第99話 世界への挑戦者たち
目が覚めると俺は、座っていた椅子の後ろにあった二人用ソファーの上に寝ていた。
おそらく寝たあと、レインあたりが運んでくれたんだろう。
「よく寝た……」
3時頃に終わったはずだが、夕日が出ていて数時間経過したようだ。
俺は時間確認のため、スマホを手に取ってロック画面を解除すると、SNSの通知がカンストしていた。
「……ん」
SNSのアプリを開くと、フォロワーが3万人を超えていた。
少し前まで3000人くらいしかいなかったことを考えると、10倍近く短期間で増えたことになる。
それに、俺から一方的にフォローしていたAPAC South(南アジア)、NA(北米)、SA(南米)、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)のプロ選手たちからフォロー返しが来ていた。
正直、めっちゃ嬉しい。
世界大会常連。
実力はグランディネアやrallyとも張り合うレベルの各国のプロたち。
そんなすごい方々のいるところに、少し前までイキっていた俺が行くことになるとは。
(これからはより一層、発言には気をつけないとな……)
そんなことを考えながら、俺はあくびをしたのちに両目を擦った。
「……そっか、俺たち勝ったんだな」
俺はSNSで「北アジア代表として、世界大会頑張ります。絶対に優勝するので応援よろしくお願いします」と投稿したのち、スマホの電源を落とした。
「よく勝てたな……」
俺は思わず独り言を言ってしまった。
正直、俺だけの力じゃグランディネアどころか予選すら勝てなかった。
以前の寄せ集めチームで大敗したからこそ、余計にそう感じる。
可憐、雪奈、レイン。
彩音、緋奈、美佳、有栖。
それに練習場所やサーバーを用意してくれたスタッフの方々、可憐のサポートをしてくれてる斉藤先生。
俺がプロリーグに出ることを許してくれた両親。
そして、可憐に出会ったきっかけをくれたrally。
みんなの力があったから、俺はここまで来ることができた。
以前の俺には分からなかった。
仲間を駒のように扱い、自分が勝ち気持ちよければそれでいい。
その思考から変わるきっかけをくれた彩音の影響は計り知れない。
そして、支えてくれたみんなに俺がするべきことは、優勝の王冠を持って帰ることだ。
絶対に負けたくない。俺は胸の中でそう誓った。
「……ま、頑張るか〜」
俺があくびをしながら全身ストレッチをして体をほぐしていると、部屋のドアが開いた。
「あ、お兄ちゃん。起きてたんだ〜」
「うん、おはよう彩音。予選突破おめでとう」
「ありがと〜!! お兄ちゃんもおめでと〜!!」
俺たちは顔を合わせ、お互い笑った。
まさか妹と別のチームとはいえ、ゲームの世界大会に行くとは。
こんな経験をする兄妹は、そうそういないだろう。
「世界大会の運営の人に送る用の写真撮影、お兄ちゃんが寝てる間にやってたよ〜」
「そっか。俺はどこに行けばいい??」
「んーとね、私たちみんなシャワーで汗を流したあとにスタッフの人に髪型セットしてもらったから、先にこの前の銭湯に行ったほうがいいかも」
「了解。んじゃあ行ってくる」
俺がそう言ってスマホをポケットに入れ、部屋を出ようとした――そのとき、彩音が俺の袖をぎゅっと掴んだ。
「……お兄ちゃん」
「ん、どうした??」
俺がそう言うと、彩音は恥ずかしそうな表情をした。
「えっと…… その…… 予選を突破できたから、頭を撫でてほしい……」
「……ッ」
顔を真っ赤にしながらお願いしてくる彩音が可愛くて、俺は思わずキュンとしてしまった。
普段は何気なく頭を撫でることはあるが、実際にお願いされると照れてしまう。
「こ、こうか……??」
俺が頭を優しく撫でると、彩音は満足そうな表情をした。
「ありがとう、お兄ちゃん……」
「うん。それじゃあ俺は行ってくる」
俺はそう言って、部屋から出た。
* * *
彩音は悠也を見送ったのち、撫でてもらった頭の部分を自分の手で触っていた。
「あやねん、にーちゃんにおねだりするなんて、意外に大胆ですな〜」
「これでお兄さんのハートはもらったも同然」
「ぐっじょぶ…… 最高に可愛かった……」
彩音が頬を赤らめていると、緋奈たち3人はニヤニヤとした表情をしながら部屋に入ってきた。
「み、みんな……見てたの……」
「うん!! バッチリ見たよ!!」
緋奈がそう言ったのち、美佳と有栖も頷いた。
「……ッ」
彩音は顔をさらに赤らめ、両手で顔を隠した。
「み、見なかったことにして……」
「え〜、あやねんが甘えてるとこ、すっごく可愛かったよ!!」
「彩音さん、私たちにもこんな感じに甘えてもいいんですよ??」
「ドラマのワンシーンにありそう……」
「ち、違うから! みんな、今のは忘れて……!!」
緋奈たち3人のいじりに対して、彩音は恥ずかしさでしばらく顔を手で隠していた。
「あら??」
4人で盛り上がっていると、スタッフの方からメッセージが届いた。
内容は「あいうえ」「EGC」の北アジア予選突破の祝勝会をするというものだった。
「パーティーだ!! やった〜!!」
「お腹空いてきたから……楽しみ……」
緋奈と有栖は、メッセージを見た瞬間に喜んだ。
彩音は持っていた水を飲んで、気分を落ち着かせた。




