ミケランジェロのピエタ
真鍮の貝が閉じるとき
夜は夢を見る
大理石のマリアの涙
鉛のように流れ
死せる子を抱く
金剛の力は弛まず
静まった大広間では
フーコーの振り子が
時を彫琢しては
夢に黒百合を添え
母子を優しく誘う
茫漠の悲しみと
永久の慈しみと
煉獄の花園から来た天使が
羽衣の裾を引き摺り
レムニスケートを描く
真鍮の貝が開くとき
夜の夢は醒める
聖堂に朝日が昇るとき
遍く模細工が
黄金に輝くとき
ピエタの姿はない
ただ槌うつ音と
鑿にぎる人あり
タナトスとヒュプノスに
寄り添われて