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episode4


桜姫と別れて家に帰ると担任から電話がかかってきていた。

いつもの事だが親はいない。

自分の部屋に入り、椅子に腰掛ける。

机の上にはきれいに教科書が並んでいる。

だがそれも見てくれだけだ。

開くと中は俺を罵倒する言葉が活字を遮って目に飛び込んでくる。

そう、これが俺のサボリの理由だ。


原因は些細な事だった。

クラスのリーダー的存在の不良の機嫌を損ねた、それだけだ。


俺は机に肘をつきため息をついた。

明日はテストだ。

イジメをするような卑怯者達に負けて留年するのはプライドが許さない。

でもプライドを上回る恐怖が頭も体も支配している。

親は仕事でなかなか家に帰ってこないし、担任は何の助けにもなってくれなかった。

「どうすればいいんだよ........っ!!」

ふいに桜姫に会いたくなってきた。


桜姫は俺を見てキョトンとしている。

それもそうだろう。

俺達はついさっき別れたばかりなのだから。

それに走ってきたせいで制服も乱れまくっている。

「どうしたのじゃ春、そんなに息をきらせて。」

桜姫が俺の顔を覗き込んでいる。

俺は桜姫の顔を見て言った。

「桜姫に会いたかったんだよ。」

桜姫は顔を紅潮させた。


桜姫を膝に座らせ、ほっと息をつく。

座らせている感覚はないのだが妙に落ち着く。

桜姫はさっきからずっと不思議そうにしている。

「何かあったのか春。」

桜姫にはイジメの事は言ったって分からないだろう。

俺は黙っている事にした。


どれほどの時間そうしていたのだろうか。

気が付くと辺りはかなり暗くなっていた。

流石に帰らないとやばい。

「そろそろ帰るよ桜姫。」

膝から下ろすと桜姫は言った。

「嫌な事があればいつでもわらわに申せ。」

そしてにっこり笑った。

俺は黙って頷いた。

桜姫に会って不思議と気持ちが楽になった。

明日は学校に行こうと思う。


自分の事で頭がいっぱいになっていた俺は別れ際、桜姫がふと悲しげな表情を浮かべた事に気付かなかった










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