第二十三章 大会・白熱
推敲・添削しました。
第二十三章 大会・白熱
「正々堂々戦いましょうね」
相手リーダーが声をかけてきたのでこちらも返す。
「ああ。よろしくな」
…………。
「それでは試合、始め!」
早速、意識を集中する。試したいことがあったから。
「“炎”と“土”よ!」
火の玉が複数飛んでいき、地面から岩が突き出した!
「やっぱり“連続”って言うくらいだから、こんな風にするのかなって思っていたけど……!」
ガタッ
思わず片膝を着いてしまった。やはり、リスクが大きい。魔力をごっそり持っていかれる。
「グリモア!」
ルナが叫ぶ。駄目だ! 今余所見をしたら――
「へっ、もらった!――」
「させるかよォ!」
相手のメイスに殴られそうな所でディノが相手を突き飛ばす。
「おら!」
突き飛ばされてよろけた相手は、すかさずグレンが殴って気絶させる。
「助かったわ、二人とも」
「だから余所見すんなって――」
パキパキパキ
「悪いな、待たせた」
「全くよ」
「うわぁ」
「うわぁ」
「勝ち、です」
と、そこで審判がコールする。
「ただいまの勝者、“ルーキーバスターズ”です!」
観客から拍手をもらう。少しまばらだが、軽くルーチンになってきていて、さらには魅せる戦いをしていないので、当然ともいえなくは無い。回りくどいが、結局観客が飽きてきたのだ。
「さて、次はいよいよ準決勝戦です。先程の勝者“ダークネス・ソウル”対、今勝ちあがった“ルーキー・バスターズ”です。ぜひ楽しみながら見てください」
「楽しみながら……だってよ」
「俺たち決行真面目にやってるんだぜ……」
少し萎えてしまった。
…………。
「準備は良いか?」
「ええ。バッチリよ」
「もちろん」
「当然」
「当たり前だぜ」
「そんじゃあ、もう行こうかい?」
「ああ」
…………。
「それでは準決勝戦“ダークネス・ソウル”対“ルーキー・バスターズ”です!健闘してください!」
審判の掛け声とともに、観客のテンションが上がっていく。
「では………………試合開始」
ダッダッダッ
先手必勝、と言わんばかりに相手が突っ込んでくる。
しかし、後ろに二人、控えている……魔法か!?
意識を集中させる。
「させるか! “雷”よ」
電撃が地を這い、後ろの二人に当たる。
「クッッソォ…………」
「まだだ! こお――」
「させるか!」
いいタイミングでディノが槍の柄で殴った。
「流石っ」
「ああ……っとと」
相手の突きを避けながら答える。いつの間に場馴れしたんだろ?
「グリモアも“強化魔法”かけた方がいいわよ。」
そういってからルンの指先から淡い光が出る。
「今かけたのは“防御”の魔法よ。他にもイメージしたら色々かけられるわよ。ディノには“超反射”の魔法をかけてあるし」
「へえ」
「お二人さん……おしゃべりは程々にな」
「不意を突くならもっと上手くやろうぜ」
言いつつ剣の柄で腹部を殴る。下手にやった分痛いかもしれない。
「“眠”っとけ」
何気なく言ってみたが、泡のような光が、目の前の男を包み込み、動かなくなった。魔法の使い方あってたか?
「おろ? 寝た?」
「無意識に魔法使わないほうがいいわよ」
あれ?《眠れ》って言っただけなのに。
「さて、残るはあと一人ね」
「ぼ、ぼぼぼ、ボクは貴族の息子だぞ? こんなことして、どうなっても知らないからな?」「いい具合に一人残ったと思ったら……」
「若干テンプレート気味だ……」
「手の出し方が分からねえから放置してた。」
「決勝戦でこれは、なあ」
「ちょっとどいてて」
ルナがお坊っちゃま(名前を知らないので代フリ)に近づいていく。
「ちょっと“眠”っててちょうだい」
俺のように眠りの魔法をかけるのか、と思ってていたら、
「ふんっ」
「ぐふっ」
「「「えええぇぇぇ!?」」」
なんとお坊ちゃまの鳩尾を殴った。ビックりだよ。
「え? この流れで殴るの? 魔法で眠らせるとかは?」
「こんな権力を笠にして威張ってるヤツって大嫌いなのよね」
「左様ですか」
「何も今殴らなくても……」
そこでルンが達観した瞳でポツリと言い出す。
「人は、自分でやってみて、始めて何をやっているか分かるのよ。生きていくうえで支え合いが必要なことも、自分で始めてやってみなければ分からない。だから、ただ何もせず、権力で人をこき使うようなヤツなんか、人の上には、絶対に、立てない……」
「ルナ……」
珍しく真面目な顔で言っていた。なので、なるべくお坊っちゃまをみないよう――
「え? よく考えたら特に殴る必要ってないよね?」
「何言ってるのよ。大有りだわ」
「何故?」
「イラッ☆ と、したから」
「暴力反対」
「聖人みたいなこと言うのね。人間なんだから、負の感情は消せないでしょうに」
最もで、否定するのも難しいが、それとこれは話が別で、少しは自重したほうがいいと思う。
「ま、何にせよ私の五十万円はもう目の前よ!」
「いや、山分けだし、十万円分の借しがあるから、帳消しだろ」
「チェッ。そういえばそんな感じで参加したけどさぁ」
「いいんじゃねえノ。どうせ次だ」
「そうだよ。戻ろうぜ」
…………。
というわけで、俺たちはしばらく休憩していた。
「決勝戦は“デヴィル・スコーピオン”だったっけか」
「ああ。デビル・スコーピオンだ」
「?」
「?」
ディノと俺では少しニュアンスが違った気もする。細かいことは気にしない。
「決勝戦はどんな感じに何なるのかな?」
「あっちにいるから聞いてきたら?」
「お? 本当だ。そういや控え室同じだったな。ちょっと挨拶してくるぜ」
テクテクとグレンが向かう。
少し何か会話。
次いで、小声で何かを言われる。
グレンが怒った! 何故!?
「んだとてめえら、上等だ、絶対ぇ勝つ!」
「え? おいおいグレン、一体どうしたんだ?」
何事か、と思っていたら、デビルスコーピオンの一人がこちらに来る。
「ああ。あんたがここのチームのリーダーか」
「そうだけど?」
相手はパッと見15歳ほどの少年だった。ちょっと年下。
「あんたのチームのメンバーは随分弱そうだな」
カチン、ときたが、おおかたゆすりに来たのだろう。乗せられてはいけない。
しかし、ディノやルン、エルはそうでもなかったらしい。
「わたしがあんたに言われる筋合いは無いけど?」
「黙れ、孤竜。お前に話す言葉は無い」
「なっ――」
「(なあ、弧竜って何だ? どういう意味?)」
「(竜人族にはタブーとされている禁句だ。その昔、なかなか多種族と交流しようとしなかった竜人族が、今でもたまに悪口でそうやって言われるんだ)」
「(成るほど)」
そうきましたか。随分本格的だこと。緻密に歴史が絡み合った崇高かつ、陰湿な悪口だ。
テンプレですね。
「あんた、名前は」
「グリモアだ。お前は?」
「ジェンガだ。へっ、弧竜とリーダー意外、あんたら三人は混血じゃないか」
「……それが? 何だっていうんだぁ?」
「はっ、言うまでも無いね。濁血揃いじゃないか。そんなメンバーが決勝だと思うと、ちょっとなぁ……」
言って、嘲笑。それも侮蔑が混じった醜い笑い方。うそ臭くすらあった。
「何だと!お前――」
「ディノ、頼む、抑えてくれ」
「だけど――」
「試合以外で手を出しちゃいけない。こんなヤツの相手するな」
「はっ、真面目君でも気取ってんのか?全く。そうまでしていい子演じてどうするの?自己満足?」
「違うな」
俺だって怒ってるさ。それはもう。ブッチきたし。今までで一番かもしれない。それでも折角たきつけてくれたんだから。利用しないとね。
「そうさ、俺たちは試合で勝ってやる。首を洗ってまってろ」
ここで、軽く怒気を孕ませる。怒りは、本物だと。
「!」
向こうのメンバーに緊張が走ったようだ。よし、こちらのペース。後は試合で真価を発揮すればいい。
何せ、俺たちのメンバーは総じて血の気が多いようだから。