第十八章 武闘会の噂
推敲・添削しました。
第十八章 武闘会の噂
「やあ」
「どうも」
声をかけてきたのは、二十歳かどうかという、青年だった。
「新人の腕試しってどういう事よ?」
珍しくルンが疑問の声を上げる。
「そのまんまだよ。新しく冒険者になった人が、どのくらいの強さなのかを、見ておきたいんだろうねぇ。」
「ふ~ん。じゃあ前回の優勝者とかはでないし、メンバー全員そうがえで始まるのか」
「そうなんだよ。そんなわけで、ほぼ初心者全員が参加するんだ。」
じゃあ俺たちにも勝機があるな。
「よし、早速参加しようぜ!」
グレンが意気揚々と誘う。
「チームは五人一組までが許されるけど、三人で良いのかい?」
「え――」
メンバーまで考えて無かった。どうしよう?
相手が五人だと、こっちが三人しかいないと、相当厄介だ。
「まぁ、開催は三日後だし良く考えるといいよ。」
…………。
「どうするよ、開催は三日後だって」
三日間にできる事というのは随分限られている。
「そうね。待ちきれないわ」
「「え~。そっち~~?」」
二人で口をそろえてツッコム。
三人だけど勝てるかな?
「別に三人で勝てるでしょ?」
心を詠んだかのように、ズバリ言う。
「っていうか、色々やることあるだろ?」
「あら、そうかしら。例えば?」
「残り二人を集めるとか。競技? っていうか種目確認とか」
「まぁ、人数には当てがあるけれど?」
「え? 誰かいたっけ?」
「いるわよ、頼りになる助っ人が。グリモアが見落とすなんて珍しいわね。まぁいいわ、早速会いにいきましょ」
…………。
「ということで、パーティーを組もう!」
「話が見えねぇ!」
急に言い出すものだから、ディノがツッコム。説明くらいしようよ。
そうか、そういえばディノとエルは同じ初心者だったか。何故かうっかり外していた。
まず、説明をする。
…………。
「なるほど、武闘会ね。そういえばそんなのあったな」
「あら、わたしは覚えていたんですけど?」
「まぁ今からメンバーあと三人だし、俺たちも願ったりかなったりだナ」
ルナがこっそりと耳うちする。
「(ほらね。メンバーはすぐ決まったでしょ?)」
「(むう)」
「そんじゃ、さっさと受付に行こうぜ!」
…………。
「それではチーム名“ルーキーバスターズ”でよろしいですね?」
「おう」
「「「「…………。」」」」
もうちょっとマシなのが良かったが、唐突で、他に決められなかったので、ルーキーバスターズとやらになってしまった。
この際いいか。どうせ今回だけだし。
「それでは今武闘会のルールを説明いたします。まずトーナメント形式でお互いのチームがバトルをします。相手チーム全員を麻痺・気絶・昏睡・棄権など、負けを認めさせるか、戦闘不能に陥らせたら、その瞬間から勝ちです。
基本的にはどんな手を使っても勝てばいいのですが、死亡させてしまった場合は即刻退場ですので、くれぐれもお気お付けください」
「物騒だねぇ。」
「武闘会だし、普通だろ?・・・まぁ初心者の集まりだと逆に怖いけど」
「まぁまだ安全だと思いますよ、私も。詳しい説明は三日後にします。三日後の武闘会に備えて頑張ってください」
「うっす」
「そうね」
「そうするよ」
「わかりました」
「当然だな」
まばらな返事をしてその場を去った。
…………。
「さてと…………これからどうするよ?」
「まだもうちょい時間あるし、クエストでもいくか?」
「時間あるったって三日だぞ? 流石に無理だろう」
「それより先にすることがあるんじゃないかしら?」
「「?」」
「情報集めないとね~」
…………。
「というわけで何かないかしら!?」
「スマネェ譲ちゃん・・・。話が見えねぇよ」
本日二回目。酒場に着いた途端そんな風に切り込むもんだから、分かるわけがないだろう。
「いやまぁさ。私達新人戦? に出るんだけど、情報足らなくてさ」
ノリが異様に軽い話し方だったが、以外にも、うけた。
「ああ、武闘会か?それならいい情報が手に入ったんだが…………ただとはいかねぇンダナ、これが」
いわゆるギブ&テイクというやつだ。交換条件があるらしい。
「なにか欲しいものでもあるの?」
「取って置きの情報だからな…………。ドラゴンの鱗が要るんだよ。種類は何でもいい。その鱗と情報を交換だ」
「鱗ね……。他の奴にも頼んでるの?」
「あんたらが始めてだ。引き受けてくれるか?」
「「「「「………。」」」」」
「(ドラゴンの鱗って持ってる?)」
「(生憎自分の分しか持ってねぇ)」
「(面倒だけど取りに行くか?)」
「(本当に面倒だけど仕方ないわね)」
「(じゃあ決まりだな)」
「私たちが取ってくるわよ。その代わり、他の奴らにその情報渡さないでね!」
「それは分かりかねますぜ。早いモンがちだ」
「フン」
何故か最後は剣呑な雰囲気になったが気にしないでおく。
…………。
「またドラゴンか……。」
「文句言わない! チャッチャと取ってくるわよ!」
「と見せかけて、今から他の所に行くんだ」
「……え?」
「他にも情報持ってるやつっているだろ? ちょっとした当てがあるから行こうぜ」
…………。
「やあ。オッチャン元気?」
「…………初対面のはずだよな、俺たち」
「細かい所は気にしない。気にしない」
次に俺たちがやってきたのは依頼解決所だ。屈強そうな面々も、聡明そうな面々も様々見える。
「三日後に武闘会あるじゃん? そこで、大体でいいから出場する目星のある奴教えてよ」
「おお、坊主、武闘会に出るのか。いいぞ。今日は気分が良かったんだ。教えてやるよ」
よかった。交換条件無しだ。その分出回り易い、安い噂だろうけど。
「(ほらな? こっちのがいいだろ?)」
「(グリモアは物知りね。当てがあるなら、最初から言って欲しいわ)」
何でかというと、たくさんの冒険者がここに来るわけで、新人だったら同じように此処に集まってくると思っていたからだ。
「まず、同じように此処に聞きに来た奴らが、三人組のチームで、“デビル・スコーピオン”とかいってたっけなぁ。三人とも男だった。そいつらが此処にきたなかで一番強そうだったな。ま、新人は皆同じに見えるがね」
三人で挑もうとしているってことは相当自信があるのだろうか。そのチームは注意しないといけないかも。
「あと五人組の、ちょうどお前さんたちのような男三人・女二人の五人組のチームもいたな。そういやあ、そいつらは『今回は十二騎士の一人の“ヴァイレン”が出る』とか言ってたな。ホントかどうかは分からねぇけど」
「ありがとう。オッチャン。折角だし俺たちも名乗っとく。“ルーキーバスターズ”だ」
「ははッ。面白いネーミングだ。自虐ネタのつもりか?」
「正直、俺もそう思う」
「おい、それはねぇだろ!」
「あ、私もそう思ってた」
「おいおい、俺は少数派かよ!?」
「こんな所で揉めんな」
「ぐっ……しゃあねぇ」
「じゃあな、オッサン」
「おう、じゃあな坊主ども!」
前回短いのに今回は長めです。分ければよかった……。