十一月の車窓
ゆっくりと絵画が動きだす。
周りが騒がしくなる程、己の孤独さをひしひしと感じる。
私はボックス席の窓側に座ると、必ず肘掛か窓枠のスぺ―スに肘を付いて外を見る。外を見ながら色々な事をぼおっと考える時間が好き。
この時間帯は人が多いが、夕日が綺麗だから好きだ。
赤く燃える太陽が山へと沈んでいく。空全体が橙色になる、普通の光景ではあるが、幻想的であると感じる。直で見ると目がやられそうだけど、美しさが勝つ。
それにしても、夕日は何故、人をセンチメンタルにさせるんだろう。
1日の中のふわふわとした鬱が今、ゆっくりと溶けてゆく。
じんわりと夢が壊れているのを感じると、少しだけ哀しく感じた。
貴方に会いたい。
そう思う。何時もそう思う。どんな時でも、何が有ろうと、私は何時も貴方の事を考える。貴方の顔、声、匂いを思い出す。
だけど、会っても何も出来ない。
抱き締める事は疎か、真面に話す事すら出来ない。
会えば誰かと楽しそうにしている姿しか見れないのに、どうしてそこまでして会いたいのだろう。もう、嫉妬するのは嫌だ。
私に優しくしてくれる人でも、貴方と話すなら、貴方に話し掛けられるなら嫉妬してしまう。
私は悪い奴だ。他人の親切を切り捨てようとする。
それでも、私は貴方を愛す。苦しくても、悲しくても、辛くても。
でも、やっぱり今の日々が、ちょっとだけ楽しい。
今までの人生の中で一番、恋らしい。
不意だった恋。近付く事すら出来なかった恋。裏切られてしまった恋。
様々な恋をやり過ごしてきたけど、今、貴方が好きなのが一番真っ直ぐで、純粋。沢山嫉妬するけど。
外を見ると、家が多数に見える。
それの各それぞれに、人生が存在している。私の人生もそんな中のたった一つである。そう考えると、少しだけ元気に生きて行こうって思えるかな。
どうせちっぽけな存在なんだから、後悔する前にもっと貴方の居れるようにしよう。
決して簡単な事でな無い。だけど、そうしなきゃいけない。
絶対に私は幸せになってやる。
同年代の子が後ろで友達と楽しそうに喋っている。そんな当たり前の場面でも、胸が締め付けられる。
どうして私には友達が居ないのだろう。本当は今も隣に誰かが居てくれたら良いのになって思う。
もしかしたら、私は既に友達が居るのかもしれないな。
自分が友達のハードルを上げ過ぎるせいで。小さな違和感のせいで人を信じられない。というか、あの人に裏切られたからかも。人を信じて、傷付けられたくない。
それに、私が一方的に友達と思っている、なんて事になりたくないから。
独り善がりは友達でも恋でも嫌いだ。
私は大きな欠伸をする振りをした。
眠さを装う事で溢れ出る涙を隠す。
もう、眠ろう。目的地までまだ時間はある。寝れば気持ちの整理も付く。
夢は貴方が出てこないかな。