第十九章 武闘会準備
推敲・添削しました。
第十九章 武闘会準備
「次は如何する?」
「鍛錬あるのみ! ……と言いたいが、鱗を取りに行こうか」
「え? もういい情報が入ったじゃない。さっきのはスルーじゃないの?」
「あれは冒険者仲間の言ういい情報で、酒場でのいい情報はまた違うんだよ。多分だけど」
「どこか、具体的にどの辺が違うの?」
「裏情報とかありそうな気がする。まあ、鍛錬も兼ねて一石二鳥だし。一応行っとく」
…………。
「おら、そっち行ったぞ!」
「へ、逃がすかよ!」
というわけでレグオス草原にドラゴン狩りに来た。狙いはDランクでは珍しく鱗のついた“ネイル・ドラゴン”。名前の由来は爪のような鱗がビッシリ生えているからだとか。
「グオゥッ」
「ガッガァ」
この前までは小型の剣を持っていたディノが、今回は見た目が名前そのままの“ブラックランス”という槍で戦っていた。それほど鋭くはないが、ディノの身長ほどある細長い槍だ。
「くっ……“アイス”よ!」
ディノが魔法を使った。ネイル・ドラゴンの回りを無数の小さな氷のつぶてが襲う。
「グッグッグワ」
一匹力尽きたが、まだ何匹かいる。先陣切っておいてなんだが、めんどくさくなって来た。
意識を集中させる。
「“雷”よ」
雑魚一掃と言わんばかりに、まとめて倒れ伏す。
「お前、実は飽きてきただろ」
「無益な殺生が嫌いなだけだ」
取り敢えず事実と嘘を混ぜて話す。殺生は嫌いだが、飽きてきたのは事実。それに気絶させるくらいしか、やってないはず。
「どれ、鱗は取れるかねぇ……お、ついてる!~」
ネイル・ドラゴンの鱗は硬いが、衝撃を吸収できない素材なので脆く、鱗を取るのには向いていないらしい。しかし、Cランクを今から倒すのも本当に面倒で、Dランクの他のドラゴンを探すのも面倒だったので、結果的に草原にいたネイル・ドラゴンを狩に来ていた。
「そいつ、気絶してるだけだから気をつけろよ?」
「大丈夫、もう採れた」
そう言って黒茶けた爪のような鱗を掲げる。
「じゃあ、帰って渡しに行くか」
「「「「おう(分かった(分かりました)わ)」」」」
…………。
「お、鱗は採れやしたか?」
「勿論だ」
そういってから鱗を渡す。
「確かに受け取りやした。それで、なにが聞きたいんで?」
「そうだな………。」
さっき依頼解決所で聞いたという事は誤魔化しつつ、尚かつ聞きたい事を聞く……。
「そうだな、うん。やっぱ一番はどんな奴が出場するか、だな」
「そうでやすか。具体的には?」
さっき大体どんなのが出場するか聞いた。そういえば“ヴァイレン”が出る(?)んだったか。
「(あれ? そういえば十二騎士って何?)」
「(十二騎士も知らないの?王国の役職の一つよ。十二騎士は役職的には、まだ下の方なんだけど、それでもAランク程度の強さがあるわ。下から十二騎士・七賢者・四魔神、そして、王の両腕と呼ばれている右腕・左腕)」
「(じゃあ、正式な試合にその十二騎士が乱入するってのか?)」
「(だから噂になるのよ)」
なるほどね。そりゃぁ不自然に思うよ。早速聞くか。
「あんまり関係ないかもしれないけど、ヴァイレンってどんな奴なんだ?」
「“十二騎士のヴァイレン”でやすか?」
「そうそう、それそれ」
「ヴァイレンは“連続魔法”と呼ばれる、一度に数種の魔法を使えると聞いたことがあります。例えば炎の魔法を二回同時に使ったりだとか」
連続魔法か。厄介どころじゃなくて、対処が難しそうだ。
「そういえば、ヴァイレンは今回の武闘会の最終戦で出場するそうでやす」
「最終戦ってどの最後?」
「優勝者が決まって、その後に『それでは、次は十二騎士のヴァイレンさんの登場です』
みたいな口上で出てくる、という話をさっき手に入れやした」
「うげ……。それって負けたら賞金ゼロになるのか……?」
「いや。そうではなく、賞金五十万シェルはあらかじめ貰えて、その後に倒せたらプラスで賞金五十万シェルが追加で貰えるそうです。まぁ、勝てる見込みが優勝者といえど、あるとは思えませんので、恐らく目的は力試しでしょう」
「そうか……。貴重な情報ありがとう」
「いえいえ。貰えるものはもらってやすから。情報はそれだけで宜しいので?」
「ああ」
「そうでやすか。また来てくだせぇよ」
「機会があったらな」
…………。
「ヴァイレンが出るのは本当だってよ」
「そうみたいね。ま、情報の整理はまた明日にしましょう。今日はもう遅いし」
「そうすっかね。じゃあまた明日、朝の鐘二つに依頼解決所でどうだ?」
「おう、そうしようぜ!」
「決まりですね」
「じゃ、また明日!」
「おう」