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第三十六章 絶望への堕落

 いよいよ今回の大詰め、グリモアとのバトルです。

 仲間は傷つき地に伏すも、主人公だけは諦めず、挑み続ける。最早勝てはせず、ただ無意味な闘争本能と理解しているにもかかわらず、剣を振るい続け、魔法を放ち続けた。

 このまま主人公はどうなってしまうのか……?

 それではお楽しみください。

 第三十六章 絶望への堕落




 仲間がほぼ全滅した。俺一人残されるこの感覚は、確かに初めてではなかったが、苦すぎて本当に絶望する。

 俺が無茶でみんなを。あてになど到底出来ない勘で、我がままで、連れて来た結果がこの様だった。

「ふざけるな……何が『楽しめた』だよ。こんなことをして、一体何になるって言うんだよ!!」

「それはただ、新参のグリモアが気になったから様子を見に来ただけだ。見込みがアったらアドヴァイスくらいやってもよかったがな。今のオ前はまだ我様の入る境地に至っていない。だがまあ、楽しめはした。それだけの話だ」

 少し間を空けて俺の愚問に答える。その瞳は、だが。もう既に俺を捉えていないようだった。

 俺を突き動かす激情が、嘲笑って、真実の告発をしてくる。俺の本質は不安定で、脆く、でもそれ以上に。

 世界を棄てたあの日から、自分は何も変われていなかった。

 痛みに弱く、理不尽に嘆き、少し希望がちらつけばあっけなく目標が自壊する、デクの自律人形ロボット

 変わるのでは無かったのか。変われたんじゃなかったのか。

 世界を変えれば自分が変われると、根拠も無く信じたが。

 結局は俺の思い違いだった。

 意識を必死で想像に働かせる。

 集中した意識を回復系統の魔法にあて、イメージでかたどる。ルナのお手本の元、見よう見まねでも成功して、内側からまた激情を押さえ込むことが出来た。

「っ!」

 そのまま距離をつめ、ツヴァイハンダーを振るう。

 突き、乱舞乱閃、回転斬り、振り上げ、踏み込み切り、逆手の振り上げ。

 一歩踏み込むごとに自分の一線を越えつつあるポテンシャルに、しかし目前の人物とのギャップが見えすらしない。あせりの中で打ち込んだ無防備な剣戟けんげきの行方は最早追うまでもなく。全て防がれたのだった。

「そらっ」

 バギン、ピシピシピシ……バアァァァァン

「そんな、まさか!」

 最後の一太刀を振り下ろしたその時。状況は最悪に落ちた。

「俺のツヴァイハンダーが!!」

 柄の上から、ひび割れた破片が食い込むようにひっついているだけで、最早刀身など皆無に等しい。衝撃的な壊され方だった。強度も高く、軽い不思議な鉱石を加工してあって、その恩恵はドラゴンをも倒してきて重々知っていたのに。

 いっそむごたらしさを覚えるほどに、壊れてしまった。

「あ、ああ……」

 何も考えたくなくなる。

 武器も無いのに、戦えるはずもなくなった、アンニュイなネガティブの思考で頭が真っ白に染められる。

 ギイギリギイギリギイ

 カラダのウチガワから軋む嘆きの旋律は、思考の白さと裏腹に、純酷で漆黒色を奏でていた。

 その黒さこそが、俺の本心だったのだろうか?

 それを理解できないまま、絶望が心をよどんだドロドロで埋め尽くしたとき。

 俺は闇の中へ堕ちて行く感覚を噛みしめながら、意識をぱっと放り投げた。




 ◇ ◇ ◇




 ほんの少し前に異世界から召喚された、強者の目の前にいるグリモア。強者のグリモアのほうは興が冷めたとばかりに振り返り、背を向けたその時。

 目の前の哀れな少年から、ほとばしる【闇】を感じ取った。

 禍々しく、不器用に形成されていくその瘴気は少年を包み込んで、やがて。

「――ッ!」

 呻き声のような、怨嗟えんさの名残のような、注意しなければ聞き取れない、音色とは程遠い軋みを聞き取ったとき。着古したローブをまとっているほうのグリモアは間合いをザックリ詰められ、一太刀受けていた。

「なアっ!?」

 ズバシュ

 咄嗟に反応して体をずらしたが、肩から胸、右の脇にかけて斬られた。速い。疾風迅雷というより、目の前に存在が転移したかのような動きのように感じた。

 先ほどツヴァイハンダーは破壊したのに、刀身を復元するように闇が覆いかぶさり、剣として奇跡的に機能している。

「バカな、オ前はもウ戦ウ意志すら無イはずだ!?」

「――ウゥ」

 返事の代わりのように、低いうなり声を漏らす、まだ発展途上のグリモア。

「へっ、気に入ったぜ! オ前は我様が鍛えてやることにする。心から光栄に思エよ! 新参者ア!!」

 万雷の紫電がほとばしり、獄炎の灼熱が大地をなめて焦がし、溶かす。

 闇色のブリザードが土壁にぶつかり、しかし威力は衰えず穿って突き抜ける。

 混沌とした魔法の応酬がしばしば続いた後。

 傷だらけの破壊者のグリモア一人が立っていて、他は地に倒れ伏す人がら達とドラゴンの骸という構図が出来上がる。

 破壊者のグリモアは名もなきグリモアを担いでから、闇を纏ってそのまま消えた。

 その後また二つの闇が、気絶した者たちを運んでいって。

 そうして戦いは終わり、誰もいなくなったのだ。




 散り散りで連れ去られた主人公たち。闇うごめく存在の目的も分からないまま、主人公は仲間を失った。

 ルナ、グレン、リン。三人共にまた会える日を夢見て、グリモアは闇の中、決意を宿らせていく。

 この後の行方はどうなるのか……?

 今回の書き溜め分はこれでお終いです。

 最後のほうは少し急ぎ足だったり、直すところもいくつかあるかと思いますが、ひとまずこれでまたしばしのお別れとなると思います。

 次にまたお会い出来るその日まで、みなさまどうかお元気で。それでは。




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