第十三章 初めてのクエスト
推敲・添削しました。
第十三章 初めてのクエスト
「そのクエストは前々から俺たちも、狙っていたクエストだ」
見ると一人ではなく、もう一人、連れの女性がいた。
「だから何だっていうの?」
「そう突っかかるな、お嬢ちゃん。そのクエストは思ったより難しくて、一回俺たちも挑んだが、失敗しちまった」
「つまり、何だ? 用心しろってか?」
グレンが、あからさまな嫌味を言う。
「(落ち着け、グレン。まだ話の途中だ)」
「(お、おう。悪い)」
「それで、あんたらは何が言いたいんだ?」
「よくぞ聞いてくれました。ふふん。俺たちと組んでやらないか?」
「「「はぁ?」」」
俺たちは首をかしげた。
「言ったでしょ、ディノ。交渉の仕方が悪いって。あたしにやらせなさい」
「おおう。悪い。やっぱ俺には無理だわ」
と言ってディノと呼ばれた男は引き下がった。
「申し遅れました。私の名前はエルドール・マフィスといいます。気軽にエルと呼んで頂ければ結構です。先ほど話していた彼はディノ・フラガケッツォといいます。ディノと呼んでやってください。」
「こちらも、申し遅れた。俺がグリモア・スティングスで、こっちが」
「ルーナント・ヴェイル。ルナで結構よ。」
「で、こっちが」
「グレン・ディーラーだ。グレンでいい。さっきは悪かったな」
「ということだ。話の続きだが、組むことで俺たちに何のメリットがある?」
「勿論のこと、クエストが簡単になります。他にもありますが、最も重要な点はそれですね。」
「じゃぁ、次の質問。あんたらはこの盗賊団の討伐、のクエストで何回目だ?」
「何回目、とは?」
「クエストを受けた回数」
「一回目、つまり、初めてですね」
「そうか。なら俺たちと組んでくれるか?」
「「!?」」
「勿論です」
「(おい、どういうことだよ、グリモア)」
「(ホントよ。勝手に決めないでよ)」
「(だって、同じ初心者だろ?それで失敗したってことは俺たちが行っても失敗するだけだ)」
「(そうとは限らないじゃない)」
「(でも、失敗する確率のほうが大きいだろ?だったら、報酬が多少山分けになったところで、いい経験ができるじゃないか)」
「(っていうか、相手が経験者だったらどうしてたんだよ)」
「(そんな経験者だったらそもそも話を振ってこないだろうし、仮に振ってこられても、
そんな人達で出来ないクエストを俺たちが出来るわけ無い)」
「(ああ、なるほど)」
「という訳で、話はまとまった。何時に出かける?」
「明日、午前の鐘が三つなる時ぐらいに、表門で落ち合いましょう」
「分かった。それでいいよな?」
二人はうなずいてくれた。
「あ、それと。コールストーンって持ってる?」
「? 俺は持ってないけど?」
「俺も持ってないぜ」
「私も持ってないわ。っていうかなにそれ?」
「こんなかんじの石なんだけどね」
といってコブシほどの大きさをした、翠色の石を取り出した。
「ディノ、ちょっとコールストーン貸して」
「はいよ」
「これを耳にあててくれる?」
「?」
キィィィン
――あー、あー――
「ああ、なるほど。声が聞こえるな」
「あら、驚かないのね。そう、遠く離れていても、この石を耳にあてていると声が聞こえるわ」
「俺も、俺も」
はやるグレンにコールストーンを渡した。というか、はしゃぐな。みっともないぞ。
――聞こえるかしら――
「オウッア! びっくりしたー」
「前もって聞いてたのに、何その反応」
「まぁ、そういう風に情報のやり取りも出来るし、便利でしょ?」
「俺たちにも買えってか?」
「このクエストがだいぶ楽になるのよ」
「じゃあ買おう」
「そういうことよ。じゃ、また明日」
「ああ」
ディノと、エルは帰っていった。
「俺たちはどうする?」
「っていうか、クエスト受注してないじゃない」
「俺たちがするのか。」
「早く済ませましょ」
…………。
「じゃあ、コールストーン買っとけよ」
「あなたもね」
「じゃあな!」
俺はコールストーンを明日買うことにして、宿を取って寝た。色々あって、忘れていたがアイス・ドラゴンを倒してから休憩してなかったので、クタクタだった。