第二十一章 武闘会開幕
推敲・添削しました。
第二十一章 武闘会開幕
「おー~。にぎわってるね~」
流石に武闘会。人が溢れかえっていて、お祭りのようだ。
「上手く聞きだせるかな」
酒を飲まずに。
この騒ぎでのアルコール回避は難しそうだが、頑張ってみるかな。
…………。
「よう~ぼっちゃ~ん」
突如、酔っ払った中年の男にからまれた。
「一杯~~っ、どう~だい」
「俺は遠慮しとくよ」
「そういわずにさ~」
「俺さ、明日の武闘会に出るんだよ」
「それなら仕方ない・・・なあんて言うと思ったか、バアァカ」
若干イライラしてきた。…………ガマンガマン。
「まあ聞いてけよ。俺も昔は冒険者やってたんだが、武闘会での話だ」
急に昔話をされてしまった。でも武闘会絡みだし、一応聞いておくか。
「武闘会にはコツがあるんだよ。勝つための」
「勝つためのコツ?」
「そそ。武闘会は、ヒック、トーナメントで勝ち進むにあたってなあ……ヒク……ルールがあるんだよ」
「え? ルール? そんなの聞いてないっす」
「そりゃそうさ。公式に発表されてないからな。単純な力勝負を見てたって飽きてくるだろ? だからルールがあるんだが、そのルールを破ったら失格だ。で、コツってのはその、ぅ、ルールをくぐる為のモンなんだが、ぅ、知りたいか?」
なんどかしゃっくりをこらえながら、切り出す。
もちろん、と頷く。
「フフン。ルールってのは当然、両方に課せられるものなんだがな? ルールは両方違うモノが適用されんだ。トーナメントを勝ち進むに当たって重要なのは言うまでもないよな。相手のルールの弱点を突けば、戦力に差があっても勝つことが出来る。まあ、これが基本だ」
「ああ。なるほど。話はそれだけっすか?」
「ああ。それだけ……なあんていうと思ったか、バアァカ」
「それはもういいっす」
イラッと来るから。
「ハッハ。じゃあな」
「はいはい、忠告どうも」
…………。
「やっぱりここだよな」
「まあな」
というわけで、他の面々は、やはりというべきか、依頼解決所に来ていた。
「グレンがまだね。」
「まあ、いつもどおりだな」
と、そこに、
カランカランッ
「やあやあ皆々様!元気かね?ぐっふっふ」
…………。
グレンの登場。
一瞬、場を静寂が支配した。
最初に静寂を破ったのはディノだった。
「どんな酔い方だよ……」
「っていうか、大会前に酒飲まないでよ……」
「いいぃぃじゃんよぉぉ。これくらいさぁぁ。たかだか大樽の一杯じゃねえかよぉぉぉ」
「はあ? 飲みすぎだろう」
と、俺。
「二日酔いとか冗談じゃねえかんな?」
ディノ。
「いいわ。放っておきましょ」
ルナ……え……?
「え? 放置は流石に不味いだろう……?」
「大丈夫よ。ほら、グレン」
「?」
「これを飲みなさい。」
「何だぁ? これ――んぐ!?」
ルンが何かを無理やりグレンに飲ました。
「これで何とかなる筈よ」
『…………。』
一同唖然。グ、グレン!?
「(酔ったらいつもああなのか?)」
「(いや、俺も始めて見た)」
「まあそれはともかく、何か収穫はある? まずはエルからで」
「ふむ…………私からは特にありません。パスで」
「パス? ……まあいいわ。次、ディノ」
「呑兵衛は苦手だ……収穫なし、パス」
「ディノも? じゃあ次、グリモア」
「俺からはルールの話を。知ってるかもしれないけど、武闘会には決められた条件があるんだって」
「条件?」
興味深そうにルンが聞いてくる。初耳だったみたいだ。
「そそ。定められた条件を無視すると即失格だと」
「初めて聞いたわ。本当なの?」
「ああ。毎年そうらしい」
「へぇ。他には?」
「俺は、それだけ」
「そう。次は私ね。優勝候補を聞いてきたんだけれど、まあこれは明日でいいかしら?」
「グレンがのびてるし、明日でいいだろ」
「そうだな。んじゃあ、また明日な!」
「おう、お疲れ」
「「「また明日」」」
今日はこれで解散。グレンは気になるところだが、取り敢えずは明日に備えて準備だ。
…………。
………………。
チチチチチチッ
朝だ。いよいよ、今日が武闘会本番。ツヴァイハンダーの手入れ、朝食を宿で摂って会場へ。
…………。
武闘会のエントリーをしに会場へ行く。既に他の面々は揃っており、体調も大丈夫そうだった。あのグレンすらも。
「それでは“ルーキー・バスターズ”さん、張り切って頑張ってください」
『もちろん』
大体そんな内容の言葉を全員が返した。善戦は当然、狙うは優勝だ……!
…………。
「じゃ、早速だけど作戦会議するわよ」
「おう」
「実をいうと、俺、昨日の夜からの記憶がないぜ」
いつから呑んでたんだ。そうか、前夜祭が始まってすぐなのな。すごくよく分かった。
「酒なんか呑むからよ」
「っていうか、未成年だろ? 法律とかってないのか?」
「はあ? んなもん無えよ。ある程度までなら幼児でも飲めるんだから。」
やっぱりだった。こっちの人達はみんな酒に強いんだろうな。幼児から飲めるとか。
「話を戻すわよ。この大会はルールがあって、原則それを破ると即失格。」
「へ? そうなの?」
「そうよ。で、今回のルーキーは“デビル・スコーピオン”と、“アイアン・テイル”
の二つらしいわ」
「俺も一個聞いてきたんだけど……なんだったかな? 思いだせない……」
こう、凄く濃い霧の中に大事なものを忘れてきたような焦燥感。やばい。
「そんな大事なこと忘れんなよ……」
ディノのツッコミにも、軽く返せなかった。いやな悪寒、もとい嫌な予感がする。
「まあいいわ。各自、声をかけあいながら頑張りましょ」
「ああ、俺からも一つ」
「何?」
「落ち着いて行動しろよ」
「もう、そんなの分かって――」
「本当にそうか?」
「……?」
「俺には何だか、初めての大会を前に、緊張しているように見える。あせったら足元すくわれるぜ」
「……っ!」
「肩の力を抜いていこう。」
「…………分かってるわよ」