全ての始まり
先ずはじめにまじかるばななに興味を持ってくださった読者様へ。
基本的にこの作品は、まったりのほほんとしたストーリーです。
サクサク読み進めたい方、展開を早くと望む方には不向きな作品となっておりますのでそういう方にはオススメできない作品となっております。
ほんの少しの癒しと、ヒマをつぶす事を目的としたものです。
ご理解いただける方のみ、ごゆるりと読んでいってください。
俺、安藤一成。
ごく普通の家庭に産まれ、ごく普通の高校2年でもうすぐ二学期を無事に迎えようとしている。
昨日の夜は友達と大騒ぎしたもんだから、休日ぐらいゆっくり寝たい。
これは誰だって思うことだろう。・・・まぁ、まだ夏休み。常に休みだろうと言われてしまうと困るが。
それにしても、そうはさせまいとさっきから妙に甲高い声が聞こえる。
ハッキリしない頭で考えてみるが、どうせ姉ちゃんが電話でもしてるんだろうと眉間に皺を寄せて寝返りを打った。
時たま聞こえてくる小学生の元気な声、目を瞑っていても分かる部屋の明るさに既に日が昇っていることが分かる。
「朝っぱらからどいつもこいつも・・・元気だねぇ」
誰に向けるわけでもなくポツリと小さく嫌味を溢して、おちおち寝てもいられないとため息を吐きうっすらと目を開ける。
広がるのは少し散らかった男の部屋。掃除しろって親に言われてたっけ、とぼんやり思い出しながら
昨日の夜とは明らかに違う“それ”に表情を崩す。『これは何か』そう考える前に思いつくいつも見る“それ”。
散らかり放題の小さめなテーブルの上に主張するように中央に置かれたパフェグラス。
これは恐らく、気に入っていつも下校時に通ってるカフェのものだろう。
「どうしてこれが・・・?俺昨日あの店行ってねぇぞ・・・」
大騒ぎしたとて、酒を飲んだわけでもない。記憶もハッキリ残っているが、立ち寄っていないし
そもそもグラスは持ち帰りできるものではない。
ゆっくりと寝起きの重たい体を起こして、ベッドから身を乗り出し手に取ってみる。
少し重量感のあるグラスの底にはやはり見慣れたカフェの名前が書いてあり、どう考えても分からない事態に首を傾げた。
「やっぱりあそこの・・・だよなぁ。えー、でも知らねぇぞまじで。ちょ、引っ張るなって、今忙し・・・」
ああでもない、こうでもないといくら絞り出しても出ない結論にブツブツと独り言最中、不意に誰かに足をペシペシと叩かれる。
考え事最中にちょっかいをかけられる事が昔から嫌いで、睨みつけるように叩かれたほうを向きかけて思った。
(あれ、俺って今・・・一人だよな?)
言いようもない恐怖感が体中を支配する。部屋に一人、誰かいればこんな狭い部屋の中気付かないはずがない。
じゃぁ今足を叩いたのは誰か?喉を鳴らし唾を飲み込み、ゆっくりと顔をそちらへ向けた。
「やっと気付いてくれた!ご主人、おはようございますデス!」
「・・・・・・・・・はい?」
血まみれの女、顔が半分ない男だとか、そういうグロテスクなものを想像していたが視界に捕らえたのは小さな女の子。
それも幼女ハァハァなんて出来るような“小さな女の子”ではない。手のひら分ほどしかない同い年ぐらいの女の子だ。
満面の笑みを浮かべて足をペシペシと叩いてくるそれは、更に状況把握を悪化させるものでしかないだろう。
まさに思考停止――、口をついて出てきた言葉は短いものでそれを聞いた彼女はキョトンとした表情で首を傾げていた。
「いや、誰?・・・いやいやいやいやいや、マジで誰!?っていうかそもそも人間!?はぁ!?主人って何だよ!
首傾げても可愛くねぇし!いや可愛いけど!可愛いけどさ!!誰!!!!」
頭の中はパンク寸前で、もう自分が何を言っているのかさえ分からず声を荒げて、
その声の大きさにビクリと体を強張らせた彼女に一気に捲くし立てる。
全ての答えは彼女の口からしか聞けないと直感的に思い、じっと小さな彼女を見つめた。
とうの彼女は最初こそ驚いた表情をしていたものの、直ぐにまた満面の笑みを顔に貼り付けて
チョコレート色のワンピースをふわりと広げて見せる。
「名前はまだないんデス!初めまして、ご主人!ご主人が私を愛してくれたから、やって来ました。だから私のご主人デス!
私、バナナチョコレートパフェの妖精なんデス。えへへ」
「・・・えーっと。夢?俺まだ寝てる?」
彼女の言葉に信じられる要素が全くない。どうしよう、聞いてもわけわかめ。
ぐるぐる回る思考で思いつくのは自分がまだ寝ていて、これは夢だということ。
しかし妙にリアルで、5感があることから夢だという考えはすぐに排除される。
そうすると彼女の言葉を全て信じなくてはならなくなってしまうわけだが・・・
だって14.5センチの女の子なんて今まで生きてきて聞いたこともないし見たこともないんだから。
「ご主人、私に名前くだサイ!名前!可愛いのがいい!」
唸ってる横で能天気にも自分の名前を要求する彼女にため息をついて深く考えることが馬鹿らしく感じる。
人差し指の腹で彼女の頭を撫でてやり嬉しそうな顔を見せるそんな姿さえ愛しく思えてしまうのは
もう毒されているからなのかもしれない。言うなればハムスターでも飼った時のような、小動物を見る感覚に近い。
「・・・・ナナ。俺はそう呼ぶ。気に入らないなら、自分で好きにつけな」
単純な名前の方が自分好み。バナナパフェだから、ナナ。きっと友達が聞いたら罵声されるだろうけど
彼女はぱぁっと目を輝かせて、本当面白いぐらいに表情から伝わってくる気持ちに
単純に嬉しいのと、なんだかくすぐったいような恥ずかしさが襲ってきて、寝起きでボサボサの頭を掻く。
「ナナ!私、ナナ!ふふ、ご主人、初めまして!私ナナっていいますデス!」
ワンピースの端をちょんとつまんでぐるり回って見せ、愛らしくお辞儀をするナナ。
「俺、一成。なんて呼んでくれても構わねぇけどご主人は勘弁。」
「じゃあ、じゃあ・・・えっと、ナリくん!」
これが、ナナとの出会い。
そして一成とナナの可笑しな生活の始まりである。
とうとう始りました。
さてさて、この二人はこの後どんな風に進んでいくのでしょうかね。




