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第二十九章 不思議な植物狩りの再開

 ドジッ娘の線が浮いてきたリンネルさん。しかしパーティーは不具合なく植物をなぎ払い得体の知れない材料を袋に詰める、そんな感じです。

 短編を書いたので、よろしければそちらのほうも見ていただきたいです。皆様のアクセスを、ずっと待っています(切実)。

 第二十九章 不思議な植物狩りの再開




 こそっと近づき、ツヴァイハンダーで一閃。

「グギャアァァ」

 生理的嫌悪感を感じさせる悲鳴を聞き流しながら、続々と切り結ぶ。止まれば文字通りの死、だ。これで危険度は低いとは、よく言ったものだよグレン君。

「ふう。こっちは狩れたかな」

 動けなくなったボムパサランたちのツルと葉っぱを回収して、用意した皮袋に入れる。 そこから液体を小瓶に掬ったが、見た目に反した甘い紅茶の匂いがしたときは嗅覚を疑ったものだ。

「他のやつらの様子をみるか」

 軽い気持ちで周りを見て回る事に。軽い小休止のつもりだ。




 むせ返るほどに甘い紅茶の香りが辺りに充満している。この一帯至る所に樹木があるからか、風通しが悪く、湿気が肌に張り付いてくる感触がひどく不愉快だ。

「おつかれー、グレン。そっちはどうだった?」

「へっ、まあまあ狩れたぜ。そっちは?」

「同じく。じゃあルナのところまで行くか」

「おっと、その前に。何体だ? 何体狩った?」

 またしょうもないことを。あと、そのボムパサランの根っこみたいなのは頼まれた部位じゃないから、後で捨ててもらうからな。

「十八くらいだ。ほれ、行くぞ」

「ぐああ、また負けた。俺は十五しか狩れてないんだな……」

 七体ぐらい下にサバ読んだんだから、勝てよ。

 理不尽な勝負に、しかし何の感想も寄せず、次はルナの場所へ。




「グ、ギャギャギャギャギャ」

 搾り出すような、残酷さを音に宿した悲鳴を聞き取ったときには、回れ右しようかと思った。

「ルナさん、そのへんで」

「ん、そうね」

 ドサッと乱暴に解放して、微笑みかけてくる。直視できないです。

「貸しを返してただけだし、気にすることないわよ」

 あ、そうですかいや分かってましたよだから顔をこの手巾で拭ってください。言葉にならなかったので無言で渡して、目をそらしながらルナへ同意を示す。

「あら、信じてないなら続きをしましょうか?」

「いや、いいです」

 SAN値を底辺に追いやりながら、新規加入のリンの場所へ。




 ダダッダッダッ

「何でさっきと似た状況なんですかねえ!?」

「それは、ほら。あれよ。亀の味噌汁? ってヤツよ」

「神・のみ・ぞ・知るだよ!」

 スッポンの汁物を一度だけ前の世界で食べたことのある俺に対しての、嫌がらせか。美味しかったけど。

「まあ単純に、魅了の魔法に頼りすぎてただけですわ。反省もしてまし」

 だから、何で非を認めるのか。肝心な所でいつも言及できなくなるじゃないか。

 そうこうして走っているうちに数が減ってきたので、風を纏わせたツヴァイハンダーで反撃。

「それに、話しかけてきたのは貴方ですわ、グレン」

「責任転嫁はよくないぜ。ともかく、一旦退かなきゃな」

 さっきと同じ要領に戻ったが、クエスト事態は達成しているので、後は直接依頼人に会いに行くだけだ。




「そういやさ、何でグレンには魅了の魔法が聞かないんだろうな?」

 さっきの魅了うんぬんで思い出したので、ふと口に出した。

「あたくしも気になりますわ。このまま迷宮入りされると不愉快で不愉快で」

「ああん? 言ったような気がするんだが」

「寝言はノーカウントな?」

 つい二時間――多分そのくらいだと思う――前まで寝てたんだから、言われてたとしたらかなり以前ということになるが、どっちにしても聞いてないはず。

「俺の家族にな? 滅茶苦茶強い魅了の魔法を習得した姉貴がいるんだよ。同姓だろうが異性だろうが関係なく惹きつける強烈なヤツだ。

 その姉貴が面白半分にかけてきやがると、血が繋がっててもドキッとくらいはしてたんだが、いつの間にか慣れてきてたし、まあ耐性がついてるんだろうな」

「へえ」

 血の繋がった姉がいたこと事態初耳だが、そういうこともあるもんか、と納得した。

 そこでふと、『私もいつか教えてもらわないとですわ……』と物騒なことをつぶやいているリンの横で、少し呆けたというか、放心のような心ここにあらずといった表情のルナが目に留まった。

「ルナ? 大丈夫か?」

「――っ! ええ、大丈夫よ」

 一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつもどおりに戻った。

 気にしないフリでもよかったが、反応するキーワードに気をつけておきたかったので、一旦推理をしておく。

 家族・滅茶苦茶・姉・惹きつける・強烈。

 これのどれかだろうかと思う。我ながら不思議な記憶力だ。

 『強烈』はただの単語なので除外してもよかったが、他の単語と結びつけると意味が強調されるので、一応ピックアップしておく。

 するとこの単語の中に彼女の核をつく何かが含まれることになるが、今無用な問いかけをするのは愚の骨頂というやつだろうと考え、捨て置く。

「じゃあ、依頼主に会いに行くか」

 思ったより多くなったボムパサランのツルや茎で服に紅茶のにおいがついたが、洗えば落ちるだろうかと考えながら歩き出す。




 まだ書き溜めの分があるので、謎の材料集めの話は近日中にアップできそうです。区切りがついた後、またお会いしましょう。


 2013年12月7日 改稿

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