表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

廻る季節に急かされて

十一月の車窓

作者: 雪傘 吹雪

 ゆっくりと絵画が動きだす。


 周りが騒がしくなる程、己の孤独さをひしひしと感じる。


 私はボックス席の窓側に座ると、必ず肘掛か窓枠のスぺ―スに肘を付いて外を見る。外を見ながら色々な事をぼおっと考える時間が好き。


 この時間帯は人が多いが、夕日が綺麗だから好きだ。


 赤く燃える太陽が山へと沈んでいく。空全体が橙色になる、普通の光景ではあるが、幻想的であると感じる。直で見ると目がやられそうだけど、美しさが勝つ。


 それにしても、夕日は何故、人をセンチメンタルにさせるんだろう。

 

 1日の中のふわふわとした鬱が今、ゆっくりと溶けてゆく。


 じんわりと夢が壊れているのを感じると、少しだけ哀しく感じた。


 貴方に会いたい。


 そう思う。何時もそう思う。どんな時でも、何が有ろうと、私は何時も貴方の事を考える。貴方の顔、声、匂いを思い出す。


 だけど、会っても何も出来ない。


 抱き締める事は(おろ)か、真面(まとも)に話す事すら出来ない。


 会えば誰かと楽しそうにしている姿しか見れないのに、どうしてそこまでして会いたいのだろう。もう、嫉妬するのは嫌だ。

 私に優しくしてくれる人でも、貴方と話すなら、貴方に話し掛けられるなら嫉妬してしまう。


 私は悪い奴だ。他人の親切を切り捨てようとする。


 それでも、私は貴方を愛す。苦しくても、悲しくても、辛くても。


 でも、やっぱり今の日々が、ちょっとだけ楽しい。


 今までの人生の中で一番、恋らしい。


 不意だった恋。近付く事すら出来なかった恋。裏切られてしまった恋。


 様々な恋をやり過ごしてきたけど、今、貴方が好きなのが一番真っ直ぐで、純粋。沢山嫉妬するけど。


 外を見ると、家が多数に見える。


 それの各それぞれに、人生が存在している。私の人生もそんな中のたった一つである。そう考えると、少しだけ元気に生きて行こうって思えるかな。

 どうせちっぽけな存在なんだから、後悔する前にもっと貴方の居れるようにしよう。


 決して簡単な事でな無い。だけど、そうしなきゃいけない。


 絶対に私は幸せになってやる。


 同年代の子が後ろで友達と楽しそうに喋っている。そんな当たり前の場面でも、胸が締め付けられる。


 どうして私には友達が居ないのだろう。本当は今も隣に誰かが居てくれたら良いのになって思う。


 もしかしたら、私は既に友達が居るのかもしれないな。


 自分が友達のハードルを上げ過ぎるせいで。小さな違和感のせいで人を信じられない。というか、あの人に裏切られたからかも。人を信じて、傷付けられたくない。


 それに、私が一方的に友達と思っている、なんて事になりたくないから。


 独り善がりは友達でも恋でも嫌いだ。


 私は大きな欠伸をする振りをした。


 眠さを装う事で溢れ出る涙を隠す。


 もう、眠ろう。目的地までまだ時間はある。寝れば気持ちの整理も付く。


 夢は貴方が出てこないかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ