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幕章その弐 ヴァイレンの一日

 ゴールデンウィーク企画最終日です!!

 それはそうと、ヴァイレンって誰? となられたかたは、第二十四章辺りで彼が登場するので、ふーんと思って触れてあげてください。作者も少し忘れていたのは内緒です。例えば、名前とか。

 今回はそのヴァイレンの、グリモアとセラゼラが死闘を繰り広げるほんの数日前の一日を切り取ったエピソードとなっております。

 では、お楽しみください。

 幕章その弐 ヴァイレンの一日




 十二騎士ヴァイレン・フリードは朝目が覚めると、いつも他の十二騎士に先駆け、修練場という王宮の中にある広い空間を利用した施設で汗を流す。

 空気は独特の湿り気を帯び、鼻腔に僅かな塩と弱酸性の臭気が入り込む。別に女人禁制ということはないが、この施設には自然、肉体の行使によるぶつかり合いを主とする者たちが集まるので、この空間はむしろヴァイレンにとって慣れ親しみやすい場所であった。

 ならされた土の地面は裸足になるとひやりと心地よく、また太陽の光の温熱で昼間は温かい。今は早朝なので地面は程よい温度だが、残念なことにヴァイレンは普通に靴を履いていた。

 背負われた西洋剣は無骨なつくりで、ともすれば貴族の持っているような飾り気の多い剣のものとは用途からして別であるような印象を受ける。

 背中からはずし、右手だけで構える。

 二度、十字に素振りをし、斜め、横、下から上への切り上げ、フォームがくずれないように意識しながらその全てを右手でこなした。

 それが終わると、今度は左手に持ち替え、鏡写で一連の動作を繰り返す。

「俺は、強くなるんさー。もっと、もっとさー」

 そう、彼は自分がこのままの自分でいることを望んでいなかった。

 いつの間にか自分を追い越したグリモア。彼をライバル視するグレン。彼らがこのまま自分を置き去りに、もっと高い世界へ行ってしまうことは、今のヴァイレンにとってとてつもなく悲しいことのように思われた。

 剣を振り終わると、次は体幹を鍛えるために床に寝転がり、体をひねり始める。これが終わると拳立て、指立ての二本立てに、腹筋などの基礎的な筋トレをしてこの場はこれで終了だ。彼の日課はここまでのメニューをこなしてからでないと朝食に入らないことから、彼は少し自分に対し厳しく出来る人間であることはいうまでもないことだろうか。




 彼は連続魔法の使い手で、一般市民から一目置かれている。しかし実際は七賢者以上の位階の者には使えないものがいないほどで、上を目指す身としては使えて当然くらいの技術であることが実際のところだった。

 今ヴァイレンの眼前には轟々(ごうごう)と流れ落ちる滝があり、時折水しぶきの霧がこちらまで届き、清らかに澄んだ水の匂いまで感じることが出来た。

 この滝の向かい側には大きな壁がそびえ、真上の鮮やかな空を鳥が飛んでいるところまで見なければ見えないほど高く、緑をはぐくむその頂上から見下ろす形であれば切り立った崖に見える仕様になっている。

 この崖の名はガイアクリフ。神かそれと同等の存在が、その御手で直接作ったのではないかという、自然の中に存在する圧倒的芸術度の高さからそういう憶測が飛び交っている。

 この崖は土色の脆そうな色合いの反面、ヴァイレンは鋼と同等の硬度ではないかと思っていた。そのくらい硬く、削ることすら難しいのである。

 ヴァイレンはこの壁を、連続魔法と剣の付加魔法を同時に修行する絶好の場所にしていた。王宮から指令のない日は大抵この場所で、己の新たな力の開拓に励む。連続魔法もここで養われたものだった。

 かくしてこの場所で、今まで出会った誰より強大な存在と出会うことになるのだが、その時が訪れるのはいつになるかまだ分からない。

 しかしいつか出会うことになるのは間違いない。彼がこの壁を5メートル削りきったときに、その存在と出会うことになるのだから。

 ヴァイレンは時間を忘れ、己に磨きをかけ続ける。

 後にこの日グリモアやルナが離れ離れになったことを知り、ますます己自身を高めることに精を出した。

 それはグリモアが無事なことを疑わず、また心配しているうちにどんどん突き放されていくことを恐れたからだ。

 結局この日けずれた壁の厚さ約9cm。辺りが完全に暗くなったので、ヴァイレンはこの場を去っていった。

 ヴァイレンとはこういう人物なのだ。自分に対して極端なまでに厳しく、正義を追い求める。自分の行動に対し一切の疑いを抱かず進む強み。

 彼が花開くときはもしかしたら、もうすぐなのかもしれなかった。





 ゴールデンウィーク企画、これにて終了です!!

 短い間でしたが、お付き合いいただきありがとうございます。

 またいつものように書き溜めていないので、申し訳ないですが次の投稿がいつになるかは作者にも分かりません(汗)。

 次にまたお世話になるときは、よろしくお願いします。

 ここまでお読みくださった読者の皆様に重ねて御礼を申し上げます。

 ではまた会う日まで……。

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