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第三十三章 強者への前哨戦準備

 日ごとに強くなっていく主人公・グリモアはヴァイレンに勝利し、クオラルフロスト・ドラゴン討伐に向かう。

 ヴァイエルと同等かそれ以上の強さを持つ、一筋縄ではいかないドラゴンを探す道中、ここではまだ団欒を楽しんでいたのだが……?

 それではお楽しみください。

 第三十三章 強者への前哨戦準備




 ヴァイレンに勝利した俺は、ルナたちに簡潔に伝えた後、グリモアに会いに行くために竜の洞窟にもぐっている。目的地はこの奥、ドラゴンパレスだ。

「本当にこの洞窟にいるのかしらねー?」

「勘だからな。違えば他を当たるさ」

「思えばそんな動機でヴァイレンも倒したんだよな、グリモア……」

 そういやそうか。かなり青春していたが、動機は純粋か不純だか分からないものなんだよな。

「もういいわ、底知れずなのはこれから会うだろうドラゴンや、グリモア……紛らわしいけど、こっちは探してるほうね。そういうののほうが脅威なんだから」

「……そうだな。ある意味、こっからのスタートだ」

 着付け薬として持ってきている、ハッカとポーションを混ぜた液体、それを少し口に含む。

 ハッカのツン――とした独特の清涼感と、甘苦い味が口を滑り、のどを駆け降りていき、意識が心もち研ぎ澄まされた。臨戦準備オーケーだ。

 洞窟の奥まで歩き、さあ探そうという、その時。低く小さい地鳴りがなった。




「ビンゴか?」

「恐らく」

「風が吹いてきてねえ?」

「向こうのほうが寒いから、空気が流れてきてるのですわ」

 肌をぬけるような、おぼつかない冷気。しかし、それは確実に俺たちの体に浸透して体温を僅かずつだが、下げていっている。

 洞窟の気温が下がることが、リンのつぶやきで分かるように、さっきよりもやはり涼しく冷涼なのだ。

「さっきの地鳴りからして、【ドラゴン】はほぼ間違いなくいると思う」

「ですわね。それ以外にも目に見えて分かるように寒くなってきてるし、ぶれないはず」

「で、繰り返すのは何故かっていうと」

 数歩進んでから、確認するように言う。

「あまりにも気温が違いすぎるから」

 俺の体力はまだまだあるが、後二百メートルも過ぎれば歯の根が合わなくなるほど冷え込むだろう気温差だ。

 と、ここでみんなに質問。

「唐突だけど、グレンは朝何食べてる?」

「パン」

 会話終了。『寒いんだから協力しようぜ』を肘と目で伝える。

「他には?」

 会話再開。

「いつも違うけど、シリアルかスープが吸い物で、オーレとか、ジュースが大抵ついてくる――」

 ちなみに、食文化だけに限らず、生活水準は大体もといた世界の数割り増しプラスアルファ(魔法などの決定的な違い)であり、名前も同じ。たまに違ったり、もといた世界になかったりで違うので、本当に最初から馴染みやすかった。それで、ここでのオーレとは~~オ・レの飲み物である。オ・レとオーレの違い。

「――宿のメニューが頼みたい」

「え? 現実は?」

「だから、パンだけだって。何か朝は食べる気にならない。パンと水だけ」

 素朴を通り超えて、質素だった。金に不備はないはずなので、多分言葉どおりに朝が弱いのだろう。

 女子陣も「あー、何か分かるわ」とか、「だいえっとのつもりでもないですが、朝は食べる気になりませんわ」やら、口々に批評していた。

 ということで、ルナとリンにも聞いておく。賛同しているあたり望んでいるような結果になるとは思えなかったが、一応だ。

「ルナは朝パン派? ご飯派?」

「朝はサラダだけしか食べないわよ」

 ですよねー。主食とかむしろ食べないですよねー。

「リンは?」

「健康のために木を齧っておりますん」

「え? マジ?」

「嘘」

 何で嘘つくんだよ。肌に刺さる冷気が増しただろ。

「本当は?」

「がっつりステーキ」

「さっきダイエットがうんぬん言ってましたよねぇ!?」

「最後まで聞きまし。ガッツリステーキというお店の隣のジュースバーで飲んでるのよ」

「俺の知ってるジュースバー、鍛冶屋の隣にあった気がするけど?」

「その鍛冶屋の名前まで知ってる? 『ガッツリステーキ』という店舗なんですわよ」

「オッケーもう信じない」

 ちなみに鍛冶屋の名前は『シアンマテリアル』で、お隣はアクセサリー屋とパン屋だ。誘導尋問にかかった挙句あげくジュースバーの隣の店を間違えるあたり、そのくだりからもう既にうそくさい。

「話変わるんだけどさ。みんなは本物のクオラルフロスト・ドラゴンを見たことある?」

「ない」

「以下同文か」

「はしょるなっつの。いや、ないけどさあ。決め付けるな」

 オッケー、今のは俺が悪かった。情状酌量の余地を残してくれ。

「決め付けじゃなくてだな、よく考えたら別に聞く必要も無いかなって思い直したんだよ」

「何でだ?」

 グレンの『何でだ?』と同時に白いもやが一緒に口から出てきた。さっきより明らかに寒い証拠だ。やっぱり聞くまでもないなあ。

「アイス・ドラゴンの時と同じ条件にしたほうが、デジャヴを感じやすいだろ?」

「……それで? どうなるんだ?」

 めずらしく言葉を深読みしてくるグレン。何でそう徒労に熱意を注ぐのかね。まあそれが美徳かもしれないけれど。

「ただの勘だけどさ、クエストを選んだときみたいに、何かが伝えてくるわけだ。ちょっと今、それに従ってる」

「それ、本気で言ってますのん?」

 リンの寒そうなふるえる声質で疑問が伝えられる。その後ルナに体温を保持する魔法をかけられていた。俺たちも同じようにかけてもらう。

「あくまで感覚だからな。でも、そう。そろそろだってことが分かるくらいには、鮮明だな」

「そろそろ……?」

 それが誰のつぶやきだったか。

 狙いに沿うように――

 ゴオオオオオオォォォォォォ

 轟く竜の咆哮が、洞窟いっぱいに、爆発のように広まったのだ。




 アイス・ドラゴンよりまだ圧倒するほど強大なクオラルフロスト・ドラゴン。炎や電気といった弱点の属性に当たる魔法も、並みの威力では太刀打ちできないのがAランクの真骨頂。

 眼光ですら並みの者だと萎縮するほどのオーラを纏い、今までとの戦いとは一線を喫しているが、果たして……?

 次回更新は明日20時予定です。

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