目は、街の薬局みたいな白基調の建物。

 ケ○ちゃんとかはいない。


 実はわたし、薬師ギルドに入るの初めてだったり。


 だって、薬の類いは錬金術でなんとかなったし、他のプレイヤーから買えたし。


 とにかく、入りますよ。


 入ってすぐの、木製のカウンターは錬金術ギルドと同じ感じ。

 ただ、どことなく病院みたいな驚きの白さです。


 その前に、誰もいませんよ?


「あの~、すみませーん!」


「いらっしゃい。お薬の調合ですか?」


 うおっ??

 誰もいないのに声が!?


「ど、どこ?」


「ああ、ごめんなさい。よいしょっ!」


 カウンターの下から、5、6歳くらいの幼女が!!


 椅子の上に乗って、それでも少し背伸びしている。


「ここは、薬師ギルドですよ!」


 綺麗に編み込まれた青い髪の幼女は、ニッコリ微笑んでいる。


 思わず、ステータスを見る。


 名前 ララ・ロフロ・ラコフ


 種族 リリパット 女

 職業 薬師 Lv15



 器用 20

 敏捷 28

 知力 15

 筋力 7

 HP 18

 MP 25


 スキル


 共通語

 古代語


 薬学 Lv11

 鑑定 Lv8

 採取(薬草知識) Lv8


 応急処置 Lv10

 生活魔法 Lv1


 リリパット族!!


 北の山間に住む狩猟種族で、季節毎に集落ごと移動しながら暮らしてる。……だったかな?


 外見はあまり成長せず、見た目は子供みたいだけれど、立派に成人しているのが特徴。合法ナントカ?


 クローズドβ版だった頃にはキャラメイクで選べたらしいけれど、なんか、削除されちゃったんだって聞いた事あったっけ。なんでだろ?


 薬師は、回復系と生産系の中間みたいなジョブ。だと思う。


 魔法職ではなくって、スキルやアイテムでステータス異常を治してくれる。お医者さんみたいな感じ?


 ……実は、わたし、詳しく知らなかったりなんですけれどねえ。

 そもそもジョブだったっけな? みたいな。


「……あのう?」


 はっ!! いかんいかん。

 思わず見とれちゃったよ。うひひ。


「あ、ごめんなさい。薬草を買い取って欲しいんですけれど」


「はい、ありがとうございます。1株銀貨2枚です!」


 値段は同じ。

 わたしは、3株の薬草を取り出した。


「3株でよろしいですか?」


「あ、はい」


「では、銀貨6枚になりますね。ありがとうございました!」


 おや?

 こちらは普通だ。


 ……では。


「あの……」


「はい?」


「薬草を買い取って欲しいんですけれど」


「はい?」


 わたしは、再び薬草を3個取り出した。


「えっ? あ、はい。銀貨6枚です。けど……」


 むう。

 やっぱり、変な空気になっちゃったよ。


「まだお持ちでしたら、1度にお売り頂いても大丈夫ですよ?」


 まあ、そうなりますわなあ。


「あ、これで全部です。すみません!」


 なんだか、スゴい悪い事してる気分になってきた。でも、必要な事なのですよ!


「はい、ありがとうございました!」


 ララさんは、またニッコリして銀貨6枚をくれました。


 そんな感じに、薬師ギルドを出たわたし。


 外は、もうすっかり暗くなってましたが、村と違って街灯があったりするアーバンライフ。ガス灯? 魔法?


 さて、なんでわたしがこんな面倒な事をしたかって言うとお!


『薬草集め』は、何度でも出来る初心者向けのクエスト。


 ゲームだった頃と違って、報酬はかなり減ったけれど、内容的には変化は無いみたい。だけれど。


 このクエスト、1回に必要な薬草の数は3個。


 んで、3個ずつ渡すのが普通だった。


 当然、今はゲームじゃあないのだからこんな微妙な反応されても仕方ないのだけれど。


 けれどぅ。

 やらなけりゃいけない理由がありましてえ。


 その理由は『名声システム』です!


 名声システムとは、数値では表示されない隠しパラメーター。


 クエストをクリアしていく事でポイント(名声値と呼んでた)が蓄積されて、一定量に達すると、今までなかった新しいクエストが現れたり、受けられなかったクエストが受けられる様になったり。


 或いは、NPCの会話が変化して親しくなったり、今まで会う事の出来なかった人物と会える様になったりするのですよ!


 難しいクエストほど、得られる名声値は多いのだけれど、大抵は1度しか出来なかったりする。


 なので、小さい簡単なクエストをいっぱい行うのが普通なのです。なのですがなあ。


「まあ、予想通りだったかなあ」


 そりゃ、そうですね。


 だって、小分けで売ってたら、普通にめんどくさいもん!


 わたしが店員だったら、同じ事を言っただろいし。てゆうか、言うし!


 お1人様1点限りに何度も並ぶ感じ? みたいな。やった事あるけれど。


 ヘタに繰り返すと、逆に『悪名』が付きそうだよ。


 悪名も、名声システムの1つ。


 イマージュ・オンラインでは、プレイヤーキャラが悪い事をした時、悪名が付加されます。


 悪い事にはいろいろありますが、代表的なのが、NPCやプレイヤーキャラからからアイテムを盗んだり、NPCやプレイヤーキャラを殺害したり。


 窃盗は、一応、盗賊系ジョブのスキルにあるのだけれどね。

 まあ、バレなきゃ良かったりする曖昧感たっぷりだったり。

 殺害は、1発でアウトだったかな?


 名声と同じく、悪名が蓄積すると『賞金首』になってしまいます。


 すると、街に入る度に衛兵に攻撃されたりして、街の施設が使い難くなったり。

 または、別のプレイヤーキャラから狙われたりするのです!


 賞金首になった相手には、殺害しても悪名は付かないので、それを利用してお金を稼ぐ方法もあったりですが。……レベル下がったりするけれどね。


 でも、『山賊』とか『海賊』とかのジョブを得るには必要だったりする不具合ですがなあ。


 まあ、そうじゃない、いわゆるハラスメント行為はアカウント停止とかになるので、あくまで「システム的悪い事」の話なのだけれど。


 なんて考えてたら、宿に着きましたのでごはんですよ。お腹空きましたよ。


「お帰りなさい、遅かったね!」


 リノちゃんの、明るい声のお出迎えです。癒されます。


 カウンターの席に座って、白湯を貰う。

 やっと一息つけますよ。


 木札がもう無いので、銀貨2枚で夕食ゲット!


 今夜のメニューは、焼いた鳥のお肉と野菜スープにコーンパンだ。パンはやっぱり堅い。


「薬草集めはどうだったね?」


 デニスさんが、食器を水に浸けながら言う。


「あ、あんまり集まりませんでした」


「そうかい。まあ、薬草集めは、街の女子供もやるからな」


「あたしもやるよ~!」


 デニスさんに合わせて、リノちゃんが木製ジョッキを抱えながら言った。


 むう、そうなのか。


「薬草集めより、腕に自信があるならゴブリン狩りがてら、妖魔の骨でも集めて来たらいい。首は衛兵詰所に、骨は錬金術ギルドが高く買ってくれるだろうよ?」


「ゴブリンですか」


 むう。


 クエスト『森の治安維持活動』かあ。


 衛兵詰所にて受けられるクエストで、これも何度でも受けられる初心者向けの1つ。


 戦士系ジョブにはお馴染みで、わたしも前世では大変お世話になりました。


 ゴブリンを倒すと、妖魔の骨以外に稀に『ゴブリンの首』と言うアイテムを落とす事がある。


 これを衛兵詰所に持って行くと、1つ300G(金貨300枚)で買い取ってくれたりする。


 ただ、なかなか落とさないし落としても300Gだし。


 それならば、妖魔の骨や首よりは落とす『錆びた武器シリーズ』を売った方が儲かったりする。


 名声上げなら、やっぱり薬草の方が早いし精神的にも楽なのよねえ。などと。とてもゲーム的解釈ですが。


 ……それに、たぶん、たぶんだけれど。


 首って、自分で切らなきゃ……でしょ?


 もちろん、骨だってそうでしょ?


 ああ、お食事時に考えたくなかったなあ。


「か、考えてみます」


 さっさと食事を終えて、わたしは部屋に戻った。


 ベッドに転がって、ランタンの灯りを見つめながら考えてみたりした。


 実は、戦闘には解決してない問題があったりですよ。


 それは、剣技を使った時に受けたあの「ダメージ」。


 召喚士のわたしは、本来、剣技なんて使えない。


 ゲームと違って、システム的な制限が無いこの世界では、たぶん、何でも出来るのだろう。


 ただし、鎧が重くて動けなかったみたいに、それなりのペナルティは存在してる。


 記憶と経験から、聖騎士の技を使ったけれど、肉体的には負担だったのかなあ?


 戦闘中で、無我夢中気味になってたからなあ。


 これを解明しないと、近接戦闘がかなり危険になっちゃうのですがどうでしょう?


 ……イロイロ考えたら、頭痛がしてきたので寝ます。


 そしたら、明日、良い考えが浮かぶ気がしたオプテミストなのでした。スヤァ。

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