第1章 転生と初登校
全面的に自己責任でお願いします。
まったくの見切り発車まだ、全く書いてないし、いつ続き書くかもわからない。
第1話
死神の世界で、生き残ると決めた日
目を覚ました瞬間、畳の匂いが鼻についた。
古い木造住宅。
天井の木目には細かなヒビ。
布団は薄く、身体がやけに軽い。
(……どこだ、ここ)
上体を起こそうとして、違和感に気づく。
腕が短い。力も弱い。
視界に入った自分の手は、明らかに子供のものだった。
(……は?)
心臓が、遅れて強く鳴った。
壁には昭和の特撮番組のカレンダー。
学習机の上には、鉛筆と算数ドリル。
そして、脳裏に流れ込む記憶。
――椿優李。
――七歳。
――花咲学園入学を、明日に控えている。
(……死んだ、よな)
横断歩道。
青信号。
クラクションと、迫る影。
あれは夢じゃない。
確実に、人生は一度終わっている。
(転生……か)
状況の理解は、異様なほど早かった。
思考が澄み切っている。
記憶は整理され、数字が自然に頭に入る。
前世では考えられなかった感覚だ。
(頭……良くなってる)
鏡を覗くと、整った顔立ちの少年が映っていた。
(……イケメン寄り、だな)
前世、死ぬ直前に考えたことが脳裏をよぎる。
「頭が良くなりたい」
「顔が良くなりたい」
「PCが使えたらいい」
「漫画家になりたい」
冗談半分の願い。
だが、少なくとも二つは叶っている。
(最後のは……これからだし、まだパソコンは無い)
そう考えたとき、居間からテレビの音が聞こえた。
『花園街で発生した誘拐未遂事件――』
『犯人は現在も逃走中で――』
『別の路地では刺傷事件が――』
画面は荒く、音も悪い。
だが、内容ははっきり分かる。
(……事件、多すぎないか?)
新聞を手にした父が、顔をしかめている。
一面見出しは、殺人、強盗、失踪。
背中に、冷たいものが走った。
(……この街)
花園街。
事件が、日常に溶け込みすぎている。
(まるで……)
前世で読んだ、
死神が歩き回る推理漫画の世界。
笑えない。
(巻き込まれたら終わりだ。
昭和の警察、冤罪、強引な捜査……
一度疑われたら、人生が詰む)
優李は、即座に方針を決めた。
目立たない。
関わらない。
疑われない。
将来は、家にこもれる仕事。
漫画家か、小説家。
(死神の世界でも、
死ななければ勝ち、だ)
そう思った、その瞬間だった。
玄関の外から、かすかな声が聞こえた。
「……たすけて……」
子供の声。
(……最悪)
行くな。
顔を出すな。
それが最善だ。
だが、無視もしない。
優李は居間に走り、黒電話の受話器を取った。
「……110番、お願いします」
名前は言わない。
姿も見せない。
ただ、場所と状況だけ伝える。
それが、七歳の自分にできる
最大限の自己防衛だった。
*
結果、誘拐は未遂に終わった。
犯人は逃走。
被害者は無事。
通報者は不明のまま。
(……生き残った)
布団に戻り、優李は小さく息を吐く。
これは、小さな勝利。
だが、この街は――必ず次を用意している。
「……次も、逃げ切る」
七歳の少年は、
昭和四十六年、花園街で、
本気の生存戦略を組み立て始めた。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




