疑惑と異臭と動物
必殺技でノックアウト
悪い癖で悪戯
自己紹介はネタだらけ
いじってるつもりでも、結局最後はいじられる
人が集まる場所って、どうしてこんなに匂いがキツいんだろう?
香水とか媚薬とか汗とかフェロモンとか。。。
いや、フェロモンと媚薬は分かんないな。うん。
とにかく!匂いが多い!そして臭い!勘弁してくれ!
・・・今は、僕の足元が一番臭いけど・・・
14時15分 御柱駅 西口駅ビル前
足元にオジさんが沈んでいる。
横には女性が立っている。
僕の足元には異臭を放つ液状の何かが池を作っている
さっきまでは女性のお腹の中にあったと思われる
「てっさぁぁぁぁぁ」
男の子の声がした
誰だろう?轍叉の知り合いのようだけど・・・
轍「あースッキりした♪んお?おーもくやじゃ~ん!!」
睦「おーじゃないよ!こんなトコで何出しちゃってんの!?」
轍「必殺技☆」
キリッとドヤ顔で即答する
睦「そっちじゃねぇよ!!胃の内容物だ馬鹿野郎」
轍「なんだそっちか」
少し不機嫌そうな表情になる。ホント喜怒哀楽の激しいヤツだ
睦「何その不満そうな目!?」
この子はツッコミなのかな?大変だろうに・・・
轍「いいもーん!ネコちゃんに褒めてもらうモーン!」
睦「なっ」
轍「ネ・コ・ちゃん♪褒めて褒めて~」
あ、こっちに来るのか・・・どうしようかな
睦「ハッ、そんなダイナミック嘔吐したヤツの相手なんか
誰がしてくれるって言うんだい?」
ん?ん?あ~なるほど!・・・
寝「・・・はぁ、口の周りにまだ付いてるよ?ホラ、拭くからジッとする」
轍「ん」
睦「( ゜д゜)」
【目が点になる】とは、きっとこの事をいうんだろね。
寝「うん。これでよし、と。それじゃ、自分が吐いた液体の処理と
犠牲になったオジさんの移動よろしく」
轍「えー」
寝「はい。文句言わない。ちゃんとできたら褒めてあげよう」
轍「やってまいります!大佐!」
ビシッと敬礼をする。何かちっちゃい子と話してるみたいだなw
寝「よろしく、軍曹」
ボクも敬礼を返す。
テッサは近くの売店で雑巾と水を買うと、そそくさと片付けを始めた
その様子を笑顔で見守るネコと、
イマイチ状況が飲み込めていないモクヤ
いつもあんなにウキウキしたテッサを見たことがない・・・
絵を描いてる時でも、論文を書いてる時でも、
あんなに楽しそうにしている様子なんて。。。この人は、
俺の知らないテッサを知ってるのかな
寝「ハハハごめんごめん、ついイジワルしたくなっちゃうんだよね~
悪い癖だってのは解ってるんだけどね」
睦「え?」
ネコはジッとモクヤの目を見つめる
寝「取らないから安心してね」
答えて欲しかった言葉が返ってきた。背筋に寒気が走る
睦「なっ何言ってるんですか?俺は、てか何を」
寝「胃の中のものは出したけど、アルコールは抜けきらないんだ
だからいつも以上に元気になってるけど、
お酒の副作用みたいなもんだから。僕が居るからってわけじゃない」
俺が考えていたことが、本当は口に出ていて、
この人はそれに答えてくれたんじゃないだろうか?
睦「あの、もしかしなくてもチャットのネコさんですよね?」
寝「君は木に屋根の屋と書いて木屋くんかな?」
睦「はい!それでアレが・・・」
ズザザッ 話している二人の間にテッサが滑り込んできた
轍「はいはーい♪俺がルイです!なんでかって言うと・・・」
寝&睦「鈎壘だもんな」
二人の同時攻撃にテッサはションボリしてしまった。
その変わり様に
モクヤとネコはただ笑うばかりだった
14時25分 御柱駅:東口ライブ会場前
気がつけば大所帯になっていた
ここで誰がいるのか分かりやすく自己紹介しようか
誰が言ったのかは忘れたがそういう事になった
正「じゃあ俺から、えーと高岡正一郎:SHOWです」
最初に手を挙げたのは彼だった
海「ショウの彼女の嶋邨海都でーす」
彰「なんでか知らんが一緒に行くことになったショウの友人の続橋彰だ」
付き添い二人も自己紹介を済ませようとしたが
海「違う」
彰「あ?」
海「自己紹介間違ってるよアキラ!」
彰「あ?どこがちげーってんだよ」
嶋邨海都は何やら納得がいかない様子
海「友人じゃないでしょ?」
彰「あー、はいはい。知人に訂正しといてくれ」
海「違うっての!最後まで聞きなさいよ全く!」
正「どうしたんだよカイト」
彼氏の高岡正一郎ですら戸惑い気味だ
海「アキラはショウちゃんの親友でしょ!?」
・・・・・・・
しばしの沈黙。と言っても、ほんの1,2秒の事だが
この1,2がとても長く感じられたのは、言うまでもない
彰「自己紹介で「親友です」なんて言う奴が居るか!!」
正「スミマセンうちのが空気読めなくて」
海「何よ二人共ー!」
ズルズルと引きずるようにして、
輪中心からの外側へと出される海都
しかし抵抗は激しく、
本気を出していないにせよ彰一人では止めるのが精一杯
彰「こら!暴れんな!おいショウ!手伝え!」
正「あーはいはい、次の人達どうぞー」
促されて次に手を挙げたのは、ニット帽を目深に被った青年
叶「それじゃ俺が。嶋邨と同じクラスの夢橋叶渡:K-ntです
カナトって呼んでください」
「あ、質問いいですか?」そう言ってQ&Aコーナーを設けたのは蒼月
蒼「嶋邨さんと同じ学校なんですか?
ってことは、高岡さんや続橋さんも?」
叶「いや、アキラとショウは駆地高で俺と嶋邨は疾風」
樽「カナトさんと嶋邨先輩は俺等と同じ学校なんだよ」
回答者に不満があったわけでもないのだろうが、
口を挟まずには居られない足迫樽が口を出した
潤「タル、まだカナトさんの自己紹介終わってなんじゃない?」
樽「何言ってんだよウルア、アノ人他に言うこと残ってないだろ?」
叶「タル、本気で言ってるんだとしたらぶっ殺すよ?」
カナトは笑顔で物騒なことを言っている。地味に怖い
樽「冗談ですスミマセン」
潤「半分本気だったでしょ?」
樽「・・・まぁ」
叶「ぶっ殺☆」
カナトは真顔で物騒な事を言っている。声は可愛く作っている。本気で怖い
樽「冗談です!冗談ですから真顔でその声はやめて下さい!!」
瑠「キャハハ!!何か面白い人達だね~」
ソウゲツの右後方に佇む女の子が軽快に笑い出した
蒼「いや・・・(お前にだけは言われたくないだろうな)」
瑠「ん?何か言った?」
蒼「何も言ってない」
心で思っただけなのに何故こうも、微妙にバレるのだろう・・・
ソウゲツは底知れぬ不安を感じた
叶「まぁ、実際他に話すことなんてないけどな!」
樽「ねぇのかよ!!」
ドヤ顔でツッコミをかます樽。それにしても楽しそうだ
叶「んー・・・あ!ネコと知り合い!アドレスも知ってる!」
樽「アドレスなら俺も知ってますよ?」
正「あ、俺もー」
蒼「俺も一応」
叶「( ´,_ゝ`)次の人どうぞ」
この数分で5歳は老けたのではなかろうか?
樽「んじゃ俺らで」
潤「えと、ちょっと言っちゃいましたけど、疾風学院1年の霜月潤曖と」
樽「同じく1年の足迫樽:樽足です」
潤「今日はタルに誘われたので、付いて来ました」
瑠「ねーねー」
樽「なんでしょう?」
瑠「二人は付き合ってんの?」
・・・・・・
またしばしの沈黙、何度も言うがほんの1,2秒で・・・
樽「ちっ違う!!」
瑠「あ、ちょっと動揺してる?」
樽「してないわ!!」
海「ねぇねぇ実際のとこどうなの?ウルアちゃん」
潤「えぇ!?」
叶「凄い驚き方だな」
正「何かありそうだね」
そんな質問攻めムードを、あの男がぶち壊した
彰「どうでもいいんじゃねぇか?
言いたくねぇ、知られたくねぇなら啄いてやるなよ」
樽「アキラさん・・・」
ショウがポンポンとカイトの肩を叩く
正「アキラがこう言ってるんだ。俺達は触れないでおこうよ」
海「・・・そうだね。私達は触れないでおこうか」
樽「何か引っかかる言い方ですね」
蒼「俺達は触れないけど」
叶「ネコは触れるだろうね」
正「まず間違いなく突っ込んでくるね」
蒼「確かに友達を呼ぶのはOKとは言ったけど、
女の子連れてくるとは思ってないだろうからなぁ」
樽「ちょっと待った!それならASHはどうなんだ!?」
皆が蒼月の方をむく、確かに彼も女の子を連れている
蒼「大丈夫。集合場所には連れてかないから」
当たり前だろ?と言い切るソウゲツ
瑠「えぇ!?ヒドっ」
連れて行ってもらえると思い込んでいたルカ
蒼「酷くねぇよ、勝手に付いて来ただけだろお前」
樽「なんだ彼女じゃないのか」
蒼「ぶん殴るぞ?」
ソウゲツはギロリと睨みつける。
背後に鬼か龍が見えてきそうな程殺気が迸っている
樽「ゴメンナサイ」
叶「なんて空気の読めない男なんだろうか」
お手上げ侍のポーズを取るカナト
よくわかっていないのにウルアも真似をしている
樽「カナトさんに言われたくありませんよ!
あとウルアその人の真似しないの!」
ウルアは渋々ポーズをやめた
カナトは心無しか悲しそうだ
海「カナちゃんがイツ空気読めなかったって言うのよ!?」
アキラの拘束を潜り抜け、タルに詰め寄る
オデコとオデコがぶつかりそうな距離
樽「メンドくせぇな!アンタは今関係無いだろ!!?」
カイトを引き剥がし、あの男がタルに一言
彰「まぁ落ち着けよ色男」
樽「アキラさんもちょっと参加してるよね?!」
正「とうとう味方が居なくなったね」
ショウはケラケラと、こ気味良く笑っている
樽「ひでぇや!アンタラひでぇや!!」
腕を振り上げ抗議するタルにルカが「ドンマイ」と声をかけた
蒼「チャットがそのまま現実になったみたいな会話だなw
これはこれで面白いけど」
叶「リア充くんの話は終わったみたいだから、ASH君自己紹介GO」
樽「流石にキレますよ?カナトさん」
叶「めんごめんごー」
てへぺろ、と舌を出してみせる
樽「謝る気ゼロか!この・・・むぐっ」
隣に静かにしていたウルアが手でタルの口を塞ぐ
潤「タルうるさい!」
樽「うぇ~ほへほへいはほ!?(えぇ~俺のせいなの!?)」
潤「いいから!ASHさんの番だから!」
蒼「仲睦まじいねwwえーと、蒼燕の1年 氷鉋蒼月:ASHです」
彰「隣のは?」
興味がないわけではないらしくアキラが尋ねる
瑠「あ、はい。僕は」
蒼「あー自己紹介とかしなくていいから、もうお別れだし」
瑠「え・・・」
蒼「実際、お店は人数で予約してるらしいし、
急に一人増えました。なんて言ったらネコさんに迷惑掛かる」
ソウゲツは被っていたキャップを外し、雪を落として被り直した
海「まぁそうだよね~イレギュラーみたいだし」
カイトは腕組みをしてショウにもたれ掛かる様に甘えている
正「一人ぐらいなんとかなるんじゃ・・・」
カイトの頭を撫でながら難しい顔をしているショウを尻目に
撫でられてる方は気持ちよさそうにしていた
樽「いやぁ、流石に無理じゃないですかね?俺等遅刻してる身だし」
叶「のんきに自己紹介何かしてる暇ないのにね」
彰「誰だよ、「自己紹介しませんか?」って言った奴」
潤「・・・と、とにかく!自己紹介も済んだし待たせてる人の所に急ぎましょう!」
言ってしまった事を後悔してみたがまたごちゃごちゃしそうなので
スルーしようと決めたウルア
蒼「んじゃ行きますか」
瑠「行こう行こう!」
蒼「お前ホントいい加減にしろよ?」
瑠「ん?何が?」
輪から少し外れた位置で、カナトはショウの携帯を耳に当てている
叶「んー電話繋がらないや」
正「誰に掛けてるの?」
彰「世話焼きなコイツの事だからニャンコだっけ?その人じゃないか?」
海「ぶはっ、にゃ・・・にゃんこだって!!きゃははははは」
叶「正解はネコ。でした~」
カナトは笑いをこらえている
そうでもしなければアキラに殴られてしまうからだ
正「可愛い間違いだけど爆笑する程じゃないよね」
彰「カイト・・・テメェぶっ殺」
海「だって・・・その顔で「にゃんこ」とかwww」
ブチン 何かが切れる音がした
きっとアキラの頭で良くないことが起きたのだろう
カイトは笑いながら走り回る
アキラはキレたまま無表情で追いかける
潤「止めなくていいんですか?」
正「どっちを?」
潤「え・・・両方?」
正「ふむ。じゃタル君よろしく」
樽「むへ!?ふひゃふひひほおどびゃあるふぉ!?
(えぇ!?無茶振りにも程があるよ!?)」
正「ウルアちゃん・・・そろそろ手を放してあげたら?」
潤「あぁ!忘れてた」
樽「っはぁ!遅い!気がつくのが遅い!」
潤「ごめんごめん」
樽「ショウさん・・・俺にアノ人達を止めろって?
ハハッそんなの無理に決まって」
ドンッ 後ずさったタルは誰かにぶつかった
「キャッ・・・ゴメンナサイ後ろ見てなくて・・・え?」
樽「いや、俺も見てなかったんで・・・ん?」
「た、たたたたたたタルくん!!?」
幸か不幸か、奇跡は平等に起きるようだ
14時20分 御柱駅 西口駅ビル前
「ノッポ・・・ノッポ・・・」
少女は「ノッポ」を探してる様で、キョロキョロと辺りを見回している
その姿は草むらを警戒しながら進む兎と同じだ
姿も真っ白で正に白い兎・・・あ!毛が抜け落ち・・・
雪をかぶっているだけだった
「ちょっと!逸音!!雪!落としなさいよ!」
兎の後ろを狐がついて回る
着ているスカートには可愛らしい尻尾の様な物が生えている
その尻尾は金色に輝き、歩くたびに僅かながら左右に振れる
逸「いいんちょー、マフラーが尻尾みたいになってるよ?」
金色に輝く尻尾は、持ち主の首から伸びた金色のマフラーで
歩くたびにただ揺れただけだった
柚「あぁ!!買ったばかりなのに・・・」
狐は慌てて尻尾をたぐり寄せるとパンパンとゴミを払う
兎はと言うと、相変わらず「ノッポ」を捜していた
真白に染まったキャスケットを被った兎は
人混みをすり抜けるようにして進んでいく
兎が立ち止まった。
柚「イタタ!!ちょっと、マフラー引っ張らないでよ!」
逸「ノッポ居た~!!」
兎もとい逸音が指差す先には、
柚「あ・・・確かにノッポだ」
ノッポが二人に、普通サイズが一人立っていた。