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第三十八章 闇を巡る戦い

 ゴールデンウィーク復活記念!

 今日は二本立てです。

 圧倒的に強い『英雄』のグリモアに、少しずつ追いすがっていくグリモア。この辺からグリモアの正体が分かり始めると、書いていていつも思います。いつごろに分かるのか、もしかしたら読者様次第ですので、よければ今後もお読みください。

 第三十八章 闇を巡る戦い




 闇。

 最初に浮かぶ俺にとっての闇は、過去の影である。

 失われた肉親、ぼろぼろの生活、他人に見える邪悪さ、それに対する圧倒的嫌悪。

 また、目覚める前の死闘での仲間の事故。そう、まずは目の前のこいつを……。

「お前のお遊びもここまでにしてやる。覚悟はいいよな?」

「イイぜ。不意打ちじゃねェから、闇を手にしたばかりのオ前には負けねエよ」

 刹那を刻み、やつの目の前へ疾駆し、一気に対面に躍り出た俺はそのまま剣を振りぬく。刀身が闇で補填されたツヴァイハンダーだ。

 そう、闇を纏ってバトルを続けている。もはや闇を使うとか、ためらうとか、その手の疑問に懊悩している場面は過ぎ去っていた。この世界に来てから、生きることや生かすこと、自分を許せないほどのものじゃない限りためらわないという決意を固めたのだ。

 驚くほど軽い切っ先が、信じがたいほど重い一撃となってヤツの蒼色の名剣に喰らいつく。

「オラァッ!!」

 セラゼラの裂帛れっぱくの覇気とともに刀身がぶつかり、魔力の気流が蒼色の刀身に流れ込む。左の血色の名剣にも確実にエネルギーが漲り始めていることも感じ取れる。

 俺はツヴァイハンダーを蒼剣に交わしながら腰を落とし、重心が半歩下げた後ろ足に乗ったところで腰をひねり弧を描く回転切りを首に目掛け全力で振りぬく。

 この一撃を、セラゼラは真紅の刀身で受け止め、隙のできた俺の胴へ青空のように澄んだ刀身を滑り込ませようとする。

 しかし、ここまでは予想がついたことだ。打てば守り、隙を突く。二刀流はこれかからめ手か、あるいは他の選択肢かで顕著になりやすいはずだ。

血色の刀身にツヴァイハンダーが接触するタイミングで、闇を広げセラゼラの目前へ拡散させる。

「やっぱ勘がイイなア。そうでなくちゃアつまらねエ」

 ヤツが喋りきるまでのわずかな時間。その刹那的瞬間にツヴァイハンダーの切っ先の闇が切り取られる。あと数瞬で拡散した闇がやつのほほくらいはかすめる予定だったのにだ。

 こいつはグリモアであり、何らかの人を超越するもので今の攻撃を防いだのだろう。可視か不可視かいずれにせよ目で追うことは困難だろう。

 戦闘が継続するにつれ、いつもよりも感覚が鋭敏になり、頭が冷えていくのを感じながら、次の一手を入れるため、右手に闇をこめ、ツヴァイハンダーから手を放し紅の刀身をはじき返す。

 動作が完了した後、両腕を振り上げ、ツヴァイハンダーの柄を握りなおし、上段から一刀で切り下ろす。続く手にはヤツの双剣ががちりと闇であるはずのツヴァイハンダーとかみ合わせるように交差し。

 その次の手で、信じられないことが起こる。

 ツヴァイハンダーに絡んでいた闇がほどけてほつれ、紅と蒼の双剣に闇が吸い込まれていく。その過程はまるで、チューブから血を抜くように引き出されているようだ。

 双剣の一閃。

放たれた剣閃が頬をかすめて背後の樹木を伐採する。振りぬかれた双剣には既に闇はない。

「ッ! 俺のだろ、それは」

「俺の【グリモア】としての能力、『スキル』。他人の魔法を一部吸収することができる。そう、グリモアってのはなア、人より優れた存在なんだよォ!」

 観察しているうちに間合いを詰められていた。双剣の腹が――恐らくわざと刃のない部分で――みぞおち付近を抉るように食い込む。

「がっ……ぐう。けほ、スキル……? っそれは魔法以外の能力のことか?」

「そウだ。血のにじむような鍛錬の後に人が手にする大イなる技術、スキル」

 セラゼラが二刀をまぶしげにかざす。そして、更にこう続けた。

「オ前の闇を扱うそれも、『スキル』に近づきつつある。だからこそ、ここでオ前にそれを習得させるのだ。

言っただろう? 俺はオ前を気に入った。心行くまで楽しませてくれよオ?」

 再びの剣戟。再度の打ち合い。

 気の遠くなるような剣閃が終わる頃、疲弊した俺はついに意識を失い、未だ仲間を取り戻しにいけないでいたのだった。




 剣の打ち合いで、グリモアは少しづつ疲弊していった。このままで本当に目的をなすことが出来るのか……?

 覚えていたら、更新前にツイッターでも報告しますが、次回更新は5月4日15時ごろを予定しています。

 追記:更新予定は10時でした。予約掲載時による作者の手違いで情報が錯綜してしまったことをお詫び申し上げます。

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