始まりの遺跡
「ん、これは何だ?」
サイモンの手に何か光るものが見える。何か宝石の一種だろうか。
俺は背負っていたリュックサックを背中から下ろし、すぐさまリュックサックの中から分厚い本を取り出すと、素早くパラパラとめくった。
「おい、見つかったかリグルス。」サイモンは本を覗き込む。
「うん、これは多分小金石の一種だ。その石、色は緑だから価値はそんなないな。」
俺がそう言うとサイモンは顔を顰めた。
「小金石はもうリュックの中にいっぱい入ってるだろ。こんなに要らねえな。」そう言うと、サイモンは小金石を捨てた。
俺、リグルス•アーチノエルはトレジャーハンターをしている。今はとある事情でサーアントニア遺跡というところにサイモンと一緒に来ている。
サイモンは俺と同い年で去年国家資格を取得した。奴は俺が二回落ちた国家資格を僅か一回で合格してみせた。
例外もあるがトレジャーハンターと国家は連結している部分があり、国家資格をとることによって危険な場所へ赴くことへの許可、軍への無条件加入などの様々な特権を得ることが出来る。俺やサイモンが国家資格を欲しがる理由は単純だった。何かというと、
危険な場所で稀少価値の高い財宝を手にいれる。
これが第一の目的だった。いや、トレジャーハンターとしての誇り、理想でもあった。
国家トレジャーハンター法によると、危険度1~危険度2までなら国家資格なしのトレジャーハンターでも行けるということもあり、俺は危険度1のサーアントニア遺跡に来ていた。勿論、来るだけではなく、ある財宝を欲していたからだ。それはサイモンも同じだろう。そしてこれが俺とサイモンのトレジャーハンターとしての初のデビュー戦といえる。準備期間が少し長すぎた。
サイモンが石を投げ捨てた後、俺とサイモンは再び遺跡の壁を崩し始めた。
一瞬の喜びのために、一生の思い出のために。