第93話 北アジア最強との距離
「いよっっっし!!」
俺は初めてグランディネアに大きなダメージを与えることができたので、思わず声に出して喜んだ。
本当は彩音と戦うときにとっておきたかったが、成功したので結果オーライ。
(彩音より少し大きい可憐と練習しまくって本当によかった)
近距離戦がほとんどできない可憐でも、ショットガンを安定して当てるのに苦労した。
「たかが一撃当てたくらいで、何喜んでんだ」
グランディネアは呆れながら俺に言った。
「そりゃ嬉しいさ、正直勝てる気しなかったけど……今なら勝てる気が……いや、確実に勝てる」
とは言ったものの、正直この作戦で仕留め切るつもりだったので、また新たに作戦を練る必要がある。
実際、今の攻撃が通ったのは俺が『サブマシンガンを配信された全ての大会で使っている』という流れだからこそ成功した。
それにショットガンは、近距離でしか使えないし、外したら終わりのギャンブル武器。
大会に向いてないのはもちろんのこと、それに俺たちが1ゲーム落としたら終わりの崖っぷちという状況で使うとは、予想もできなかったからという部分が大きい。
(さすがはグランディネア……俺がこんなわかりやすく喜んで、焦りや怒りを誘ったってのに動揺もしねぇ……)
怒りで判断を遅らせ、さらなるチャンスを掴もうと思っていたが、そう都合よくはいかなそうだ。
おそらく北アジアで、プロになってからグランディネアにここまでダメージを与えられたのは俺が最初のはず。
しかし、グランディネアは表情ひとつ変えずにいた。
「やはり、あの時よりも確実に強くなってると思っていた俺の読みは正しかったか」
「そんなこと言ってられるのも今のうちだぞ。今の俺は負ける気がしねぇ」
今の俺はアスリートで言うところのゾーン状態になっている感じがした。
まるで彩音とやりあった決勝戦のような。
俺はアサルトライフルをグランディネアに撃ち込んだ。
グランディネアは電話ボックスや街路樹を遮蔽物にしながら、俺の放つ弾を回避した。
(詰めてはこないか……まあ、ショットガンがあるから当然だな……)
グランディネアは遮蔽物を利用しながら、俺にアサルトライフルを撃ち込んだ。
俺は回避しながら、グランディネアとの距離を詰めた。
(俺のショットガンがプレッシャーになっていて、グランディネアはサブマシンガンが使えていない。ここで仕留める!!)
ただ、俺がアサルトライフルをリロードしていると、ログではレインと雪奈が敵2人と相打ち。
可憐はやられていないものの、体力が少なくなってきていた。
近距離戦ができない弱点を知られたかはわからないが、もし仮にバレたならこの試合に勝っても、次のゲームで可憐が狙われてしまう可能性が高い。
なので、グランディネアを早めに倒して可憐の手助けに行きたい。
仮に可憐がやられたら2対1の状況になる。
だからなんとしてでも、最短でグランディネアを倒す。
俺は少し焦りながらも、グランディネアに発砲しながら距離を詰めた。
「随分、焦ってるようだな」
「そういうお前も、ショットガンにビビってるじゃねぇかっ」
俺は距離を一気に詰めて、ショットガンをグランディネアに向けて構えた。
(あと1歩……)
俺が1歩前進する寸前、俺はグランディネアが武器を持っていないのが見えた。
グランディネアはアサルトライフルを俺に直前まで撃っていた。
俺は、リロードもサブマシンガンに切り替えるまでの時間よりも、先にショットガンを撃つことができるように計算した。
仮にサブマシンガンを先に構えていて、撃つのが間に合ったとしても、ヘッドショット2発までなら受けられる体力はある。
なので俺が胴体より上にショットガンを当てられたら勝ちという状況。
俺が外す読みで、武器を持つか距離を取る二択のはずが、グランディネアは逃げずに武器も構えないという状態だった。
「焦るな、もっと俺を楽しませろ」
グランディネアはそう言って、右手でサバイバルナイフを投擲して俺の腹の辺りに突き刺した。
「ぐっ……」
予想外の一撃。しかし、グランディネアもギャンブル覚悟の一撃で、頭や胸の急所は免れた。
それでも、俺の体力ゲージがごっそりと減った。
(まずい……)
俺はスモークグレネードを足元に投げて、一旦距離を取った。
「逃すわけねぇだろ」
グランディネアは俺にアサルトライフルを撃ち込んだ。
スモークで視界を遮ったとはいえ、数発食らってしまい、俺の体力は2割を切ってしまった。
* * *
「近距離戦になった途端、余裕になりました。もしかしてこれで終わりですか??」
「……はぁっ、ぐっ……」
ボクは裏路地の通路に追い詰められていた。
真後ろには壁。もう逃げ道はない。
体力は残り3割。アサルトライフルの弾は、ボクが近距離戦をできないことを知られた瞬間、逃げ回られて無駄に使わされて残り少ない。
レインや雪奈ちゃんは相打ち。
悠也は相手がグランディネアで、助けを呼ぶのは不可能だ。
切り札をここで使ってしまうと、最終戦でボクは完全に何もできなくなる。
(ならここは、賭けをするしかないか〜)
ボクはグレネードを左手に持って、ラーグナに投げた。
「悪あがきですか、あなたらしくないですね」
当然空中で、ラーグナはサブマシンガンをボクの投げたグレネードに向けて撃ち、空中で爆発させた。
その瞬間、後ろの壁がグレネードで爆発し、ボクの体は吹き飛ばされてラーグナとの距離ができた。
「いっ……くらえっ……!!」
ボクはあらかじめグレネードを2つ持ち、1つは向こうに投げて、もう1つは足元に投げていた。
ボクは弾き飛ばされながら、ラーグナの頭に照準を合わせてアサルトライフルを撃ち込んだ。
ラーグナは、まさかボクがこの状況で自爆するとは思わず、判断が遅れて何もできずに倒れた。
(緋奈ちゃん、本当にありがと〜)
ボクは緋奈に心の中で感謝し、全身傷だらけの体でアサルトライフルを杖代わりにしながら、悠也の戦っている場所へ向かって歩き始めた。
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